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〔 温泉地巡り 〕 松之山温泉

新型コロナウイルス感染症拡大による混乱がつづいています。
各地の温泉地は、未曾有の客数減に見舞われているのではないでしょうか。
ピークが抑えられ、かつ早急の収束がはかられることを祈っています。

超久しぶりに温泉関連の記事を入れます。
ここ数年、完璧に御朱印&音楽ブログと化していましたが、これから少しづつ、温泉関係記事も入れていきます。

「温泉地巡り」シリーズ、松之山温泉編のリニューアルUPです。

 

〔松之山温泉について〕
<プロフィール>
越後、妻有の雪ぶかい山あいに湧く松之山温泉は、有馬、草津とともに”日本三大薬湯”に数えられ、ふるくから名湯の誉れ高い湯場です。
松之山温泉の中心は”鷹の湯温泉街”で、周辺に点在する別源泉の、”庚申の湯”、”鏡の湯”、”湯田の湯”などをあわせて松之山温泉郷と称します。

松之山のメイン、鷹の湯(湯本)地区は、湯本川の沢沿いにしっとりと温泉街らしい佇まいをみせています。
中心は共同浴場「鷹の湯」、「千歳」あたり。こぢんまりとした温泉街で端から端まで歩いても10分程度。湯宿は約10軒。

 
【写真 上(左)】 冬の鷹の湯温泉街入口
【写真 下(右)】 春の鷹の湯温泉街入口


【写真 下(右)】 雪の鷹の湯温泉街-1
【写真 下(右)】 雪の鷹の湯温泉街-2

比較的小規模な宿が多く、全体にまとまりのあるたたずまい。
団体向け大規模旅館がないのでしっとりと落ち着いた雰囲気がただよっています。
(ただし、最近廃業したお宿もありやや淋しくなっている箇所も。)

多くのお宿で日帰り入浴OKなので外湯感覚でまわるのもよいのでは?(ただし、いまは日帰り入浴のハードルが高くなっている模様)
鷹の湯温泉街の道は狭く人通りも多いので、日帰りの場合は温泉街入口の無料公共Pに停めた方がベター。
中心の「鷹の湯」まで歩いても3分程度です。

 
【写真 上(左)】 鷹の湯2号泉
【写真 下(右)】 湯気あがる湯本川

温泉街上手の湯本川沿いに2号井の温泉やぐらがあり、独特の湯の香をふりまきながらもうもうと湯けむりをあげています。
奇祭、”婿投げ”で有名な薬師堂もこのそばにあります。

 
【写真 上(左)】 薬師堂
【写真 下(右)】 ”婿投げ”&”すみ塗り”の説明板

 
【写真 上(左)】 温泉街上手の不動滝
【写真 下(右)】 上手からの温泉街

しかし、火山もない雪深い山里に90℃以上の温泉が涌いているのは何とも不思議な感じ。地下の異常高圧熱水が涌き出る「ジオプレッシャー型温泉」とされています。


【写真 上(左)】 鏡の湯「凌雲閣」
【写真 下(右)】 じょうもんの湯からの展望

”鷹の湯”のほかにも、鏡の湯「凌雲閣」、庚申の湯「植木屋旅館」(廃業情報あり)、兎口温泉 翠の湯「兎口露天風呂 翠の湯」(2013年春廃止)、湯坂の湯「ナステビュウ湯の山」など、個性ゆたかな名湯が点在し、温泉好きにはこたえられないエリアとなっています。
また、鏡の湯「凌雲閣」は木造三層の趣ある建物で、かつて高松宮殿下がご宿泊された名宿として知られています。

 
【写真 上(左)】 雪降り時のアプローチ
【写真 下(右)】 豪雪に埋もれる「千歳」の露天

■ 松之山の名物
<美人林>
松口エリアにあるの樹齢約100年ほどのブナ林で、ブナの立ち姿が美しいことから「美人林」(びじんばやし)と呼ばれています。周辺は野鳥の宝庫としても知られています。
 
【写真 上(左)】 美人林
【写真 下(右)】 松之山の野鳥

<棚田>
山間の豪雪の地、松之山には棚田(階段状に連なる水田)がよく残っています。
「狐塚の棚田」は、日本の棚田百選に認定されています。
 
【写真 上(左)】 棚田-1
【写真 下(右)】 棚田-2

<美味しいもの>
松之山の銘菓としては、ふるくからこしあんを米粉のお餅でくるんだ「しんこもち」が知られています。名物まんじゅうとして「婿投げまんじゅう」もあります。

「はっか糖」は越後塩沢の名物として知られていますが、松之山でも昔からつくられていたようです。はっかはミントの一種で日本には古来”和薄荷”が自生しており、この”和薄荷”をつかってつくられたとされます。国産のミントキャンディです。

山間の豪雪地だけに山の幸には事欠きません。なかでもなめこの質には定評があり、ご当地カレーとして松之山温泉なめこカレーが開発されています。

新潟は味噌の本場ですが、松之山(黒倉集落)にも「山鳩みそ」という貴重な地味噌があります。松之山産の米と麹、新潟県産のエンレイ大豆を使って手作りでつくられる自然熟成・無添加の貴重な味噌で、とくに焼き味噌の風味には定評があるようです。
「しょうゆの実」(しょうゆ豆)は、大豆・白米・大麦などからつくった麹を生醤油で仕込み、もろみとして発酵熟成させる越後の郷土料理です。
松之山では、「山鳩みそ」「しょうゆの実」そして発酵味噌「まんまの味」を”松之山三大発酵食品”として売り出し中のようです。

酒処、越後だけに地酒のレベルは高いです。
とくに上越市浦川原の 新潟第一酒造の山間(やんま)は、松之山ゆかりの銘柄として売り出しに注力しているようです。
私は飲んだことがありませんが、精米がむずかしく廃れてしまった幻の酒米「たかね(高嶺)錦」を復活させて醸したものもあり、人気が高いようです。
ほとんどの特産品は温泉街中ほどにある十一屋商店で買い求めることができます。

 
【写真 上(左)】 「ちとせ」の夕食
【写真 下(右)】 滝見屋の蕎麦

松之山の名宿「ちとせ」(旧「千歳」)では、里山料理に力を入れ、「棚田鍋」「あんぽ」「湯治豚」「菜々煮」などの名物レシピが楽しめます。
もともと、松之山では鯉料理が名物でしたが、嗜好の変化により鯉料理が苦手な客が増えているようです。松之山の鯉は清水で泳がせるため臭みが抜けるとされ、事前に希望すれば鯉料理を楽しめるお宿もあります。

松之山に逗留する場合など、昼食は温泉街の「滝見屋」で山菜たっぷりの蕎麦を楽しむことができます。

■ 松之山の雪(以前のレポを集約)
松之山は日本有数の豪雪地です。
どれくらいすごいかというと・・・、小千谷79、十日町148、塩沢148、妙高高原213、酸ヶ湯307(全国1位)、山形肘折285(同2位)に対して、松之山284 (2002/02/19現在の積雪深、単位㎝) (「新潟県雪情報システム」、「雪センター」HPより)といった感じで、豪雪で知られる魚沼地方よりいちだんと雪深いところです。

また、旧国鉄駅の積雪ランキング1位は、ひと山越えた飯山線「森宮野原駅」の785㎝なので、やはり第一級の豪雪地帯といえるでしょう。
北信濃には「一里一尺」ということばがあります。これは長野盆地から信濃川(飯山線)に沿って信越国境を進むと、一里(3.9㎞)につき積雪が一尺(30㎝)づつ増えていくというもので、市川健夫博士は、実データを用いてこのことばの裏付けをされています。(雪国文化誌、NHKブックスS55刊)
その積雪がピークを迎えるのが、松之山にもほど近い「森宮野原」駅ということになります。

●豪雪地の代表格として知られる越後湯沢の積雪データ
●おなじく津南のデータ
松之山のデータ
雪が多い年で、越後湯沢・津南が3m程度、これに対して松之山は4m越えもあり、豪雪で知られる越後湯沢・津南あたりよりさらに約1mほども積雪(最大積雪深)が多いことがわかります。

ここでは、屋根の「雪下ろし」ではなく「雪堀り」というそうです。
日に1mあまりも積ることがあり、5月まで雪が残ります。

でも、雪降りの日でも北西風はよわくそれほど寒くありません。
粒の大きな湿った雪がひらひらと降り、もこもこと積もります。
日本海から近く、背後に東頸城丘陵が北西季節風を受けるように屹立しているので、山雪、里雪どちらでも局地的な大雪となるようです。

 
【写真 上(左)】 雪の壁
【写真 下(右)】 5月でも残る雪

ここにノーマルタイヤ、ノーチェーンで入るのは完全に自殺行為(というか、まず辿りつけない ^^ )。
雪道運転に自信のない方は鉄道利用がベター。ほとんどの宿でほくほく線「まつだい駅」から送迎有です。

松之山でももっとも雪が多いとみられるのは、東頸城丘陵寄りの天水越、田麦立、中原などで、さらに奥の大厳寺高原は11月から翌5月までの約半年、道路閉鎖により車で到達することはできません。

大厳寺高原の上にある野々海峠(池)あたりはとくに雪が多いらしく、「東頸城丘陵の野々海峠は信越国境にあり、(中略)このあたりでは平年でも8mほど積る。」(雪国文化誌(同上))という情報もあります。
西高東低の冬型の気圧配置がゆるむとき、最後まで雪雲がかかっているのはたしかにこのあたりのようです。

 
【写真 上(左)】 5月の大厳寺高原
【写真 下(右)】 5月下旬でもこの雪の量(大厳寺高原)

●飯山線の並はずれた豪雪ぶりを実感できる貴重な動画 ↓
【前面展望】 大雪のJR飯山線 十日町→戸狩野沢温泉 164D キハ110-229
(2013-02-11、新潟県津南町で日積雪85cm、→天気図(おそらく里雪型の豪雪時)

とくに33:45 足滝駅~49:15 平滝駅の豪雪がもの凄い。(→飯山線の路線図
この状況で4分遅れで留めるとは、運転手さん、神業すぎ!
これじゃ車は走れないわな。やっぱり鉄道は雪に強い。
そして、こんな豪雪の地に集落があって人が住んでいるとは、日本人おそるべし。

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【 松之山入り(2002年2月、松之山初訪時の雪のようす)】
その後、津南へもどり国道353号を北へ(R405は冬期閉鎖)。いよいよ松之山入りです。
折しも雪が激しくなり路面は完全圧雪。
津南と松之山の町境、豊原トンネルを抜けると雪の降り方が変わりました。雪の粒が異常に大きく、雪の固まりが落ちてくるような降り。
道幅がけっこうあるのが救いですが雪の壁の高さは今までで最高。ところどころで3mを超えている感じです。
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小雪で明けた2日目は、朝ぶろを浴び朝餉をとっているうちにみるみる青空に。
さらに豪雪を求めて最奥の集落田麦立へ。
凄いくらいの雪晴れのもと、あちこちで「雪掘り」をしています。
干し物をしたり、日だまりに盆栽が出されていたり、雪国の晴れ間の貴重さが窺い知れます。
奥の大厳寺高原まで除雪が入っていたのでここぞとばかりに突入。
あたりはおそらく4m近い積雪。でも、除雪が速く、路面の雪はかなり消えています。
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【写真 上(左)】 「鷹の湯」外観
【写真 下(右)】 「鷹の湯」内湯

<歴史>(「まつのやま.com」などを参考)
「700年ほど前の南北朝時代、一羽の鷹が舞い降りて傷ついた羽を休めているのを木こりが見つけ、そこにこんこんと湧く熱泉を発見した」という開湯伝承をもつ古湯で、室町時代には、越後守護上杉家の隠し湯であったという説もあります。
伝承にちなみ「鷹の湯」、「霊鷹の湯」と呼ばれ、その効能の高さは古くから知られていたようです。

江戸時代に入ると湯小屋場と木賃宿を擁する7日一廻りの湯治場の体裁を整え、集められた湯銭で出湯役(一種の税金)を納め、湯小屋や薬師堂の維持・補修の費用に充てていたとされます。

なお、松之山温泉の守護神として少彦名命が祀られていたという伝承があるようです。
また、温泉守護とされた薬師如来の系譜は、現在も山手の「薬師堂」に伝わっているようです。

 
【写真 上(左)】 鷹の湯の説明板
【写真 下(右)】 温泉番付

庶民のあいだに”温泉ブーム”が訪れた江戸中期以降、松之山はいよいよその名を高め、温泉番付でも前頭上位あたりの常連でした。
越後でこれより上に位置づけられた湯場はほとんどみられず、越後第一の名湯であったことがうかがわれます。

明治期の泉源所有権騒動、昭和29年8月の大火など波乱の歴史を辿りながらも、その薬湯の名声は衰えることなく現在に至り、広く浴客を集めています。

 
【写真 上(左)】 「和泉屋」内湯
【写真 下(右)】 松之山最強と思われる「千歳」家族風呂の湯口

<温泉>
平成17年3月現在の県作成の「温泉利用状況報告書」によると、松之山温泉で利用源泉11(内 自噴10、動力1)、湧出量自噴257L/min、動力168L/min、宿泊施設数16となっています。

情報を整理してみると、
1.鷹の湯(1号・2号・3号)
「鷹の湯共同浴場」「ひなの宿 千歳」「和泉屋」など”鷹の湯温泉街”各宿。「旅館明星」は3号泉単独利用です。
Na・Ca-Cl温泉 85.5℃ pH=7.5 総計=14.98 〔1号・2号・3号混合泉/共〕
Na・Ca-Cl温泉 84.0℃ pH=7.3 総計=14.75 〔1号・2号混合泉(以前)/共〕

4.鏡の湯(・鷹の湯3号)
「凌雲閣」
Na・Ca-Cl温泉 98℃ 〔鏡の湯/自〕

5.庚申の湯 (廃業のWeb情報あり)
「植木屋旅館」
含ホウ酸土硫食塩泉? 37℃ pH=8 〔庚申の湯/自〕

6.兎口温泉 翠の湯 (廃業のWeb情報あり)
「兎口露天風呂 翠の湯」
Na・Ca-Cl温泉 72.1℃ pH=7.6 総計=14.34 〔兎口1号/自〕

7.湯田の湯
「渋海リバーサイド ゆのしま」
泉質不明 25℃ pH=8.8 ER=1.45 〔湯田の湯/自〕

8.じょうもんの湯
「おふくろ館」
単純硫黄冷鉱泉(Na・Mg-HCO3・SO4型) 13.0℃ pH=7.8 総計=0.46 TS=3.9 〔じょうもんの湯/自〕

9.湯坂の湯
「ナステビュウ湯の山」
Na・Ca-Cl温泉 95℃ pH=7.6 総計=15.42 〔湯坂温泉/自〕

10.まきばの湯
「ばーどがーでん」
単純鉄冷鉱泉(Fe-HCO3型) 12.1℃、pH=6.6、2.0L/min自然湧出、成分総計=111.5mg/kg 〔まきばの湯/自〕

 
【写真 上(左)】 鷹ノ湯3号の湯色(旅館 明星)
【写真 下(右)】 鏡の湯の湯口&湯色(凌雲閣)

11の利用源泉のうち、上記のとおり10までは比定できますが、のこる1源泉が不明。
名湯並び立つ松之山だけに気になるところですが、下記の情報を照合してみると、
http://www.city.tokamachi.niigata.jp/site/reiki_int/reiki_honbun/r106RG00000628.html
http://www.pref.niigata.lg.jp/tokamachi_kenkou/1265576492447.html
http://www.matsunoyama.com/modules/info/index.php?content_id=36
・松之山4号(十日町市松之山湯本539番地1)
・兎口1号(十日町市松之山兎口346番地)
が該当する可能性があります。

入湯リスト

 
【写真 上(左)】 湯坂温泉 「ナステビュウ湯の山」
【写真 下(右)】 兎口温泉 「翠の湯」

昭和初期まで、松之山温泉は旧?”鷹の湯”源泉1本に依存していたものとみられます。
昭和12年、天水越で「鏡の湯」の掘削に成功、翌13年には湯本(鷹の湯地区)でも掘削に成功し安定した供給が可能になったようです。(1号井、深度170m、開発時92℃、62.3L/min)
昭和39年、湯宿の増加に対応するため2号井が掘削され湧出に成功(2号井、深度264m、開発時90℃、360L/min)、この2号井は温泉街のおく、湯本川沿いで湯煙を上げているものです。

 
【写真 上(左)】 庚申の湯 「植木屋旅館」
【写真 下(右)】 棚田

以降、”鷹の湯”共同泉は1号・2号混合泉が利用されてきましたが、平成19年8月、上湯地内で新源泉3号井の掘削に成功、以降、共同泉は1号・2号・3号の混合泉となっています。(3号井、深度1,301m、開発時92℃、600L/min)

〔鷹の湯3号泉(松之山温泉バイナリー発電)について〕
鷹の湯3号井は鷹の湯1号・2号の補完源泉として、温泉街から1㎞ほど離れた上湯地内に掘削され、平成19年8月に自噴の湧出を得ました。
掘削後の調査では湧出量(最大)624L/min、井戸を絞って湧出量は260L/min。源泉は減圧所で温泉街での使用量とのバランスをとり、温泉街へ埋設配湯管で送湯、不要分は河川へ排出されていました。

 
【写真 上(左)】 3号源泉遠景
【写真 下(右)】 3号源泉

その排出量は平成21年11月の調査時において130L/min(温泉街への送湯量は約130L/min)でした。
発電導入可能性検討資料によると「源泉3号からの湧出量を411L/minに増加させることで、バイナリー地熱発電システム*(送湯端:50kW、年間送電量:416MWh)を導入可能」としています。
松之山温泉での温泉発電システムの開発と実証事業は、平成22年度~24年度の3年間実施されましたが、ここから考えると、温泉街へは地熱発電による温度低下を受けない130L/minが供給されていたものとみられます。

このWeb記事には「浴用には使えず捨てていた熱水に加えて大気に捨てている余剰蒸気を利用することで、源泉3号からの湧出量をほとんど増やさずに、発電設備へ水温98度、毎分388リットルの温泉水に匹敵する熱量を供給しようというものです。」という記載があります。

*)80~150℃の蒸気や熱水を熱源として、アンモニアなど、低沸点の媒体を加熱・蒸発させて、その蒸気でタービンを回し発電するもの。2つの媒体(水と低沸点媒体)を利用することからバイナリーと呼んでいます。
 通常の蒸気発電に使われる地熱より低い温度、または、小規模な蒸気・熱水が利用可能で、温泉井に適用できる可能性があります。新潟県資料より

 
【写真 上(左)】 川に捨てられる熱水
【写真 下(右)】 バイナリー発電の説明

ここで気になるのは「発電設備へ水温98度、毎分388リットルの温泉水に匹敵する熱量を供給」するために、「湧出量を411L/minに増加」していたのか、それとも「湧出量は260L/minのままで、大気に捨てている余剰蒸気を利用」していたのかということです。

温泉関係者のWebUP記事などをみると「捨てていた温泉の熱水を利用する」という認識があるようなので、後者だとは思いますが、何となく気になります。

素人的素朴な疑問ですが、湧出量(最大)624L/minで、温泉街への必要送湯量が130L/minであれば、井戸を130L/minまで絞れば「河川に捨てる」こともないのでは?
異常高圧自噴で湧出量を260L/minまでしか絞れないということであれば、どうしても余ってしまう130mlを発電に充てることは理にかなっているとも思いますが・・・。
ただしその場合も経済性はあるのかな?(この資料を読む限りかなり収支は厳しそうな感じもしますが)

松之山温泉(鷹の湯井系列)はジオプレッシャー型の化石海水温泉とみなされ、その賦存量は有限(=いつかは枯渇する)であるとされています。
そうであれば、「薬湯」とも称される希有の源泉、できる限り大切に扱ってほしいような気がします。

なお、十日町市発表資料(H22.4.19)では、この発電実証試験は、「平成21年度に新潟県が実施した『バイナリー地熱発電導入可能性調査』で有望な温泉として選ばれ、地元の意向を確認して実証研究を行うこととなった。」との経緯が説明されています。

十日町市の最新情報によると、「松之山温泉「鷹の湯3号源泉」を活用した地熱発電事業について、平成31年3月27日付けで締結した基本協定に基づき、発電事業を実施する特別目的会社「松之山温泉合同会社 地・EARTH(ジアス)」が設立されたことから、事業契約を締結しました。」とあります。
発電出力は210キロワット、一般家庭約300世帯に相当する年間124万キロワットアワーの電力を売電し、契約期間は令和元年12月24日から20年間とのことです。

<松之山温泉1号泉>
Na・Ca-塩化物温泉 84.0℃、pH=7.3、60L/min掘削自噴、成分総計=14.75g/kg
Na^+=3412mg/kg (58.20mval%)、Ca^2+=2013 (39.37)、Fe^2+=0.5
F^-=2.3、Cl^-=8656 (98.73)、Br^-=25.7、I^-=4.4
陽イオン計=5565 (255.0mval)、陰イオン計=8832 (247.3mval)
メタけい酸=79.3、メタほう酸=242.0、遊離炭酸=36.0 <S57.11.30分析>

<松之山温泉2号泉>
Na・Ca-塩化物温泉 92.4℃、pH=7.6、93L/min掘削自噴、成分総計=15.71g/kg
Na^+=3496mg/kg (57.65mval%)、Ca^2+=2097 (39.65)、Fe^2+=0.2
F^-=2.8、Cl^-=9367 (98.89)、Br^-=27.5、I^-=3.3
陽イオン計=5752 (263.6mval)、陰イオン計=9534 (267.1mval)
メタけい酸=67.6、メタほう酸=349.5、遊離炭酸=3.2 <S57.11.30分析>

<松之山温泉3号泉>
Na・Ca-塩化物温泉 97.5℃、pH=7.7、200L/min掘削自噴、成分総計=16095mg/kg
Na^+=3700mg/kg (60mval%)、Ca^2+=2100 (37)、Fe^2+=0.04
F^-=2.9、Cl^-=9500 (99)、Br^-=28、I^-=7.3
陽イオン計=6032 (266.9mval)、陰イオン計=9623 (272.3mval)
メタけい酸=170、メタほう酸=270、遊離炭酸=0.2 <H20.11.14分析>

<松之山温泉1号・2号・3号混合泉>
Na・Ca-塩化物温泉 88.7℃、pH=7.8、882L/min 掘削自噴、成分総計=16257mg/kg
Na^+=3781mg/kg (59.77mval%)、Ca^2+=2043 (37.05)、Fe^2+=0.0
F^-=2.8、Cl^-=9514 (98.68)、Br^-=35.0、I^-=5.8
陽イオン計=6085.9 (275.1mval)、陰イオン計=9712.8 (271.9mval)
メタけい酸=169.5、メタほう酸=287.4、遊離炭酸=1.7 <H30.10.15分析>

<松之山温泉1号・2号・3号混合泉>(旧データ)
Na・Ca-塩化物温泉 85.5℃、pH=7.5、掘削自噴、成分総計=14979mg/kg
Na^+=3500mg/kg (60mval%)、Ca^2+=1900 (38)、Fe^2+=0.03、F^-=2.8、Cl^-=8900 (99)、Br^-=25、I^-=10、陽イオン計=5593 (251mval)、陰イオン計=9025 (252mval)、メタけい酸=110、メタほう酸=250、遊離炭酸=0.8 <H20.11.14分析>

強鹹味+苦味の松之山味に墨を思わせる臭素&イオウがかったアブラ臭の”松之山臭”は”薬湯”の名に恥じない絶品で、一時期中毒症状に陥った筆者は、4年連続して冬場に泊まりました(笑)。
強食塩泉特有のほてりをともなう強烈なお湯は、やはり冬場に真価を発揮するような・・・。
降り積もる雪を眺めながらつかるほてり湯は、ほかには代え難い独特の趣があります。


E138.36.8.095N37.3.43.280

〔 2020/04/04リニューアルUP 〕
〔 2011/09/08UP 〕

【 BGM 】
WIDE OPEN SPACES - John Jarvis


Hey Nineteen - Steely Dan


Emily - Dave Koz
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