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原初美術の誕生 8: ヨーロッパ以外の原初美術1

2013年03月09日 | 連載完 原初美術の誕生

< タッシリ・ナジェールの絵 >

人類最初の美術が氷河期のヨーロッパで誕生し、やがて廃れた。

しかしその後、世界各地で美術が誕生することになる。

各地の原初美術を簡単に見ます。





< 原初美術の遺跡分布図、赤い部分が主な氷河期美術域、番号1~7が他の原初美術域 >

アフリカ1,2、インド3、オーストラリア4、アメリカ6,7の原初美術は総べて壁画であった。

それらに共通している題材は狩猟採集生活を反映しており、先住民が現在も描き続けている所もある。このために年代確定が困難にもなっている。

日本だけは壁画が無く、ビーナス像(土偶)であり、特殊である。




< 地図1,アルジェリア、タッシリ・ナジェール >

ここは現在、サハラ砂漠の真ん中であるが、当時は緑豊かであった。

8000年前頃から壁画が描かれ始め、やがて砂漠化の進行で、それは途絶えた。

始めは、狩猟採集生活であったが、牛飼養から馬による交易へと変化していったことが絵からわかる。

壁画が描かれた場所はかつての水場近くであり、祭祀や儀礼が行われていたことだろう。




< タッシリ・ナジェール、 狩猟採集時代の絵 >
 
上部の二人は頭や首、腕に飾りを着け、体に白い点列の瘢痕がある。

この傷痕は現在も中央アフリカに続く装飾の風習である。

下部には山羊、遊ぶ子供達、空想上の動物、クラゲに似たテントが描かれている。

それぞれがバラバラで、描く視点が自由で、重要度によって描き分けられている。

そこに神聖さはなく楽しさと親しみを感じる。




< タッシリ・ナジェール、 牛飼養時代の絵 > 

躍動感のある狩人、湾曲した船、雌雄を描き別けられた牛の群れが描かれている。

この時代の絵には、踊り、戦争、家庭生活、馬車、宗教儀式なども描かれていた。

茶色を基調に、緑と白が加えられ描かれている。




< 地図2,ボツワナ、ツォディロ・ヒル, by Jaap Sikkema >

ブッシュマン(サン人)はボツワナのカラハリ砂漠で昔ながらの狩猟採集生活を続けている。

その北方にツォディロ・ヒルと呼ばれる彼らが神聖視する山があり、そこに2500年前から描かれ続けた数千の岩壁画が残っている。一説には20000年前からとも言われている。

かつて彼らはこの山に周期的に訪れては暮らしていた。







< ツォディロ・ヒル、ブッシュマンと岩絵 >

上の写真には牛と犀とブッシュマン、下にはエランド(ウシ科)とキリン、その横に手形が添えられている。

絵の主題は、野生動物と狩猟や漁労が主で、舞踊、戦争、雨乞い、楽器演奏、仮面を被って踊る宗教儀礼などの場面もある。

数百年前になると、遠近感豊に多色で明暗処理を施した見応えのある壁画が生まれる。

南部アフリカには膨大な岩壁画遺跡があるが、これらは当時広く分布していたブッシュマンによって約6000年前から19世紀まで描かれたものです。


アフリカでも、古くは8000年前以降、湿潤な時代から狩猟採取民が原初美術・壁画を描いていた。

次回は、他の大陸の原初美術を見ます。







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