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日本の、東京の居酒屋巡りをお届けしてきたブログ・・
信州への転居に伴い、内容も一新してリニューアル!!

390分 次への経験

2010年06月30日 | Weblog
日本代表の2010年ワールドカップが終わった。チーム一丸となり、格上パラグアイに挑んだが、一歩及ばずPK戦で敗れた。実に惜しい、文字通り惜敗だった。
大会前の悪評判を覆す躍進を見せた背景には様々な理由があろう。しかし岡田監督のぶれなかった指示。そして自主性を持ち、自ら局面を切り開いた各選手の力が、このチームを変え、ここまで来たのだろう。決してスパースターがぐいぐい引っ張ってきたわけでもなく、個人の力を集めてひとつにしたことが勝因である。
試合終了後、多くの選手が涙でピッチを歩き、互いの健闘をたたえあうシーンがあった。中でも最後にPKを外してしまった駒野の肩を抱き、一緒に涙を浮かべる松井の姿が印象的だ。予選リーグ、そしてこの試合、駒野がどれだけ走り、体を張ってゴールを守ってきたか、松井だけでなく、みんながわかっている。駒野を戦犯にするのはやめよう。責めるのはやめよう。あれはミスではなく、必然の結果だったのだろうから。
目の前にぶらさがっていたベスト8。しかしそれはやはり大きな壁であり、遠いゴールだった。パラグアイは以前の大会でフランスに同じようにPKで敗れている。その悔しさがあったからこそ、今回は日本に勝てたのだろう。サッカーとはそういうもの。ひとつひとつ経験を積み、強くなっていくのだ。そう甘いものじゃあない。そういう意味で言えば、今回のPK負けと予選リーグでの活躍は未来に繋がる390分だったのだ。この経験と悔しさが次の世代の夢を開く。それ以外に成長の術はあり得ないのだ。だから僕自身、悔しさよりすがすがしさが心に一杯である。これでいいのだ。
さあワールドカップはここからが本番。やはり強い8チームが残った。現時点での世界の8強がぶつかるガチンコ勝負を見逃してはいけない。ワールドカップは終わってないんですよ、みなさん!燃え尽きるのはまだ早い!!多くの悔しい経験を乗り越えたチーム達の戦いを目撃しましょう!
さて最後にワールドカップ関連で苦言を2つ。まず1つ。どの試合を見ても海外の選手の刺青がすごい。お洒落なタトゥーというレベルを超えている選手が多いと思いません?日本であそこまでやるのは暴力団関係の方達くらいでしょう。試合入場の際にこどもと手を繋いで選手は入場します。あれは子供の前でなら大人として、スポーツマンとして恥ずべき行為はしない、という意味で行われているのです。大きな矛盾を感じます。この思いが通じると良いのですが。
それと2つめ。パラグアイ戦を終えた岡田監督や中澤、長谷部などに対し、某局のレポーターが「このPK戦に負けた日本に足りないものはなんでしょう?」という質問が同じようにされていた。「今はそんなこと考えれない」と応えた岡田監督。ごもっとも、その通りである。まじめに受け答えをした中澤や長谷部。あんたらは偉い!人ができている!
こういうナンセンスな質問を、こういうタイミングに聞いてしまうレポーターやマスコミの成熟度が今の日本に足りないのですよ!放送の最後の最後に若干むかつきました。
まあ何はともあれ次のワールドカップ。4年後に向けて「準備をしましょう!」
お疲れ様でした、岡田監督と日本代表。

12年の成長の証を!!

2010年06月25日 | Weblog
さぁ日本代表の決勝トーナメント進出が決まったところで、ようやくW杯に関して語ろう。
アジアカップでの惨敗にテストマッチ4連敗で完膚なきまでに叩きのめされ、ファンの期待を裏切った岡田ジャパン。しかしこの予選リーグの戦いは今までとは別次元だ。
ある選手の呼びかけで初戦の国家斉唱の際、全員で肩を組み君が代を歌ったところから、このチームの再生は始まったのだろう。本田の先制点に喚起するベンチメンバーの姿。勝利後のインタビューにわかりやすい笑顔は無く、こんなところで終わらないという決意が見えた。また岡田監督が「目標はベスト4」と語ったことがやれ不可能だ、ばかばかしいという批判の声をうんだものの、選手の口からは「ベスト4」の言葉が自然と出てくる。彼らには彼らにしかわからない自信があったのかもしれない。
時に予選リーグを通して急激にチーム力を上げていくチームが稀にある。02年の韓国などがその代表格かもしれない。そして今回の日本代表もそんな気がしてならない。
世界屈指の競合オランダに堂々と渡り合った最小失点での1敗も、未来の日本サッカーに大きな期待を感じさせる試合だったし、相手の出方に自分たちの戦術を合わせこみ、互角以上のサッカーで勝利を収めたデンマーク戦。いずれも違う表情を見せてくれた。実に頼もしい。デンマーク戦などいくら攻められても恐怖感を感じなかったし、決勝トーナメント1回戦のパラグアイ相手にも、きっといい試合を見せてくれると思う。
次の試合あっさり負けるかも知れない。しかし既に日本代表は大きな進化をそのサッカー史に刻んだ。自国開催以外の大会でのベスト16。この先は未知の領域だ。失うものは何もない。そんな日本代表の姿を誰が予想しただろう。
そんな代表の中で1人輝かない選手がいる。そう、僕も以前大きく語った中村俊輔だ。体調不良で試合を避け、そんな中で俊輔のいない代表がいい試合を見せた。俊輔がいないことがその善戦の理由ではないことはわかっているが、途中出場したオランダ戦でもしっくりこなかったし、最大の武器であるフリーキックにしても、本田と遠藤がいれば不要との見方もある。しかし俊輔は腐っていない。その姿がデンマーク戦後のピッチ上で見えた。全ての選手に満面の笑みで声をかけ抱き合う姿は、チームを裏から支え、チームに今できることで貢献する姿勢を表している。これを見て安心したと共に、この次への期待が沸いた。
魂のこもったプレーでゴールを守る守護神川島。トゥーリオと中澤のセンターバックは安定感抜群で長身デンマークにも高さ負けしない。駒野も堅実なプレーと鋭いオーバーラップを展開。もっとも評価を上げた長友は世界一流の各国攻撃陣を押さえ込む。アンカーの位置で献身的なプレーを繰り返す阿部は守りのMVPに近い。遠藤も試合最後まで走ることを辞めず豊富な運動量を見せる。フランスでプレーする松井のドリブルやフェイントには色気というか、素敵なアクセントが。彼にはシャンパンサッカーの言葉が似合う。Jリーグ一の問題児だった大久保もいまや大人のプレーを見せる。献身的にディフェンスをし、すきあらば前を伺う姿勢が素晴らしい。中盤でしっかりボールをキープし、前線のバランスを取る長谷部のキャプテンシーは見事。ビックマウス本田は心臓に毛でも生えているのだろうか?初戦でのゴール。ゴール前でのあの落ち着きぶりはすごい。中田英俊の次の世代に「出てきたな!こんな男が!」という感じだ。
思えば初めてのフランスW杯初戦、1-0で強豪国であり優勝経験国であるアルゼンチンに負けた日本。あの時、世界の一流相手に1-0なんだ?と漠然と見ていたのを思い出すが、今回の代表の試合を見ていると、なんとなくそこからの成長が天文学的に大きいような気がする。同じ1-0での敗退でも、その内容と可能性は今回の方が計り知れない。言葉を変えてみると、地に足をしっかりつけてサッカーをしているのだ。90分間、何が行われていたかわからないまま1-0で負けたあの時とは大きく違う。そんな風に僕は感じた。
さあいよいよ決勝トーナメントだ。ここからが本当のワールドカップ。負けたら終わりのガチンコ勝負が始まる。ここからどれだけ自分たちのサッカーができるかが、02年日韓大会の時からの成長の証明である。さあやってもらおうではありませんか!

SAKEカントリーツーリズム

2010年06月23日 | Weblog
ある平日、仕事で信州新町を通過中、僕の目に「十九」と書かれた旗が目に入った。
ここ信州新町はジンギスカン街道のある町として有名で、1軒酒蔵もあったはず。慌てて車をUターンさせるとそこには尾澤酒造場の看板が。迷わず僕は店内へ。
店内は真新しい造りと古きよき建築がミックスされた綺麗でモダンなたたずまい。壁一面に醸した酒のボトルが並び、価格も書かれていて実にわかりやすい。色々眺めていると隣の建物から女性が1人やってきた。どうやら隣が酒を仕込んだりする工場のようで、その方は従業員の様子。いらっしゃいませ、と明るい声をかけてくれたのでいくつか質問したり話しを聞いたりで、せっかくなので1本いただくことにした。
「十九」は僕のホーム風林火山でよく飲む銘柄。すっきりした味わいの中に、僕の好きな重みというか日本酒らしさもある酒の記憶が。僕は「十九」しか知らなかったが、メインの銘柄は「美鈴錦」というらしい。地元ではこの名前で通っているそうだ。外にも赤い瓶が珍しい「M」という純米吟醸にも惹かれたが、僕は「十九」の普通酒の無濾過生を購入。すかさず蔵訪問時の恒例行事ということで、僕の愛蔵書「酒蔵で巡る信州」を提示し、尾澤酒造さんのページにハンコを捺印してもらう。(この「酒蔵で巡る信州」という本は長野県が日本に誇るべき素晴らしい書籍である)
実はこの取り組み、どの蔵に行ってもおもしろがってくれるのだ。「こんな人初めてだ」とほとんどの蔵で言われる。僕はお遍路さん日本酒バージョンの草分け的な存在のである。
するとその女性が「こんな素敵な取り組みをしているなら、絶対これやったほうがいいですよ!」と長野県酒造組合が主催するイベント「SAKEカントリーツーリズム」のスタンプシートをパソコンから出力してくれた 。これは長野県内の各酒蔵を訪問し、1,000円以上の買い物をすると、その蔵のスタンプを押してくれるイベントで、スタンプを集めた数に応じ、素敵なプレゼントがもらえるイベントなのだ。以前から知ってはいたが、僕は僕でその以前から本を持って蔵を回り、スタンプを押してもらう取り組みを勝手に開始していたので、1度行った蔵にまた行くのも面倒なので参加はしていなかったが、どうやらイベントの期限もないとのことで、せっかく蔵の方が薦めてくれて、更に印刷までしてくれたのならと、この日より全蔵制覇を開始することにした。76蔵中、まだ今日現在1蔵だが、仕事で長野県内を自由に走り回れる僕にはぴったりな企画だ。
というわけでこのイベントに参加するきっかけを作ってくれた尾澤酒造さんに感謝。しかも後で知ったのだが、僕を相手してくれた女性その人が、じつはここの杜氏さんだったのだ・・・先に知っていれば・・・残念。しかし全蔵制覇の暁には、感謝の意を表して再度ここを訪れることを心に誓い、僕の挑戦は静かに始まるのであった。

ある日の晩酌

2010年06月09日 | Weblog
ある日の晩餐。今日は嫁さんが夜不在。フラダンスの発表会を来月に控え、通常以外の練習が増え、今日はその日にあたる。1人で飲みに出かけるチャンスでもあったが今日は日曜日。龍馬伝も見なきゃいけないし、今日は家でのんびり過ごすことに。
嫁さんは夕方早めに夕食を取り、車で練習へ出かけた。さあ僕もそろそろ夕食を、といっても軽く飲みたい気分。冷蔵庫を開けると今日の夕食にと作ってある料理が色々ある。その中からいくつかを皿に盛り、鍋に湯を沸かし、チロリにお酒を入れて軽く燗をつける。
さて今晩のおつまみは・・・安曇野産の冷奴。安曇野産のおかひじきのゴマ和え。嫁さん得意のタコとかぼちゃのマスタードマリネだ。
これに合わせて(合わせたわけではないが)さいたまの銘酒「神亀」をぬる燗でやる。和室から心地よい夕暮れの風と、それにより生まれるふうりんの音が聞こえる。
テレビでは日曜夕方の風物詩であるサザエさんが流れる。たまには1人サザエさんを見ながら晩酌するのも悪くない。しかしこれも幸せな家庭があってこその贅沢。1人が贅沢に感じるもの、日々幸せに安定しているからこそなせる技か。改めて嫁さんに感謝。
テレビの中でも波平さんとマスオさんが燗酒をやっている。今も昔も、心落ち着け精神をオフにするのは酒に限るということか。さあこれで来週1週間も頑張れると思いつつ、空の徳利を持ち台所へ向かう。「もう1本」と声をかける相手がいないことが少し寂しい日曜日でした。

国宝級の居酒屋

2010年06月04日 | Weblog
所要で名古屋へ行った。用事が早く終わったので、せっかくの名古屋ということもあり、久々にあの店を目指そう。
地下鉄を伏見で降りて7番出口をいそいそ上がると、そこには名店「大甚」の暖簾が揺れる。初夏のほどよい熱気で、半そでの上半身は心地よい熱を帯び、喉に渇きを覚える。ビールがいつもより旨い季節が近いことがわかる。
さて時間はまだ6時前。4時から開いている大甚は7分程度の客入りだ。1人と指を1本出し、いつもの大将の指示で時計下の特等席へ通された。いくつかある大甚の特等席の1つに腰を下ろせた幸運に軽く震えつつ小瓶のビールを注文。ラガーの小瓶から注ぐぴかぴかのビールグラスと、大甚と書かれた橋袋に包まれた割り箸。それを黒光りしつつ色落ちもあり角の丸くなった分厚いテーブルに置き、その素晴らしい眺めを確認してぐびり・・・旨い。3年振りの大甚は大きな変化もなく、いつもの空気で満たされている。変化といえば1つ大きな変化が。なぜか外人の店員さんがいる。中国やアジア系ではなく、ワールドカップで日本と戦うオランダ代表にいそうな丸刈りでマッチョの男が、短パンとTシャツにエプロンをつけてきびきび働く。それを笑顔で指示する大将といつもの女将さん。これはこれでいい風景だ。大甚インターナショナル、ここに開幕。
さて席を立ち今日のつまみを物色。数ある定番に加え、季節の味がずらりと並ぶテーブルの前で仁王立ちしてつまみを吟味。しかし芸のない僕は、やはりいつものつまみに手が伸びた。
「さば酢」はたっぷりの針生姜が載せられ、肉厚な身がジューシーでたまらない。ビールはまだ3分の2残るものの、我慢できず大徳利を大将に注文。湯煎された徳利とお猪口は共に大甚の字が入る国宝級の逸品。お猪口が映えるよう、8文目までお酒を注ぎ、香を楽しんでからぐびり・・・樽の香が鼻に突き抜け、そして血液に溶けていくように甘さが広がる。樽酒を飲める幸せを脳みそでかみ締めつつ2杯、3杯。定番の「魚の子」は今日は鯛。甘辛く煮付けられた味わいと、なんとも言えない弾力がお酒に合う。この上なく合うのだ。
ショーケースに並ぶスター級の魚の中から、文句なしで選んだのは「鮎」だ。今年初の鮎の塩焼き。美しく反り、塩で化粧された鮎の頭にかじりつき、背骨を抜きながらはらわたをかじる。ほろ苦い季節の贈り物を飲み込んだ後、箸の先に甘酢をつけて後味で追いかける。身を酢につけて食べるやりかたは僕流ではない。ああ、たまらない・・・鮎って素敵だね。甘く苦く、そしてフレッシュな旨味が、これまたお酒に合う。
野菜の摂取にと「ほうれん草のおひたし」を取り、更に定番の「アサリの味噌和え」を追加。茹でたアサリとワケギに八町味噌ベースの酢味噌をたっぷりかけてもらい、上品に混ぜて口へ豪快に放り込む。関東で言うならヌタのような感じか。あえて値段を書くが、これで220円。すごいでしょ!
酒は2本目に入り、店の空気に浸りながら、遠くで流れるTVの映像を眺めつつ、しばし自分の日常を忘れる。これが1人酒の醍醐味だ。どこかの国の首相が電撃辞任したニュースを眺め、しばし日本人であることも忘れる。最近腹の立つ政治のニュースも忘れる。
次から次にお客さんがやってくる店内はいつしか満席で、2階に客が流れ出す。いよいよ店に活気が溢れ、常連さんと大将や女将さんが笑顔でやり取りする姿が微笑ましく映る。
ここの常連であることって幸せだろうな、と「鳥肝煮」をほお張り、そのねっとり感を味わいながら僕は思う。
2本目の徳利が空こうとする頃、僕の乗る特急しなのの時間が近づくことを思い出す。さてそろそろ至福の時から抜け出して、いつもの自分へ戻ろうか。お会計を済ませ、一言二言大将と会話を交わし、また来ますと言葉を残して店を出た。まだ明るい名古屋のオフィス街に人が溢れる。都会も悪くない、と田舎者になった僕はふと思う。でもこれから2時間揺られる電車の中で、刻一刻と田舎へ近づく幸せに浸るのだろう。
さあまたここに出てこよう。今日食べ損ねた「シャコ刺し」を食べに1年後。それとも「土瓶蒸し」の季節にぶらりと寄ろうか。そんなことを考えながら、僕は名古屋駅へ向かうのであった。