この教授の発言などもはや信じる人も少なくなってきたと思うが、最近の武田邦彦教授(中部大学)のブログの内容には驚かされた。昨日の上杉氏の捏造などそれに比べたらかわいいとさえ感じる。題して「あと3年・・・日本に住めなくなる日」とある。三重県在住の男性が、昨年9月から毎日今年3月まで自分の自宅、職場の放射線量を調べてみたところ、線量が増えていることがわかった。その数値はでていないが、そこから教授独自の推測が始まる。教授の概要は大方下記の通りだ。
1、福島の原発事故以来、今も日本全国に汚染は拡散している。(福島の線量は減っているが、その分が拡散している。)
2、三重県では1日0.004マイクロシーベルトの割合で増えており、3年4ヶ月後には年間被曝が内部被曝を加味すると5ミリシーベルトをこえる。
3、1年5ミリというと成人男子でも白血病になったら「労災」が適応される線量である。つまり、日本国は「1年5ミリの被曝を受けたら、白血病になる」と認定してきた。
4、三重県はほぼ日本の平均的な線量率だから、ほぼ日本に住めなくなる。
以上だが、科学的知識に乏しい自分でも首を傾げてしまう。
1の放射性物質の拡散だが、記事には書いていないが添付の教授の音声では福島から拡散していると言及している。それも福島の放射線量が減ってその分が他に移動していると考えている。しかしこれも常識的に考えておかしい。おそらく放射性物質が雨で流されて海に運ばれて福島でも線量が減っていることが考えられる。しかしそれが海から三重県にまで拡散して放射線量を上げているとはとても思えない。また放射性物質のセシウムは134と137が比率的には半々だが半減期が2年の134は福島でも自然に減っていくことは確かだ。
三重県で線量が増えたのは詳しいことはわからないが、福島の拡散とは関係なく、地域の特別で一時的な現象によるのではないか。首都圏で線量が毎日増えているということは、聞いたことはない。また今後も三重で増えていく理由にもならない。
2の年間5ミリシーベルトになる計算が素人の自分にはどうにもよくわからない。しかもこれも毎日0.004マイクロシーベルト増えていくことを前提にしている。百歩譲って毎日増えるとしよう。教授の数式だが比例して線量が増えることになる。したがって3年4ヶ月後に年間線量が5ミリシーベルト(内部被曝を0.4ミリを加味)(音声で言及)になるとしたら、その6ヶ月前の1日の線量を365倍すれば本当だったら4.6ミリシーベルト(内部被曝0.4を引く)になる計算だ。
そこで6ヶ月前だとすると今から2年10ヶ月後で日数は
365日×2年+300日=1030日だ。
したがって1日あたり0.004マイクロシーベルト増えるとすると2年10ヶ月後には
0.004×1030日=4.12マイクロシーベルトだ。
1日4.12マイクロシーベルト増えることになる。現在の1日の線量は
0.10×24時間=2.4マイクロシーベルトだ。
これに増えた線量をプラスして
2.4+4.12=6.52マイクロシーベルトだ。
したがってこれを1年分で掛けてみる。
6.52×365日=2379.8マイクロシーベルトだ。
つまり2.3798ミリシーベルトにしかならず内部被曝を引いた4.6ミリシーベルトには遠く及ばない。これは自分の勝手な計算だから武田教授には別の計算方法があるのかも知れないので留保するが。
3の5ミリ以上で成人男子が労災の適応になるというが、これも専門家でないのでよくわからない。ただ「1年5ミリの被曝を受けたら、白血病になると認定した」というのは、どうみても教授の勝手な思い込みであり、論理の飛躍である。世界では年間5ミリ以上被曝する地域は決して珍しくない。しかし、そこに住む人が大半はおろか、一部でも白血病になったという話は聞いたことはない。しかし「白血病になる」と断定するのは医学者でもない武田教授の完全な脅しでしかないと考える。
4に関しては、3までの理由で、これ以上余計な説明を加えることもないだろう。今後放射線が拡散して年間5ミリシーベルトを超えることも考えらない。日本全国減ることはあっても増えることはない。また敢えて内部被曝についていえば、昨年の朝日新聞と京都大学の検査では、福島県で一番食事で内部被曝を受けた人は1日17ベクレルで、年間の被曝は0.1ミリシーベルトに過ぎないという。それも福島で家庭菜園の野菜も食べてこの数字だから、三重県で0.4ミリの内部被曝という計算も誇張が過ぎると思う。
以上武田教授のブログを「検証」して、自分は「煽りの極地」とした。教授は記事中「脅しではない」と書いているが明らかに脅しにしか見えない。それもまるで断定的に言い切っているのが困ったものだ。本人は書いていることの重大性を認識しているのだろうか。もちろんこの武田批判に異議がある人もいるかもしれない。反論も拒まないつもりだ。
追記1:どうも自分は大きな計算違いをしてしまったようだ。増加「0.0004マイクロシーベルト/日」を一桁間違って「0.004」として計算してしまった。したがって0.0004×1030=0.412マイクロシーベルト。そしてここで問題だが、これは「毎時」の数字なのだろう。そしてこれに0.10をたして0.512マイクロシーベルト/時となる。0.512×24×365=4485.12マイクロシーベルトとなり教授の計算とつじつまがあう。「毎時の線量が1日0.0004マイクロシーベルト増える」というのが正確のようだ。自分自身二重の計算間違いをしたことになる。訂正してお詫びします。
追記2:一度追記1で自分自身の計算ミスを表明したが、実は武田教授も表記ミスをしていたことがわかった。武田教授のブログを紹介したある方のブログを見てみたら、ちゃんと「0.004マイクロシーベルト/日」の数値が引用されていた。つまり武田教授は最初のブログで「0.004」と表記していたのに、誤りに気がついて「0.0004」とこっそりブログを訂正したことになる。自分も早合点してそれに気付かず、訂正されたブログを再度見て、最初から教授が「0.0004」と表記したものと勘違いしてしてしまった。その結果自分自身「追記」という書き込みに及んだのが真相だ。もちろん自分の早合点は責められるとは思うが、「こっそり自分のブロブの数値を書き換える教授のやり方」は、影響力のある学者としてその品位を疑わざるを得ない。
追記3:なんとまた武田教授、この問題ブログの表記を変更してきた。「変化」以下の部分だ。
a(変化)が0.0004((マイクロシーベルト/時)/日)です。
新たに「/時)」が加わったわけだ。この表記が一番誤解がなく正確である。始めからこうした表記であれば、自分自身ブログの本文に長々と余計な計算式を表示することもなかった。もちろん教授の一筆もなくこっそり書き換えられている。講演活動やマスコミ出演などご多忙な日々を送っていて、ブログのチェックもままならないようだ。少し滝にでもうたれて頭を冷やされたほうがよいだろう。新生武田氏はもしかして「飛散放射能安全、原発再稼働賛成」宣言などしたりして…。