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読書の森

手塚治虫『バンパイヤ』

昭和41(1966)年夏、当時大学二年の私が、グイグイ惹かれてたちょっと危険な手塚漫画、それが『バンパイヤ』です。
当時人気の少年雑誌、『少年サンデー』に連載されてました。

昔、人里離れた山中にひっそりと暮らす村人達、夜泣き一族という、一見素朴で穏やかに見える彼らが実はユニーク過ぎる特性を持っていた。

都会化が進み、この辺りに町から測量技師が来ると言う。
便利で住みやすい地域に整備する為だった。
一族は己らの秘密を絶対明かさぬ事を誓って村を焼き払い、町へ降りて行った。

そして、、、とある街の深夜。
独り(一匹?)彷徨う異形の狼、襲ってくる野犬をかみ殺して、失踪してしまう。
行き先がなんと学生達が住みそうな粗末なアパートだった。

彼が主人公のトッペイである。例の村から漫画家になる事を目指して虫プロの弟子志願をしている。

その時、狼への変身を目撃してしまった手塚治虫に秘密を打ち明けるのだった。

普段は人の姿をして普通に見える一族(バンパイヤ)だが、あるキッカケによって獣に変身してしまうのだ。
キッカケも変身後の姿もそれぞれ違う。
例えばトッペイの場合は丸いモノ(月などの)を見ると凶暴な狼に変身してしまう。

他のバンパイヤの仲間でクマやニシキヘビに変身するものもいるそうだ。

変身後の姿は恐ろしげで獣そのものの獰猛さを見せる彼らは、実は恩義に厚く情けを知る生き物もいる。
が、一たび相手に敵対意識を持つと「ケモノ」に帰ってしまうのだ。

バンパイヤを利用して己が世に君臨する事を目論んだのが、間久部緑郎である。
彼は貧しい生まれだったが、学術優秀で能力のある若者だった。大金持ちの家の書生として真面目に働いているようだが、実は凄い悪事を企んでいた、、、。

詐欺、強盗、誘拐、殺人、良心のカケラも見せずに次々と犯していく彼。
そしてその実行犯がバンパイヤ!なのであった。

虫プロ製作でTV映画化した時、主役トッペイを演じたのが、あの水谷豊さん(趣里のお父さん)です❣️
800名の応募者の中から選ばれたという事は、相当な演技力の持ち主だったのでしょう。

水谷豊さんは
「人間のこと社会のこと、をより的確に表現するために、非日常が効果的に作り上げられている」と言った意味の後書きを書いてます。
「日常を表現する為に非日常を創る」という事です。

この場合、人の心に潜む、敵意や悪意、危険な野心を非日常的な『バンパイヤ』という形で描く事で、そうでない「善意」や「平和な日常」の大切さを訴える、と解したのですね。

しかし、、。
今、まさに『バンパイヤ』的になってしまった世の中。
改めてこの漫画を読むとかなり怖くなりました。


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