僕の映像体験の原点といえばスターウォーズ「帝国の逆襲」の惑星ホスの戦闘シーン。あの一連のシーケンスのかっこよさに衝撃を受けた子ども時代。AT-ATの歩くシーンはほとんどカットごと覚えてるくらいだ。ストップモーションアニメーションが生み出す映像世界はしかし、その後コンピューターに取って代わられ、手書きアニメと同様死にゆく運命にあった。ところが、その死にゆくはずだったストップモーションアニメが僕観測で最近興隆しているように思う。やっぱ、みんな好きなんだなー、コンピューターの中で作るんじゃなくて、実際にパペット作って一コマ一コマ動かして撮影して出来上がっていく映像世界が。。。その中心に米国のアニメーションスタジオ、LAIKAがいる。背景には3Dプリンティング技術がある。
AT-ATの衝撃
このメイキングは昔から何度も見てるけど本当に今見ても感動するAT-ATの模型。。。。。「映画ってこうやって作るんか!!!」と思った子どものころの自分。
僕の映像体験の原点の一つ。5:30くらいからAT-ATのシーンが出てくる。
それこそキングコングからスターウォーズから、レイ・ハリーハウゼン最後の作品「タイタンの戦い」まで、映画のVFXの中心だったストップモーションアニメが廃れた大きな理由はその大変さにあることは間違いない。誰がどう考えても、モデル作って、動かせる機構を作って、スタジオを作って照明作って、少しずつ動かして写真を撮っていく、って大変すぎる。24枚写真を撮ってようやく1秒。2時間の映画でいったい、、、、オエっとなる。。
さらに、巨大なものを小さいモデルで再現するので、普通に撮影すると被写界深度が浅くなる。なので、被写界深度を深くするために、絞りを絞る。そうなると当然照明を激烈に明るくしないといけない。スタジオの中クッソ熱くなりますよね。そんなクッソ熱いスタジオの中で、1コマ1コマ何ヶ月も何年もかけて撮影していく。ああ考えただけでもオエっ。。。。
そしてその大変さ以外にもう一つ、大きな理由が「人間の表情が描きにくい」というのがあったと思う。
クレイアニメの限界
ストップモーションアニメの原点の一つでもある粘土を使ったクレイアニメ。Wikiを見ると1908年が世界初のクレイアニメらしいので、すでに100年以上の歴史がある。こちらも実は近年結構盛んで、例えば英国のアニメ「羊のショーン」をご存じの方も多いはず。うちのちびっ子も大好き。
他にも、英国BBCはこんなのも作ってて、クレイアニメも連綿と続いている。英国うらやましい限り。
しかし、クレイアニメは動きの再現性がなく、細かい表現が難しい。これを補完するために顔の中にメカを仕込むというやり方もあるのだが、いずれにしても微細な表情や、逆に大げさな顔の動きなどが困難で、その制約もストップモーションアニメが廃れてしまった理由の一つだった。
しかし、3Dプリンティング技術がストップモーションアニメの地平をすっかりと変えてしまった。
3Dプリンティングがもたらした表情
まずはこのコマーシャルフィルムをご覧ください。
英国のPassion Animation Studiosというところが制作したストップモーションアニメ。そのメイキングがこちら。
監督は、「自分がキャリアを始めたころは粘土で作っていたが、いまは3Dプリンティングで豊かな表情が作れるようになった。例えば今回のショートフィルムではお父さんの表情で800体くらいの3Dプリントを用意した」と答えている。
もう廃れて消えゆくだろうと思われていた歴史ある映像技法。それが最新のテクノロジーで蘇る。
LAIKAスタジオ
さて、そのストップモーションアニメの総本山ともいえるのが米国のLAIKAスタジオ。僕がいま10代だったらきっと真剣にLAIKAに就職したいと考えただろう。米国オレゴン州ポートランドに拠点を置くスタジオ。
LAIKAは、もともと「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」を作った制作チームを中心に結成されたアニメーションスタジオだ。その理由は
「映画制作のたびにバラバラと人が集まるようでは技術の蓄積がない。スタジオとして屋台骨を作らないと、技術を継承していくことができないし、なんの発展もない。だからLAIKAスタジオを作った」
米国だからスタジオの人は入れ替わりが激しいんだろうけど、でもスタジオがある限り技術は継承されていくのだろう。。。すごい。
そしてそのLAIKAスタジオが発表した第一弾アニメ、「コララインとボタンの魔女」が米国で大ヒットする。当然使われた技術は3Dプリンティング。このメイキングをご覧いただければわかるが、主人公のコララインのために用意された表情は6300体!!すごい。そして一人のアニメーターが1週間で作れる秒数は2~7秒。なんという手間。まあ絶望しますね、普通(笑
このコラライン。
作品自体はダークファンタジー。ウチのちびっ子3人が漏れなく泣き出すという恐ろしい映画だった。長女はとにかく悪役が嫌いでアナ雪ですら最後まで見られないくらい怖がりなのだが、始まった瞬間ダークな雰囲気を感じて半泣きになってギブアップ。わりと怖いのが平気な次女ですら、敵役と対峙する最後のクライマックスでは大声で泣き出すくらいの強烈さ(笑
ストップモーションアニメがもたらす「アニメだけど実写映画」という絶妙なリアリティさが恐怖感を倍増させるんだと思う。凄い映画です。
古代日本を舞台にしたKubo and the Two Strings
さてやっと本題。
LAIKAはその後、2本の映画を作り、今回4作目がなんと日本を舞台にしたKubo and the Two Strings。来年のアカデミー賞のアニメ映画賞をディズニーのズートピアと争っているという名作なのになぜか日本で公開される予定を聞かない。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2b/e4/6469f8f50b1bd0911ad908da57bf51c9.jpg)
アカデミー賞候補の呼び声も高い
最新技術の3Dプリンティングだけでなく、シリコンを使った髪の毛、レーザーカットしてワイヤーを仕込んだ衣装、などなど、最新技術のオンパレード。何もかもが新しい試みなので、知識と経験を総動員しなければ問題解決ができない。米国の映画製作でよくありがちな「部署のテリトリーを守る」ってことをやっていられない。全員が、部署の垣根を超えて問題解決に当たるという制作過程を経ている。
「3Dプリンターを作っている会社が、面白い最新技術ができたらプロトタイプを真っ先に僕たちに見せに来てくれる。我々は技術の限界を表現の限界にしたくないと考えている。こういうことを表現したいという挑戦が先にあり、それを実現するための技術が今は存在しなくても、どんどん新しい技術を開発していくんだ。」と。テクノロジーと映像表現が両輪となって進化している様。
見たくないですか?そういう人たちが作る物語。 とにかく美しい。細かい美術のこだわりと見たこともないような巨大な造形のストップモーションアニメーション。そして、そういう背景を全く知らずに見たとしても面白い。
「微妙に変な日本だけどわりと忠実」。日本人の監修が入っており、ジョージ・タケイをはじめ日系俳優もちょい役だけど声優を務めていて、描き方に違和感はなかった。メイキングを見ていると、間違いがないように入念にリサーチをしていて、キャラクターたちが着る服も実際に日本に行って仕入れた藍染の布などを使っているこだわりだ。そのあたりはCGアニメと違ってリアル美術を使うストップアニメーションの特徴だと思う。
ただ、、、、ちょっと思ったこと。。。僕が一つだけ不満なのがキャラクターデザインだ。まあきっと西洋人には日本人はこういうふうに見えるんだよね、、、、というのは、登場するキャラがすべて「寄り眼、つり眼」なんです。。よくある両眼を指で吊り上げてアジア人を表現するあれです。いわゆるアーモンド形の目というやつ。。それがどうしても見てて辛かった。別に日本のアニメみたいな目にしろとは言わないけど、登場人物の中に誰一人としてたれ眼のキャラも大きな目のキャラもいなかったんで逆に気持ち悪かった。日本人の中にはつり眼じゃない人もいっぱいいるのにねえ。まあそういう風に見えるんだから仕方がないかあ、、、
いずれにしても日本が舞台なのに、日本公開がないのがそれこそあり得ない。ぜひアカデミー賞を獲って、日本公開にこぎつけてほしい。お願いします!!!
ストップモーションアニメの興隆
さて、ストップモーションアニメ。LAIKA以外にもいろいろある。
1)日本発!
日本でもやってる人がいて、凄い作品を作られてる。こちら!あー楽しそう(大変そう)。。。。
2)たった1人で7年かけて完成させた作品「The Lighthouse」
これもすごい。
3)アカデミー賞を争うフランス映画、My Life As A Zucchini
これもみたい。。
4)星の王子さまの映画
同じくフランス発、リトルプリンスの映画化。CGとストップモーションの融合。ストップモーションパートは本を想起させるために紙を素材として多用されているという凝りよう。
CG全盛の時代のストップモーションアニメの意義
というわけで、死に絶えたと思った古典的な技法が、今、最新技術の普及とともに、再び盛んになってきているのではないか?という僕観測のエントリー。いつか僕もストップモーションをやってみたい、、、、と思い続けて何年経った?
LAIKAを筆頭にこういうストップモーションアニメを見ると、「CGでやったら修正も簡単だし広い撮影スタジオも大きなモーションコントロールの機械も要らないし、なんでこんな面倒なことをやるんだろう?」と考えてしまう。いや、CGが面倒じゃないとはもちろん言わない。けど、なぜこの表現方法を選ぶのだろうか?
いや、いったいなんでこんな面倒なことをやる人たちがいるんだろうか????
いちばんは「楽しいから!」だとなんとなく答えは知ってる気がするが、、、、、
他にもこんなすごいストップモーションアニメがある、というのがあったら是非教えてください!!
コマ撮りアニメはノスタルジックな存在ではありません。『ジュラシック・パーク』では恐竜の形をした関節センサーだらけの入力装置で1コマずつCGI用のデータを採りました。ロボコップ2号もアラクニド達も同じ要領で生み出されています。
CGIのモンスターが出て来ただけで「CGじゃないか」つぶやいてしまう状況になって久しい。「今」、「意義」という問いについては言葉がありませんが、絵描きさんでも模型アニメ作家でも、アニメーターが知恵と想像力を振り絞って創作する場が与えられる事は、好ましい事と考えます。
根気が続かなかったけれど,アニメ作りは自分で2Dでも模型撮影でも、かじった事あります。描いた絵や撮影した模型が命を得たように動き出したら気分良い。専門職のアニメ作家ならば生殺与奪を自分の意思で掌握する神の気分を味わう瞬間があるでしょうね。大きなスタジオで大勢のアニメーターが分業してこういう感覚は味わえるものなのでしょうか。
キャリー・フィッシャー哀悼。両親のゴタゴタした関係に苦しめられ酒とドラッグにおぼれたガラガラ声のレイア姫。ep8の出演シーンはどんな風になっているでしょうか。
キャリーフィッシャーは本当にハリウッドの申し子でしたね。さっき見てた生前のインタビューでは、「生まれて2時間後にフラッシュ焚かれて写真を撮られてた」って言ってました。
その意味ではほんとうに「気が強い姫役」そのものだったんでしょうね。
> 神の気分を味わう
CGってキーフレームの間はパソコンが自動でやってくれるんですよね。で、それはストップモーションではありえない。1フレームごとにすべてを動かさないといけない手書きアニメやストップモーションは、ほんとうに神だと思います。
ニック・パークが大好きで、W&Gからショーンまで
全部の作品を持っていて、このジャンル結構見てます
スター・ウォーズのATがこういう撮り方をしている
としったのはDVDボックス買ったときのメイキング
あれはびっくりしました・・・
なんか動物に乗っているシーンはそうかなと
思っていましたが、すでにW&Gを先に見ていたので
なんか下手くそな動きだなぁ(偉そう^^;)と・・・
1978年公開のことを考えると当時はすごかったんだろうな。
少し前のエントリーでLAIKAの話が出てて
僕は全く知らなくて、すさまじいな・・・と
気が遠くなる作業のさらにどう撮ってるのかすら
わからなくなってしまう・・・いやコマ撮りと
言われても信じられない(信じたくない)レベル
僕はその昔これをみて感動してました
コタツネコ 職人はどこにでもいるもんで
やる気と根気、アイデアさえあれば
誰でも世界に挑戦できるんだなぁと
思ったことを思い出しました・・・頑張ろう
https://www.youtube.com/watch?v=A8q9NsX31EU
コララインがCGに見えるってわかります(笑 一瞬どっちだろう?って思いますよね。特にCGアニメでギクシャクした動きを再現しているものもありますから(Lego the Movieとか)。
KuboなんてもっとCGに見えますよ。実際CGもふんだんに使ってますし。つか、3Dプリントって要はCGで作ったものですしね。
もうこれをストップモーションアニメでやる意義ってあるんだろうか?とふと思ったり、、、
だけど、例えば日本文化を再現するためにパペットの素材に本物の布を買いに行ったりっていうくだりを見て、「あーこれはリアル撮影でないとできないことってあるんだろうな」とも思います。
Kuboはストップモーションアニメでアクションバトルやってるんでほんとすごいっす。
僕はLAIKAにはSFをやってほしいんですよね~ 特にロボットモノを。
> コタツネコ
知りませんでした!オモロイ!僕もやりたいなーーー
DVD/Blu-Rayは本国で昨年11月末に発売されていますが日本語吹き替えが無いので日本ユーザーの需要は細いでしょうね。公開時に日本語吹き替えが付くのかな。公開はいつぢゃ…
それは朗報!ノミネートは順当っちゃあ順当だけど、されたとなると盛り上がりますよねー
アニメ映画には異例の衣装賞にも選考の対象になってると噂を聞きましたがそっちはどうなってるんだろう?
日本公開は確か決まりましたよね?いつなのか、どれくらいの規模なのかは知らないけど、、、、
受賞したら有名人が吹き替え、みたいになるのかなーーー。
この『アナ雪』をパロディにしたクレイアニメーションがあります。
https://www.youtube.com/watch?v=dooAjI6yOhg
『遊星からの物体X』と同化しちゃっています。『物体X』のパロディはクレイキャットやピングーもやっていますが、これは音声を原作のまま使いつつ、変身シーンがバッタもんの中では一番、緻密と思います。血みどろスプラッタ感を甘口にした粘土細工がヌルヌル動く。CG全盛の時代でも見応えがあります。画質がまた、とんでも無く向上しました。
『アナ雪』未見のチビっ子には勧めない。元ネタをご存じの方にはオススメしていますが、3RD EYEさん、いかがでしょう?
3回見てしまいましたww バカバカしくて愛に満ちていて最高じゃないですかww
いや、これはチビたちには見せられません。
オラフが溶けるところが最高ww