カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

[ 這う / 星空 / 知識(ダアト) ]より・うちにかえろう

2015-04-30 19:35:35 | 三題ランダムキーワード
 夜空の星の輝きに憧れながら大地を這って暮らしていた人類は、やがて知恵を重ねて星と同じ高さを飛べるようになった。
 だから、自分たちが生まれた星を遠く離れた我々は、今度は大地に帰る為に飛ぶのだと教えてくれた先輩は宇宙に散った。

 先輩は今でも飛び続けているのだろうか、遙か遠くに離れてしまった母なる大地を目指して。
コメント

[ 憎む / タイル / 創造(ブリアー) ] より・石の記憶

2015-04-29 20:06:51 | 三題ランダムキーワード
 己の感情を物質化させることが出来る魔法使いは、滅多にその力を使わない。
 
 希望の虹色、爽快の薄青、愛するものに向ける淡い紅色、哀しみを含んだ菫色、漆黒の狭間で絶え間なく弾ける深紅の怒り。

 売りに出せば買い手が競って値を吊り上げる希少な結晶は魔法使いの記憶を精練したもので、美しい結晶を作れば作るほどに魔法使いの中身は空っぽになっていくのだ。
コメント

[ 安心 / 手紙 / 不安定(アィーアツブス) ] より・手紙が駄目なら電話でも無理

2015-04-28 19:45:05 | 三題ランダムキーワード
 実家を出て大学に通っている後輩にたまには親を安心させてやれと言ったら、いきなり手紙を書きはじめようとした。何でも親は携帯を持たず、メルアドなどネットに関わるモノも一切判らないらしい。

 一体どんなことを書けば良いんですかね?と訪ねてくる後輩に、最近あったことを正直に並べて元気にやっていると書き添えれば良いのでは?とアドバイスした。 
 以下手紙の下書き内容。

 お元気ですか、僕は学業とバイトとサークル活動の中彼女が出来て、毎日奢らされたり彼女の浮気を伴った泥沼の三角関係から修羅場を体験したりといろいろ忙しい日々を送っていて、たまに熱を出しますが元気です。

 とりあえず手紙を出すのは止めさせた。
コメント

[ 歌う / 爪 / 醜悪(カイツール) ] より・鉤爪を持つセイレーン

2015-04-27 20:05:36 | 三題ランダムキーワード
 その化け物は人間の若い女性に良く似た姿をしていて、非常に美しい声で獲物を誘き寄せては鉤爪で引き裂き、主にはらわたを好んで喰らう。
 化け物の美声に魅了された哀れな獲物たちは、鉤爪ではらわたを引きずり出された時に、初めて己が聞かされた歌声が獣の腹に埋め込まれた生首が歌っていることに気付くが、その時は手遅れだ。
コメント

[ 懐かしむ / ミルク / 太陽(サン) ] より・猫曜日

2015-04-26 21:15:52 | 三題ランダムキーワード
 日差しの下で何となく微睡んでいたら、唐突にミルクの香りと共に何かを思い出しかけた。

 甲高いが耳障りではない鳴き声、柔らかな布団の上で転がりながら、ざらついた感触で撫でられた不思議な記憶。
 私が赤ん坊の頃、既に両親の仲は冷え切っていて、母の育児放棄が原因で施設育ちとなった私に可愛がって貰った安らかな記憶は無いに等しく、不思議に思って友人に話したら、それは前世で猫だった時の記憶に違いないと断言された。
 それを聞いた時、何だかとても幸せな気分になれたので、取りあえずそういうことにしておこう。
コメント

拍手画像更新

2015-04-25 21:56:13 | 拍手
「松高三羽鴉」をUPしました、画面右のWeb拍手ボタンをクリックすると見られます。
コメント

[ 困惑 / 拳 / 無感動(アディシェス) ]より・イノチ ノ オモミ

2015-04-25 20:01:39 | 三題ランダムキーワード
 同級生に殴られ続けたのに周囲も、教師も、親兄弟ですら助けてくれなかったので、覚悟を決めて自分の方から殴ってやった。
 反撃されるとは思っていなかったらしく動揺する相手を床に蹴り倒し、逃げないように痛めつけてから何度も蹴りを入れていたら動かなくなった。
 当然ながらとんでもない騒ぎになったが、この件に関して僕が悟った真実は、「人死にが出ない限り滅多なことでは騒ぎにはならないので、騒ぎを起こしたかったら、そして自分が死にたくなかったなら対応は一つしかない」だった。
コメント

[ 歩く / 翼 / 皇帝(エンペラー) ]より・パンとサーカスと剣と

2015-04-24 21:05:38 | 三題ランダムキーワード
 古代ローマ帝国の皇帝は、ローマ市民に対する生活保証と娯楽の提供を怠るとたちまち信望を失って皇帝の座から引きずり下ろされたと言う。中世イタリア地方の支配を目論んだチェーザレ・ボルジアに領主の座を追われたグイドバルトは、その人の好さと無能故に領主として返り咲きを果たす事が出来た。

 権力者が己を支える周囲の人間を見失った時、そこに現れるのは奈落の淵だ。
コメント

[ 悔やむ / 風鈴 / 愚鈍(エーイーリー) ] より・北風に風鈴が響く

2015-04-23 18:59:25 | 三題ランダムキーワード
 季節外れの風鈴が我慢できないほど煩いので外してくれと隣の家に頼んだら無視された。
 仕方ないから庭に入って自分で外そうとしたら家の誰かが気付いて騒ぎ、我慢できないほど煩かったので思い切り何度も叩いたら動かなくなった。途方にくれていたら誰か帰って来るなり動かない家族に気付いて喚き散らし、やはり我慢できないほど煩かったから再び叩いて黙らせ、それを五回程繰り返した。

 結局、服に染み付いた悪臭に辟易しながら、何処かに捨てるにしても持ち運びし安くしようと部品に解体していたら踏み込んできた警察に捕まったのだが、俺はただ風鈴の音を止めたかっただけだと皆に判って欲しい。
コメント

[ 怪しむ / 衛星 / 愚者(フール) ] より・王と道化の黄昏

2015-04-22 20:27:33 | 三題ランダムキーワード
 その惑星の王は常に、仮面で醜い素顔を隠した道化を傍らに置いていた。道化は蔑まれ、時には物を投げつけられながらも軽口と毒舌を操り、結果として国が滅びる日まで巧みに王を補佐したという。
 かつて病で変わり果てた姿と化した第一王子に絶望した先王が、王子を殺さぬ代わりに彼の存在を抹消して永久追放処分にしたことを知っていたのは、道化だけだ。
コメント