土塊も襤褸も空へ昇り行く:北村虻曳

随想・定型短詩(短歌・俳句・川柳)・写真
2013/11/11開設

プログラムとの浅い付き合い

2018-04-09 | 随想
(以下の話、純文系の人には面倒くさいでしょう。工科系の人は最後のところだけでも分かれば教えてください。)

何事であれ勉強しない人間であるが、ある半年間、基本であるC++というプログラムの授業に関わった。若手の得意の先生の補助としてである。それなりに面白かったけど、すぐすっぱり忘れた。プログラムをやる人の思考傾向が少し分かった気がする。

あるときプログラムが研究上も必要となった。eとかπとかの3段ほどの冪を含む複雑な式で表される数の大小の比較である。これは手でやれる感じではないが、コンピュータでは一瞬で答えが出せたと思う。

次に必要となったのは、YO氏の問題である。最小公倍数を最大公約数を用いて表すこと(あるいはその逆)が可能なのだ。問題はこの初等的な問題の可換環への一般化である。定式化はできた。これはn個の記号の列を要素とする2つの集合A、Bについて、A⊂Bであるかというメンバーシップ問題に帰着するのである。n<6までは手計算で解けた。6以上は場合分けが大変なのだ。

だが友人の腕利きTA氏がMathematicaというソフトでプログラムを組み、パソコンを何時間か走らせてn=6の場合を解いた。僕はそれを解読して、見よう見まねでMapleというソフトのプログラムを組んだ。それを空いているパソコンで実行させた。ところがこれが</font>うんともすんとも言わない。膨大なメンバーシップを虱潰しに調べているのだからと、辛抱をして放置していると、なんと3ヶ月後に「OK」と出た。A⊂Bが示されたのである。はじめてのプログラムである、やはり嬉しかった。Mapleというソフトの名誉のために言っておくと、プログラマーの腕とパソコンの遅さがTA氏との差を生んだのであろう。

さらにMO氏の代数的拡張などを加えて、いろんな分野の数人で論文にまとめた。だが多くの雑誌に蹴られ続けた。きれいではあるが、我々自身にも何につながる問題かわからない代物だからだ。それらの編集長からは、「あなたが投稿してくれたから嬉しかったが、こんな問題と分かって失望した」「私は通したいが、レフリーの意見は尊重しなくては」などの意見をもらった。

2012年に完全退職して暇ができたのでn>6の場合に再び挑戦した。そしてほどなく計算機無しでまったく一般的に、つまり任意の自然数nに対して、解くことに成功した。計算嫌いの僕が延々と計算している。この年月をかけた計算のアイデアは我ながら巧妙で
今のところ計算機にはできないであろう。数学ではまだ人工知能に負ける時代ではない気がする。

さてこの一般化ができたからといっても、受けてくれる雑誌はなかなか無い。だが米人DA氏が現れて彼の分野「乗法的イデアル論」に見事に位置づけてくれた。彼が大量に付け加えてくれた部分は、当時も論旨を追うのにアップアップで、今となってはまったく理解困難であるが。

その後も自分のパートにミスが見つかり、自分は一切降りるかなど、苦労が続くのであるが、2つの論文に分けてなんとか完成にこぎつけた。2005年頃から初めて完成が2016年である。この間、2010年には命に関わる入院をしている。ながらえたのはとてもラッキーであった。下のリンクの末尾に悲観的に書いているが、目の黒いうちに出版されたのである。

最後はごりごりの手計算であったが、DA氏の専門分野からの助けと共に、プログラムが途中まで解決してくれなかったら完成させるまでの気力が持たなかっただろうと思う。

これ以後プログラムには手を出していない。でも大学生の頃からの問題が一つある。
風の中を流れる柔らかい紙の運動をシミュレーションするプログラムである。細かい剛体の断片に分けて弾力性のあるヒンジ(蝶番)でつなぐのである。重力で滑るときにその滑る方向と面の成す角度に応じて風圧を受けるようにするのだ。2次元内でいいからなめらかに動く様子を見てみたい。この運動の面白さを指摘したのはアマチュア数学雑誌であるが、雑誌名も著者も覚えていない。今ならCADかCGの勉強で済むのだろうが、もう根気も財力もない。そんな物がすでにできておれば教えてください。

関係記事:研究近況

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1 コメント

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Unknown (虻)
2018-04-10 23:30:11
上の文中に「</font>」が現れて取り除けない。HTMLの最低限は知っているのだが。プログラムのこと書いているのに。

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