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原初美術の誕生 9: ヨーロッパ以外の原初美術 2

2013年03月16日 | 連載完 原初美術の誕生
< ビーマベトカのロックアート、盾と剣を持った戦士 >


今回は、インドとオーストラリアの原初美術を見ます。



< 原初美術の遺跡分布図、赤い部分が主な氷河期美術域、番号1~7が他の原初美術域 >


< 地図3,インド中央部高地にあるビーマベトカ山 >

ビーマベトカ山には、壁画がある岩陰や洞窟遺跡が3百ヵ所ほど見つかっている。

概ね1万年前から描かれ、後に農耕先住民によって描き加えらえた。

一部には3万年前の絵もあると言われている。この遺跡には原人の生活跡もある。インド南部には75000年前の現世人類の足跡がある。





< ビーマベトカの初期のものと考えら絵 >

上図には、長さ1.6mの牛、牛に追われ走る人、腰に手をあてる人、左に蟹が薄く見える。下図にはこぶ牛が見える。

これら初期の絵は、水牛、牛、象などを輪郭やその内側を幾何学模様で埋めた大きな動物像が多く、人物像はほとんどなかった。

動物はかなり写実的であるが、人物は様式化されている。

時代が下ると、馬や象の騎乗、弓矢や槍などでの戦い、盛飾を付けた馬や象、太鼓を打って舞踊、蜜蜂採集、漁労が描かれる。

これらが赤、黄、白、黒、褐色、そして希に緑色、それらが単彩から多彩の線画や平塗りで描かれる。




< 地図4,オーストラリア北西部のブラッドショー、このような岩陰に絵がある >

オーストリア西北部のキンバリーにオーストラリア最古の岩壁画があり、10万以上あると推測されている。

これらを描いたのは先住民アポリジニで、最古のものは43000年前との指摘もあるが、少なくとも17000年前以上だと考えられ、最近まで描かれ続けていた。

現世人類は陸続きで東南アジアの対岸まで来て、7万年前頃の氷河期、狭くなっていたティモール海峡を渡りこの地に入ったのが、オーストラリアの最初の人々であった。





< キンバリーのブラドショーにある古いものと思われる岩陰画 >

上図、これはおそらく世界最古のボートである可能性がある、4人が乗ったカヌーの船首と船尾は上向きに反っている。

下図、これは立派な枝角を持つ鹿の1列に並んだ群れで、この種の鹿はオーストラリアにはおらず、氷河期の東南アジアに生息していた。

航海を成し遂げた人が記憶に頼って描いたのかもしれない。


< ブラッドショーの踊る人の絵 >

腰、足首、頭に飾りを着け、体や腕をくねらせ踊っている。

踊り手の笑顔が伝わってくるようである。

インド、オーストラリアでも1~2万年前に壁画が描かれ始めていた。場合によっては3~4万年前もありうる。

次回は、日本とアメリカ大陸の原初美術を見ます。



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