ぼくらのありのまま記

ぼくらは
こんな大人になりました。

鈴木創 小笠原自然文化研究所の仕事

2014-04-06 11:00:07 | ぼくらのありのまま記
第5話 オガサワラオオコウモリの価値

なぜ守るの?
え、コウモリ大好きだからでいいんじゃ
ないっすかね?
ってそうも
いかないんです。理解してもらい、協力が
必要なことなんです。小笠原における
コウモリの価値ってなんだろう。

今日もよろしくお願いします。

目次はこちらから。

鈴木
小笠原って、どうみても
弱肉強食の世界じゃないんだよね。
海洋島っていう、海の中に突然出現して
来れるやつが来て、居続けられたやつだけ
生き残ってきた生物進化でさ。




たら
強い肉食動物いないもんね。

鈴木
動物の進化は、弱肉強食のサイクルで進化
してきたっていうのが、大きな流れだけど
この島には、弱肉強食のサイクルに
のらない進化があるんじゃないのか?
ってところにすごく興味がある。



(コウモリについてはこちらの絵本に詳しく書いてあります。
ぜひ、読んでみてください。)

たら
そんな考え方したことなかったななー。

鈴木
そういう進化を経た生き物を、人の
暮らしのなかに落ち着かせたい。って
いうのが理想像、本質的には逆だけど。
ただコウモリうるさいんだよね笑。
「コウモリうるさい」って電話も来るし。


たら
価値って難しいね。売ってるいろんな
物の値段もどうやって決めてるのか
よくわからないし。コウモリも価値がない
と思われたら、ただの害獣になるでしょ。

鈴木
経済的な価値が全てになっているから。
ただそれは正しいとかじゃなくて、
それも風みたいなもので評価が決まって
来る。コウモリに関しては調査で
わかってきた「島の森をつくっている」
っていう重要な役割を担っていることを
どう伝えるか考えてる。


たら
そうなんだ。

鈴木
GPSを使った調査を3年前から始めてて。
人間でいったら小さいランドセルみたいな
ものを背負わせるの。そのGPSでコウモリ
がいた場所が誤差20メートルでわかる。



(毎日GPSを頼りに山にはいる鈴木さん)

たら
すげー!!

鈴木
それは東京都の委託で今やってるんだけど
タコノキやモモタマナ大きい果実は前から
わかっていたんだけど、この調査でそれ以外
にも他の野生植物も沢山食べてたことが
わかったんだよね。


たら
ランドセルのおかげでわかったんだ。

鈴木
シャリンバイ、ヒメフトモモとか他にも
沢山。彼らがエサとして利用する事で、
ふもとから山の上まで運んでいたっていう
ことが見えて来て。それはにはすごい
驚いたんだよ。


たら
島におけるコウモリの価値、役割が
わかってきたんだ。


(タコノキ。右下が本来の実、真ん中は
コウモリが夜中に食べたもの。)

鈴木
わかってきた。それは結構とてつもない
価値だと思うんだよね。


たら
「なんで守らないといけないの?」って
言ったときに数が少ないからとか、
固有種だから。とかじゃない価値が。

鈴木
そう。そこから、どういうことなら
コウモリに譲って暮らせるのか。
どこで折り合いをつけていくのか
っていう話し合いになっていかなきゃ
いけないんだよね。


たら
うんうん。

鈴木
「自分たちでどういう暮らしをして
行きたいのか」っていう問いのなかに、
コウモリとかハトとかもどこかに
引っかかって欲しいんだよね。


たら
「みんなハッピー」のなかの「みんな」に
コウモリも入れてくれよってことだよね。


(木の下にはタコの実が沢山
落ちていました。)

鈴木
増えすぎたら、害獣として苦情くるけど
森自身が何万年とかけて土をつくってきた
その森づくりの大きな役割をコウモリが
担ってきたんだもんなーって思う。


たら
畑を荒らす敵ではあるけど、その畑が
できるための土をつくっているという
ことでは味方なんだね。

鈴木
そうなんだよね。いや、そうなんだよ。
あと、お金の問題はすごく悩むよね。


たら
どうやって続けていこうかということ?

鈴木
お金の問題はコウモリの話。農家に
とっては害獣だし、エコツアーとっては
コウモリって金になるからね。農家にも
お金が入る仕組みにできたら
農家にとってのコウモリも変わる。


たら
うん。

鈴木
コウモリをツアーにとっての必要な
タレントだとすると。畑ってそのタレント
が飯を食う食堂みたいなものでさ。農家の
お世話になってるわけ。でも隣同士で
儲かる人と損する人がいる。そこが人間
との関わりで一番問題になっているところ。


たら
よく見てるね、はじめさん。

鈴木
でもまだ、全然解決方法見つからないよ。
農家さん、ガイドさんのどちらにも仲間や
師匠がいるしさ。コウモリを傷つけない
ネットを使ってくれたり、農家さんたちも
すごく協力してくれている。
僕が思う望ましい形はコウモリツアーの
中で、「農家さんたちの協力があり
コウモリツアーが成り立っています」って
ことを少しでも伝えてくれたり。保護に
協力してくれている畑の作物には
コウモリマークつけてわかるように
したり。とか。



(タコの実を齧り水分を吸って吐き出す。
よく見ると噛み跡があります。)

たら
うんうん。

鈴木
そういうことが実現できればコウモリを
通じて、ツアーの深みも増すし、持ち分を
ちょっとだけ、島の隣の人に回してお金の
循環をよくするようなしくみがあればな
ってツアーガイドの仲間と話をしてる。


たら
海が目的以外の観光も増えて来てるの?

鈴木
遺産登録後、年配層の観光客が増えた。
その年配層が求めているのは山歩きと、
美味しい食べ物だよね。


たら
そっかそっか。

鈴木
そこもね、盛り上げて行きたいね。


今日はここまで、
読んでくれてありがとうございます。

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arinomamaki@gmail.com
今井たら竜介

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