木の下で話しましょう

ソトコトとは、木の下で話しましょう、というアフリカ語源の福祉用語です。

家族愛

2021-12-25 | 社会

今年の春に独居の男性85歳のシフトに入りました

腎臓がんからの末期がんでターミナルケア状態です

現時点では末期がん患者の入院は出来なくなりました

治療の施しようが無い為です

賃貸ワンルームマンションでの独居です

子供らが幼い頃に離婚しましたが離散家族が集合し易くするため相互に便利な位置への転居だったようです

 

利用者さまは男の意地を張り何かと仕切りたがりました

介護する者にすれば指図をされたほうがやりやすい場合も多く助かりました

ポータブルトイレでの排便排尿も時間と共に寝たきりになります

認知機能に大した障害もなく会話は通常でした

高校の同窓会の幹事をしているもコロナ騒動で去年は流れ今年こそはと張り切ってました

シフト中に同窓生の女性から頻繁に電話がありました

彼女はパーキンソン症で苦しんでいるようですが明るく若々しい声です

同窓会の話をしているとあの頃に戻るようだと楽しそうでした

まだ朝鮮半島が日本所有だった時代に船大工だった祖父が朝鮮で会社を経営し現地人を雇用してました

ある日、仕事に不満を抱いた雇用人らに放火されてしまいますが再度の立ち上げを果たしました

しかし、またもや放火されてしまい怒りと失意で帰国されたようです

貸した金は返さない、真面目に働かない、さんざんな目にあわされたと子供の頃にいつも聞かされたようです

 

独立したふたりの子供たちが連日交代で訪問されます

息子さんの配偶者が現役の看護師で介護用品の準備は完璧でした

ポータブルトイレ用の排便排尿処理袋はそのまま廃棄できるようになった吸収力抜群の紙袋です

残念ながら多くを消費することはできませんでしたが・・・

2ケ月ほどしてから脆くなった足の骨を骨折して入院されました

 

更衣介助を終えてから「ありがとうさん、退院したらまたお願いします」と、挨拶されて笑いながら別れました

入院してからコロナ罹患したようだけど完治したとか・・色々と漏れ伝わってきました

事業所のほうから「退院したらお願いするからシフトを空けておいてください」と言われてました

それから2ケ月ばかり経た昼下がりに事業所から連絡がありました

音信不通なのでご家族さまに電話をしたら「入院してすぐに亡くなりました」とのことです

・・・・ということは5月中旬です

 

がん末期だと相当痛かったと思われますが一度も痛いとは言われませんでした

泣き言を言わない、男は黙って耐え忍ぶのが大和魂を重んじた時代の男のあり方でした

だから、たぶん、離婚したときもただ黙って別れたのだと思います

父親に対する子供らの接し方、まなざしには彼の身体を配慮し最善を尽くそうとの気配が感じられました

そして別れた奥さまも彼には内緒で尽くしていたとの情報を娘さまから伺いました。