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チラシの裏

魔王子シリーズ

2013年06月02日 | SF
ジャック・ヴァンスの、一番まとまって翻訳されている作品ならば、
この魔王子シリーズ全5巻じゃないでしょうか。







1巻の「復讐の序章」(1964年)から最終巻「夢幻の書」(1981年)が出た17年の間に、
シリーズの設定もヴァンスの中にある動機も変わっていったようです。
だいたい、主人公であるカース・ガーセン(いかにもパルプSFのキャラ名ですね)の星の住民が、
5人の魔王子に虐殺された理由が明らかにされていないのはとっても不思議。
そのうちどこかの巻で書くつもりが、そんなことはどうでもよくなって、
ヴァンスは敵である魔王子に肩入れするようになったのではないでしょうか。

5人の魔王子たちの変態、中二病ぶりは呆然とするようなもので(とくに後半の3人)、
宇宙を危機に陥れるようなキケンなものではなく、
主人公がほとんど無抵抗の魔王子を追い詰めるさまはどっちが「悪」か分からなくなります。

5巻に登場する最後の魔王子、ハワード・アラン・トリーソングなんて、
まるっきり中二病です、それも重症の。
福山潤に声をあてて欲しいくらい。

ちなみに4巻「闇に待つ顔」の解説では、
この巻に登場する魔王子レンズ・ラルクは大平透が声をあてるとぴったり、と書かれてまっせ。

でも、個人的には2巻「殺戮機械」のココル・ヘックスがお気に入りです。
セルヴァンティス大学で電話による「恐怖の理論と実際」という講義をするようなインテリで、
殺戮大好きエイリアンなのですが、
間抜けっぽいミスでガーセンに正体を見抜かれてしまいます。ばあっ!

表紙はすべて萩尾望都です。カース・ガーセンがちょっと若すぎるかな? 
ハヤカワSF文庫では全巻品切れです。再版かからないかな。
うちの本棚に魔王子シリーズが2セットあるのは、
むかし愚妹が萩尾望都目当てで買ったからです。
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