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デマ・偏見・盲点 15: 風刺が目指したもの 1

2015年03月25日 | 連載中 デマ・偏見・盲点

< 1.海外の風刺画、ブログ「SKY NOTE」より  >

今年1月7日、フランスの週刊誌社が襲撃され、尊い命がなくなりました。
ご冥福をお祈りします。
今回は、事件の切っ掛けになった風刺文化について考えます。





< 2. シャルリーエブド紙の表紙 >

はじめに
近頃、続くテロの脅威には、暗澹たる気持ちにさせられます。
テロを処断するのは当然ですが、その撲滅について、大きく二つの考えがあります。
一つは、一挙に空爆などで本拠地を殲滅することです。
今一つは、テロの温床を無くすことで、再発や増殖を阻止することです。
この是非の考察は後に譲って、今回は、テロを誘発した風刺文化を振り返ります。

事件の切っ掛け
この週刊誌(シャルリーエブド紙)は辛辣な風刺画が有名で、以前から預言者ムハンマドも風刺していた。
さらに事件当日、自動小銃を持ったジハード戦士の顔を茶化した風刺画(週刊誌)が発売された。
そこには「フランスではいまだに襲撃が全くない」、また「待っていろ! 新年の挨拶ならまだ間に合う」の見出しが躍っていた。

風刺について
風刺は世界中、いつの世も大衆に受け入れられ歓迎されて来ました。
風刺は社会の悪弊や権力の乱用を懲らしめる効果もありました。
しかしそこには気が付かない落とし穴もあります。
少し、世界の風刺文化を一瞥して、その目指したものについて考察します。

世界の風刺文化から見えるもの
風刺とは「遠回しに社会・人物の欠陥や罪悪などを批判すること」と広辞苑にある。



< 3. 古代ギリシャ喜劇の仮面を被った役者像 >

古代ギリシャ喜劇
紀元前5~4世紀、祭典の催しの悲劇と並んで市民に絶大な人気がありました。
初期には張りぼてをかぶり卑猥な冗談や揶揄を交わしていた。
往時には、権力者(執政官)やソクラテスなどが風刺され、さらに作品「女の平和」で戦争反対を扱った。
この上演費用は裕福な商人や国家が出しており、風刺に寛容な民主主義の姿を見ることが出来る。

欧米の風刺
ヨーロッパで風刺作家が活躍し始めるのは17世紀頃からで、風刺は民衆の武器になった。
この風刺は社会や権力の愚かさや誤りを皮肉って、嘲笑を誘い民衆に大きな共感を呼び起こした。
この民衆への啓蒙手段は権力者や施政者には手痛いものとなった。
この意味で権力の風刺(言論の自由)は民主主義の要と言えます。




< 4.欧米の風刺 >

A:小説「ドン・キホーテ」。スペインの貴族社会を風刺。17世紀。
B:ロシア遠征に失敗したナポレオンを風刺。首を切られそうな人形がナポレオン。19世紀。
C:小説「ガリヴァー旅行記」。イギリス社会を風刺。18世紀。
D:映画「独裁者」。チャップリンがヒトラーを風刺。1940年。

次回は、日本の風刺文化と風刺の問題点を見ます。



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