忙中閑話

四季の移ろい、花鳥風月を楽しみつつ
趣味はミニチュア木工、電子工作、旅行など

虫愛づる姥姫(うばひめ)

2013-08-29 | 日記
 もう40数年も前の話だが,高校の古典の授業で習った「堤中納言物語」
のなかで「虫愛づる姫君」というのが出てきた。

古典と言えば、内容自体が面白くないうえに更に追い討ちをかけるように
高齢の男性教師の授業がまるでお経のように一本調子だったので、授業時間
の殆どを眠って過ごした。

今から考えれば勿体無いことをしたものだと思うが、育ち盛りの高校生
時代、朝は眠いし、昼食後の午後一番の授業での古典は最悪だった。

当然、何を習ったかは殆ど覚えていない。だが、この「虫愛づる姫君」は
たまたまその時起きていたのか記憶がある。
身なりもかまわず虫の飼育に没頭する姫君の話である。


昨日、家人が言うには同居している義母(家人の母親)がまた今年も
スズムシを買ってきて自分の枕元で飼っているという。
この話を聞いて真っ先にこの「虫愛づる姫君」を思い出した。
義母は昭和ひと桁生まれでかなり進んだ"後期高齢者"。なので「姫君」
といっても「姥姫」である。

ではなぜ「姥姫」かというと・・・。

 義母は、未亡人になって30数年になるが、娘である家人に家事一切を
押し付けて手伝ったことがない。家人が三人の幼児、乳児の育児に追われて
いた時分でも、助けを出すことはなくまるで他人事のように趣味である野草
収集や絵画教室通いに明け暮れた。これは我が息子たちが巣立った今も続い
ている。
数年前に高齢と車の老朽化のため運転免許を返上したが、それまでは毎日
のように勝手気ままに県内を走り回っていた。「今日は300km走ってきた」
といって自慢する日もあった。

御付の者はいないが、傍からみるとまるで「姫様」気分に見える。

普通の母娘であれば、夕飯の支度で肩を並べて台所に立っている姿を思い
浮かべるものだがそれが全くないのだから驚きである。
家人がエアコンなしの暑い台所で汗まみれになって作った料理を至極当然の
態で冷房をギンギンに効かせた自分の部屋に運び込んで食べている。

几帳面でむしろ異常ともいえるほどの綺麗好きの娘。おまけに大の虫嫌い。
一方はズボラで自己中の母親。これが本当に母娘なのだろうかと疑う。


食事の支度が少し遅れると催促するように台所の前を行ったり来たり
するという。「姫」と言ったが日頃の生活ぶりはまるで「オヤジ」そのもの。

そして朝から終日過ごした絵画教室から夕方に帰って来るやいなや台所を
覘いて「今日は暑かった。(ご飯は?)」というあたりはまるで遊び疲れた
小学生の餓鬼ボウズのようでもある。

それにしても、枕元で一晩中スズムシが鳴く中で寝るという神経は理解しが
たい。しかも部屋は匂うはずだが・・・。今日も廊下までスズムシの声が
聞こえる。

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