「どうだね？村上優香里君、真田君とのデート楽しかったかい」
優香里は携帯のメールを読んだ途端に頭の中が真っ白になった。
なぜなら、この携帯のアドレスは拓以外に知らせていないから。
優香里と真田拓は友達以上恋人未満の間柄である。
知り合ったのはたった一ヶ月程前だ。
優香里が迂闊な事にレストランで忘れたスマホを拾ってくれたのが、真田である。
笑顔のチャーミングな頭の良さそうな彼を見た途端に優香里の心がキュンとした。
拓も自分を見て頬を染めた優香里に好意を持った。
優香里も拓も３０を超えて独身である。
二人の交際は何ら憚る事はない筈だ。
ところが、二人の間にとんでも無いバリアーが存在した。
二人の勤務先の業種は同じ、ライバル会社なのである。
しかも携帯電話を扱うエリート社員同士だった。
