Andyの日記

不定期更新が自慢の日記でございます。

ギターの鳴り

2007-05-18 17:42:38 | 音楽・楽器
よくギター雑誌や楽器店の広告で見られる「素晴らしい鳴り」とかいうキャッチコピー。
こういうのを見ていると、鳴るギター=いいギター、というふうに無条件に思い込んで
しまいがち。というか、鳴るギターは悪いことはないのだが、どうもその「鳴り」という
状態を、ほとんどのギター弾きは勘違いしているらしいことが最近わかった。ここで
自戒の意味も含めて、まとめておきたい。

ほとんどのギター弾きは、「鳴る」=「生音が大きい」と直結して考えているということ。
生音が大きければよく鳴っているギターだと思っているようだが、それは必ずしも正しくない。
例えば大きい音で鳴っていて、ボディーから体に振動がよく伝わってくるような場合、
「このギターはよく鳴っている」と感じるが、その鳴りの中に高域成分がしっかり出て
いなければ、モコモコしたサウンドでレスポンスが悪かったり、低域がしっかり存在して
いなければ、アンプからはコモった音が出力される。

つまり、「生音は大きければ良いというものではない」ということ。良い生音というのは、
立ち上がりがしっかりしていて、かつ早く、倍音バランスに優れていること。よく使われる
「鳴り」という言葉、これはまさしく「響き方」なわけで、そもそも楽器なのだから、この
「響き方」が優れている方が良いが、これは材種や密度によって変わってくるところなので、
一概に鳴りが大きい方が良いというわけではない。ただし、乾燥状態がよければ
必然的に鳴りは大きくなるので、それは差し引いて考えるとする。

さらには、「鳴り」には「抜け」と「立ち上がり」の要素も重要で、これらが渾然一体と
なって素晴らしいコンディションであって、初めて「よく鳴っている」と評価するに
値するギターであるということ。たとえば、最近よくボディー材に使用されるバスウッド。
バスウッドはひじょうに柔らかい材なので、鳴りの「音量」だけで言うと、よく鳴っていると
思いがちだが、それを厚い塗膜で固めてしまったギターでは結局抜けが悪くなり、しかも
バスウッドの特性として中低域に倍音が集中するので、しっかりと全体を支えるボトムと
輪郭を作る高域が共に不足し(薄いネックではなおのこと)、全体的にモヤッとした音像になる。
アタックレスポンスが良く、芯のある鳴り方をしていなければ、それは鳴っていない証拠。

また、巷でよく言われる「軽いギターこそ鳴りが最高」とか「ギターは重くないとしっかり
鳴らない」とかだが、これはどちらも正解ではなく、どちらも間違いではない。軽いボディーの
場合、要は振動しやすいわけだから、細いゲージの弦でもかなり鳴らすことができ、逆に
重いボディーの場合、ある程度太いゲージの弦でないとしっかり鳴らすことができない。
だがこれらは出音の良し悪しとは関係ないところの話。

ボディーが軽すぎるとどうなるか、まずは芯が無い音になりやすい。しかも腰のないサウンドに
なりやすい。これがデメリット。逆に重すぎれば中域に倍音が少なく、相当太いゲージの
弦を張って強く弾かないとボディーをしっかり鳴らしづらい。しかし一番重要なのは重い/軽いに
関わらず、その材の特性をしっかり引き出す材の使い方、つまりボディー、ネック、その他の
部材を理想的に組み合わせてあるかどうかということ。

こういう知識をしっかりと頭に入れたうえで、これから買おうとしているギターが、
きとんと鳴るギターであるのかを楽器店で判断するには、次のポイントを確認する

☆ちゃんとネックやボディーが振動しているか

これは適当なコードなどやシングルトーンを鳴らしたときに、ヘッドやネックの裏、
ボディーなどに手を添え、しっかり振動が伝わってくるか。このときの判断のポイントは、
各部の振動が極端に異質で無いかという点と、振動の伝わり方(振動の大きさ)に
極端な差が無いかという点。異質な振動というのは、明らかに場所によってパルスが
違う事を指し、その場合、ネックとボディーのバランスが取れていなかったりネックと
ボディーの接合部に何かしらの問題があると考えられる。

振動の大きさの差というのは、特にボディーなど、ある部分ではしっかり振動が
伝わってくるのにある部分ではほとんど振動が伝わってこないというようなムラが
あることを指し、これは材の木取りなどに問題がある事が多い。で、この段階での
注意点としては、振動が大きければ(生鳴りが大きければ)それで良いということではなく、
バランス良く障害なっているかを見極めるためである事を意識する事が重要。

この第一関門を突破して、次。

☆音の性質を見極める

これが一番難しいかもしれない。音程としてではなく、音の質としての話だが、
弾いた時にしっかりと高域が出ているか。つまり、立ち上がりが早いかどうか。
ピックで弦を弾いた瞬間に素直に素早く音が立ち上がってくるかということ。
これに必要な事は必要なだけの低域がしっかり出ているかということでもあり、
つまりは音の輪郭がしっかり出ているか?ということでもある。なんとなく緩慢であったり、
輪郭のぼやけたような鳴り方をしているという事は、まずネックが怪しい。


☆各弦の鳴り方はどうか

つまり、一部の弦だけ妙に鳴りが小さかったりしていないかということ。
例えば3弦だけ妙に小さいとか…。当然太い弦の方が大きい音で鳴り、細い弦の方が
小さい音で鳴る。開放弦で一弦ずつ順に弾いていき、極端に音の小さい弦があるという事は、
その周波数帯にデッドポイントが出やすいか、ナットの溝切りの状態がよくなかったりと、
色々原因はあるが、鳴りそのものには不自然な差が無いのに突然発音の小さい弦が
存在するという事は修理やセットアップで対応できない問題点を内包している可能性がある。

各弦ごとに聞き比べた後、全弦を使ったコードなどを弾いてみて、どのポジションでも
全ての弦の音を重なった和音の中から聞くことができるかを調べる。よくあるのが
1弦だけ聞き取りにくいと言う類の物。これは間違いなく高域不足。だが、元々.009の
ゲージなどでは少々細い弦が弱くなるのは当然なので、これは判断材料とはしない。

最低限これくらいはクリアしたいところだが、…少ないですね、ここまでパスできるギターって。