黒鉄重工

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そこはスチームパンクの世界だった その2 【2015/06/20】

2016-03-02 23:11:32 | 旅行・イベント記
園内の奥に進んでいくんですよ、するとなんだか煙いなぁって感じるんですよ、途中で大量のトラクターを見かけるんですよ、なんだかこの施設ヤバそうって察知するんですよ、最後に広場につくんですよ。



これだもんなぁ。本物だもの、動いているもの。すげぇ(呆れ
ちょっと意味合い違うけどこりゃまさにスチームパンクだ。



というわけで、まずはこいつから。ケース社の蒸気トラクター。
1915年製で出力は65馬力です。今年でちょうど100歳。ケース社はアメリカの農業機械メーカーで、今も世界有数の農機メーカーとして存在しています。
ボイラーを水平配置にしているため、蒸気機関車の車輪を換えただけのような見慣れた形状です。



シリンダー。右側に一箇所だけ取り付けられています。
蒸気圧から機械エネルギーへの変換の仕方は蒸気機関車と・・・というかレシプロ式の蒸気機関はどれも似たようなもので、高圧蒸気をシリンダーに導いてピストンを往復運動に変換させ、その次にクランクを介してはずみ車を動かして回転運動に変換します。最後にギヤとか何とかを介して車輪を動かしトラクターが動くというものです。間違ってたらすまんな。



反対側。蒸気ドームやら汽笛やら、やはり蒸気機関車に似ています。
蒸気ドームは、ボイラーで温めた蒸気を溜める部品で、そこから管を通して各所に蒸気を配分します。このトラクターだと右側に延びているシリンダー、左側の汽笛です。手前中央の管はよく分からんけど減圧用の弁かな?そんなものあるのかしらんけど。
左奥には滑車が取り付けられています。これは上の写真にあるはずみ車と同じシャフトで繋がっていて、ベルトを介して脱穀機など他の機械を動かすのに使っていたんだそうな。トラクター以外に可搬式のエンジンとしても利用できたというわけです。



動輪とか。
動輪はトラクター特有の大直径のものですね。畑のような柔らかい地面の上でも駆動力を伝えるために大きい動輪を採用しています。
あとは、ステアリングのシャフトが見えますね。



運転台。原則立ち乗りっぽいです。
目の前に機械の駆動部があって巻き込まれそうで怖いですな。右側にステアリングホイールは分かります。が、左側にあるのは加減弁ハンドルかな(見きれていてアレですが)?逆転機もあるはずですが分からないです。真ん中のレバーがそうかな?
火室はまあ、普通?気になるのが燃料を溜めておくスペースがないことでして。蒸気機関車よろしく後ろに炭水車でも繋いでいたのかしら?燃えるものだったら何でも燃料になるのが蒸気機関の利点ですから、畑に落ちていた何かを燃やしていたのかも・・・?
水はどっから供給しているのかはよく見てなかったです。ボイラーに水を満たせるだけで追加のタンクなんかは無かったのかも。当時は蒸気機関が稼働しているという衝撃が強すぎて、今みたいに冷静な見聞は出来てませんでした、ええ。日本じゃ稼働する蒸気機関といえば蒸気機関車くらいしか無いんですもの。



次はこいつ。イギリスMann's Patent Steam Cart and Wagon Company(1894~1930)のNo. 881 5トンワゴン。名前こそワゴンですが実態はトラックです。昔はトラックをワゴンと呼んでいたかもしれない。解説ゼロだったんですが、1910年代の車だと思われ。
日本語だとマン・特許蒸気自動車・ワゴン社?「特許」ってなんやねんとなるわけですが、この会社の発明した「単偏心逆転機 single-eccentric reversing gear」という逆転機(ワゴン車の動く向きを切り替える装置)が従来技術よりもコンパクトで画期的だったんだそうな。社名に特許なんて付けるくらいですからよほど凄かったんでしょう(よく理解していない



先ほどのトラクターと比べると外板と屋根が付いていて赤く塗装もされていて全体的におしゃれ。
トラクターと違って燃料入れがあり、燃料は豆炭。豆炭といえばおばあちゃんの家のこたつが前は豆炭を使っていましたね。
蒸気機関を動かすのにもうひとつ大切なのが水なんですが、これも特にタンクらしきものが無かったんでボイラーに入る分だけが積載量だったのかも。蒸気機関の燃費は極悪と言いますが、この大きさのボイラーだと航続距離はどのくらいだったんざんしょか?



運転席。イギリス製なので右ハンドル。
ステアリングホイール(構造上仕方ないとしてなんだかすごい方向に刺さってる)は今の自動車と同じですが、ペダルはないです。
これもステアリングホイールが付いている以外は蒸気機関車と似たようなもので、真ん中から延びているL字状のハンドル、これが逆転機のハンドルでしょう。これでワゴンの進行方向とおそらく自動車でいう変速機のような役割を行っていたはずです。
もうひとつ、超見づらいですが逆転機ハンドルとステアリングホイールの間に電気機関車のノッチのようなレバーがあります。これは加減弁(アクセルのようなもの)だと思います。
直接聞いたわけでも裏を取ったわけでもないんで話半分に聞いといてください。
座席がハンドル類から離れていてなんだか快適性悪そうではある。この後実際に走行しているところに出くわしたんですが、少し前屈みになって運転していたんで、まあそうなるなって感じでした。
ところでブレーキがないな。本当に無いのかただ見落としているだけなのか・・・。



ボイラーの火室です。
位置が悪いし火室扉もすごく小さいです。蒸気機関車のように休む間もなく大量に石炭を投げ込むということはしなくてもよさそうですな。
火室の右上にあるガラスの箱状の部品はボイラーの水面計でしょうね。蒸気機関車でも同じものを見たことあります。



駆動輪への動力の伝達は・・・知らん。チェーンで後輪のシャフトを回していたんだろうな。
なお蒸気トラクターや蒸気運搬車といった車両のことをまとめてトラクションエンジン Traction Engineと呼びます。蒸気自動車(乗用車)は別にスチームビークル Steam Vehicleと呼ぶので、トラクションエンジンは事業車用の名称と考えて問題は無さそうです。



今度は据え置き式の蒸気機関がいくつか。なんだこの充実ぶりwもうほんとに、ボイラーとシリンダーが何台もガショガショ動いていて、ここは蒸気機関の天国かと思ってきます。すごいところです。完全に舐めてましたね。
蒸気機関って場所を取るイメージだったんですけど、ここにあるのは結構小型で一家に一台置けそうですよ。



ハンドサイズのボイラーと垂直置きの蒸気機関2種。蒸気機関はボイラーと機関部がセットになったものを指すのかと思ってたのですが、狭義では機関部だけを指してボイラーは別物なんですね。この蒸気機関&ボイラーセットはExpo 86ことバンクーバー国際交通博覧会で展示されたそうな。
この垂直式ボイラーは「ウッド&コール」という名前が付いていて、これ単に木と石炭という燃料になるものを名前にしただけじゃんっていう。左にある2つの機関に蒸気を供給しています。

中央の機関は、給油用桟橋にいる海軍軍艦に給油するための重油を燃やすためのボイラーに燃焼用空気を送り込むための機関だそうです。これほぼ直訳なんですが、ちょっとよくわからん。給油機のボイラーを動かすための始動機ということかしらん?エンジンの詳細はよく見てなかったのでどういうのかは分からず。
なおこの機関はカナダ海軍エスクイモルト基地内のコルウッド桟橋で使われていたもの。地元で使われていたエンジンというわけです。

右の機関は、ジェームズ島(ここから北東方向に近いところにある島)で撹拌機(ミキシングパドル)の動力として使っていたそうな。
なにを撹拌していたのか明言されていないのですが、この機関および当時のジェームズ島の所有者がカナダ工業社 Canadian Industries Ltd. (C.I.L.)という化学工業系メーカーでその企業は島で1913年からダイナマイト工場を運営していたということですから、ダイナマイトの爆薬を撹拌するのに使っていたんじゃねーの?というのが素人なりの推測です。たしかダイナマイト製造の際にはニトログリセリンを安定化させるためにケイ藻土なんかと混ぜるはずなんで。まあ例によって確証はないです。
1977年まで工場は操業していて、第二次世界大戦中は月産900トンのダイナマイトを生産していたとかなんとか。これが多いのか少ないのかは分からないですが、島の広さから工場の規模を逆算すると、特筆して多いってわけでもないんだと思います。上には上がいるでしょう、きっと。
島にある工場なんで周りからは隔絶されているわけで、最盛期で800人いたという工員たちは島内に建てられた村で生活していたんだそうです。村には学校、食料雑貨店、ホール、屋内プール、ボウリング場、男性用独身寮なんかが備えられていたそうな。外界と接触しにくいためなのか工員とその家族ごと生活していて、福利厚生も中々充実しているんじゃないの?と思えます。
ちなみに現在の航空写真を見ると島の南側半分が植生のないハゲ島になってたんでどうもそこに工場と村があったようですね。今は更地とゴルフ場と数本の道路があるだけです。

蒸気機関ひとつから色々なことが分かるなぁw



2枚上の写真に写っている別のボイラーから蒸気を得ている機関。可搬式というよりもはや卓上蒸気機関と言える小ささですね。
これは解説なしだったので詳細不明。



カナダのぞいやソイヤー&マッシー社製蒸気機関。トラクションエンジンのように見えますが、コレ自体は自走できず何かに牽引されなくてはいけません。前輪から牽引用アームが延びているのが分かると思います。なので可搬式エンジンといったところでしょう。
1907年7月26日にBC州シドニー(ここから10kmほど北にある町)のブラックブラザーズ社が購入。サーニッチ半島にある農場の脱穀サービス事業に使われていました、ということなんで脱穀機のエンジンとして利用されていたんですな。
ですがわずか2年後、1909年にメイン島(ビクトリア~バンクーバーの間にあるガルフ諸島の島のひとつ、有人島)のウィリアム・デキンに売却されます。そこではやはり脱穀のために年に2日程度使われていて、1935年に引退したんだそうな。
最後に1970年にSHASに寄贈、現在に至ります。



機関部。右側の脱穀機用滑車にしか動力を伝達していないのが分かるかと。



後ろ。運転するための座席や立ちスペースがないのでやはり自走は出来ないというのが分かります。



蒸気ベンチ。蒸気パワーでベンチが前後に揺れるぞ!平和的だなぁ。

今日はここまで。
今回もやけに長い文章を書いてしまった・・・。


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