粗忽な夕べの想い

落語の演目(粗忽長屋)とモーツアルトの歌曲(夕べの想い)を合成しただけで深い意味はありません

朝日新聞「吉田調書暴露」への反発

2014-06-11 22:14:30 | 反原発反日メディア

朝日新聞が5月20日に報じたいわゆる吉田調書の暴露記事に最近批判が高まっている。。吉田調書は、政府事故調査委員会が東京電力福島第一原発所長吉田昌郎氏に事故の詳細を聴取した調書で、一般非公開のものであった。しかし、朝日がこの調書を「極秘裏」に入手して、そこでの問題部分を暴露するキャンペーンを続けている。

これに対してノンフィクション作家の門田隆将氏が「私はこの報じ方は本当に恐ろしい、と思う。一定の目的をもって、事実を『逆』に報じるからである。」と彼のブログで朝日新聞を批判している。門田氏は吉田所長を始め事故の関係者を実名取材し克明に書き留めた著書を出しておりこの方面の専門家である。

朝日新聞は5月20日付けで「福島第一の原発所員、命令違反し撤退 吉田調書で判明」の見出しでスクープを掲載した。内容は、東日本大震災4日後の11年3月15日朝、第一原発にいた所員の9割にあたる約650人が吉田氏の待機命令に違反し、10キロ南の福島第二原発へ撤退していた。」というものだった。

前日から2号機の異常が報告され、格納器の破壊が懸念された。免震重要棟に待機していた720人に及ぶ東電社員が早期避難することが検討されていた。そして2号機で異常な爆発音を確認しその後白煙発生。(30分後)午前6時42分、吉田氏は前夜に想定した「第二原発への撤退」ではなく、「高線量の場所から一時退避し、すぐに現場に戻れる第一原発構内での待機」を社内のテレビ会議で命令した。「構内の線量の低いエリアで退避すること。その後異常でないことを確認できたら戻ってきてもらう」、ということだった。

しかし結果的には、所員の誰かが免震重要棟の前に用意されていたバスの運転手に「第二原発に行け」と指示し、午前7時ごろに出発したという。自家用車で移動した所員もいた、ということになった。(以上、太字は朝日の記事)

朝日は「高線量の場所から一時退避し、すぐに現場に戻れる第一原発構内で待機」し、「その後異常でないことを確認できたら戻ってきてもらう」ことが吉田所長の「命令」であり、これに背いて福島第二にに避難したのは重大な命令違反だと見なしている。しかし、門田氏の説明によると必ずしもそんな単純ではないという。

門田氏は朝日が記事の根拠にしている吉田調書の核心部分を引用している。

「本当は私、2Fに行けと言っていないんですよ。ここがまた伝言ゲームのあれのところで、行くとしたら2Fかという話をやっていて、退避をして、車を用意してという話をしたら、伝言した人間は、運転手に、福島第二に行けという指示をしたんです。(中略)

いま、2号機爆発があって、2号機が一番危ないわけですね。放射能というか、放射線量。免震重要棟はその近くですから、これから外れて、南側でも北側でも、線量が落ち着いているところで一回退避してくれとうつもりで言ったんですが、確かに考えてみれば、みんな全面マスクしているわけです。

それで何時間も退避していて、死んでしまうよねとなって、よく考えれば2Fに行った方がはるかに正しいと思ったわけです。いずれにしても2Fに行って、面を外してあれしたんだと思うんです。マスク外して」

これを読むと門田氏が指摘するように、吉田所長は「2F」、すなわち福島第二に「行ってはいけない」とは全く言っていない。むしろ、その方がよかった、と述べている、のだ。したがって「(第一原発)構内の線量の低いエリアで退避」が本当に「命令」であったのかは疑わしい。

これは自分の憶測の域を出ないが、「構内待機」はあくまでも「建前」であって、本音は第二原発退避を誘導したかったのではないか。すでに避難する30分前に2号機で深刻な爆発音を出している以上、構内に留まるような選択肢は考えられない。ただ、政府からは東電社員の一斉避難は拒絶されている。言葉は悪いが吉田所長は対外的に「面従腹背」の態度を取ったと思われる。

それはともかく、吉田所長の本音は構内待機の命令などあの状況では考えられない。それを朝日があたかも命令違反と決めつけるのはどうも意図的な印象を受ける。門田氏が(朝日の)記事は「所内の別の場所に退避」を命じた吉田所長の意向に反して「逃げたんだ」と読者を誘導し、印象づけようとする目的のものなのである、としているのも頷ける。

門田氏は最初朝日のこの報道に接して、「ああ、またか」と思ったという。「ああ、またか」というのは、ほかでもない。ある「一定の目的」のために、事実を捻じ曲げて報道する、かの「従軍慰安婦報道」とまったく同じことがまたおこなわれている、という意味である。私は帰国後、当該の記事を目の当たりにして正直、溜息しか出てこないでいる。

ところで門田氏はこのブログとほぼ同じことを週刊ポスト今週号にも寄稿して朝日新聞の過去からの「捏造体質」を批判している。同様の記事はやはり今週号の写真週刊誌「フラッシュ」でも出ている。週刊ポスト「朝日の吉田調書報道『なぜここまで日本人貶めるのか』」、フラッシュ「『東電フクシマ所員9割逃亡』報道朝日新聞1面スクープのウソ!!」

特に週刊ポストでは朝日の「虚報」が海外でさらに歪められて伝えられているとしている。

〈2011年、命令にも関わらず、パニックに陥った作業員たちは福島原発から逃げ去っていた〉(米・ニューヨークタイムズ)〈福島原発の作業員は危機のさなかに逃げ去った〉(英・BBC)〈福島原発事故は“日本版 セウォル号”だった! “職員90%が無断脱出…初期対応できず”〉(韓国・エコノミックレビュー)〈日本版セウォル号…福島事故時に職員ら命令無視して原発から脱出〉(韓国・国民日報)……

原発事故と韓国旅客船沈没事故を関連づけて東電社員を中傷するなど全く酷い話である。これは朝日が慰安婦問題で捏造記事を出して、結果的に世界に拡散したころを想起せずにはいられない。今回、朝日新聞はこの二つの週刊誌の報道に直ぐさま厳重抗議をしている(週刊ポストフラッシュ)。どうも朝日の「捏造」批判に敏感に反応している感じだ。慰安婦問題では沈黙しているが、これまでの鬱憤を晴らすような反応だ。

この際、朝日と両週刊誌で徹底的にこの問題で激論を交わして欲しいと思う、どうにも自分には今回も朝日の意図的な決めつけに疑念を抱かずにはいられない。ただ残念なのはすでに吉田所長自身が故人であることだ。吉田所長は今回の騒ぎを草葉の陰でどう見ているだろうか。



2 コメント

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Unknown ()
2014-06-12 15:14:29
うるしねまきさん

この「吉田調書」については、明るみになってすぐにJAM THE WORLDで、スクープした記者が出ており、http://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld/cut/140520.html 門田氏のノンフィクションには書かれていない重大なことを発信すべきと思ったというようなことを言っていました。語り口は穏やかで、吉田氏を死人に口なし的に扱わなさそうに、私には感じだったのですが、その後の切り口はいろんな意見の拡散を見ると、大変なことになっていますね。 思うに、何か一人歩きしていることもあるかもしれません。

まあそんなかばう義理もないんですけどね。でもどんどん話が大きくなっている感があります。もう一度この記者の真意を知りたいとこですが。

青山さんあたりが「アンカー」で何か言ってくれないかと思うばかりです。
もうご存じかもしれませんが、吉田氏と心が通じていたと思われる「アンカー」文字起こしこちら
http://kukkuri.jpn.org/boyakikukkuri2/log/eid1409.html





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強気の朝日 (うるしねまき)
2014-06-12 19:30:27
Kさん、コメントありがとうございます。
今回、朝日は二つの週刊誌による批判記事に対して非常に強硬な印象を受けます。「名誉と信頼を著しく毀損」「訂正と謝罪の記事の掲載を求める」などとありますね。よほど、「誤報」「虚報」と指弾されたことに立腹しているのか、あるいは吉田調書に関して更なる確信的な証拠をもっているのか。
青山繁晴氏のテレビ出演での発言を書き起したものを読みました。改めて吉田所長が現場の社員や作業員から慕われているかがわかります。だから、朝日記事のように現場の人が吉田所長に敢えて逆い、背反行動をとるとは考えられません。
ただ、朝日中心に未だ東電叩きが続いている以上、東電社員たちの口から真相が語られるのはまだ先のような気がします。
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