カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

第六十四夜・夜桜終焉

2017-08-31 23:08:43 | 百人一首と色名で百物語
たかあきで『花の色は』と『墨染』を使って創作してください。

 ずいぶん昔、夜の水路に桜を見に行ったことがある。ときおり月の光を反射する漆黒の只中で一面に散らばった薄紅の花弁を彼方に運んで行く黒い水面に幻惑されながら、これはきっとどんな反物よりも奇麗だと思った。
 でも、私はその時、同じ水路で溺れ、美しい水面の下で冷たくなった子どもが下流に向かって流されていったのを全く知らなかった。
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