スケッチブック

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ショートショート 11

2006-06-18 14:11:17 | Short shorts
我が王国を誰に残そうか


原作:Donald E. Wildmon
翻訳:polo181

 昔、大きな国の国王がいて、もうかなり歳をとっていました。彼は四人の王子の中から次期国王を選ぶ時が来ていると考えました。そこで、誰を選ぶべきかを決めるために、一人ずつ呼び入れて論議をしました。

 第一王子が王の部屋に呼び入れられて、席に着きました。王は彼に語りかけました。「息子よ、私はもう歳をとってしまった。もうそれほど長くは生きられないだろう。私はこの国を最もふさわしい王子に託したい。正直に答えてくれ。もし私がお前にこの国を託したならば、お前はこの国に何をしてくれるか」
 さて、この息子は大変なお金持ちだったので、この質問にこう答えました。「私は多くの富を持っています。もし貴方が私にこの国をくださったなら、私は全ての富をこの国に捧げます。そうすれば、この国は世界で最も豊かな国になることでしょう」。国王は「よく分かった、有難う」と言って、彼との話を終えた。

 第二王子が呼び入れられて、同じ質問を受けた。この王子は最も出来がよくて広い知識と深い知恵があった。そこで彼はこう答えました。「私は膨大な知識を獲得しています。私はこの王国に持てる全ての知識を与えるでしょう。そうすれば、この国は世界で最も知的な国となることでしょう。」国王は、「よく分かった、有難う」と言って、彼との話を終えた。

 第三王子が呼び入れられて、同じ質問を受けました。この王子は武術に長けていて、四人の中では最も力強い人だった。そこで彼はこう答えました。「もしこの国を私に与えてくれたならば、私は全ての国民に武術を教えてやります。そうすれば、この国は世界で最も強い国になることでしょう。」 国王は、「よく分かった、有難う」と言って、彼との話を終えた。

 第四王子が呼び入れられて、他の3人の王子と同じ質問を受けました。さて、この王子は、特に金持ちでもなく、利口でもなく、また強くもなかった。そこで、かれはこう答えました。「お父様、ご存じのように私の兄たちは、お金持ちで、利口で、力が強い。お兄さま達がそれらの特性を手に入れるべく努力をしている間、私は全ての時間をこの国の民のために使いました。病気や貧困で苦しむ民の悲しみを私は共有して参りました。その中で、私は民を愛することを学びました。私にはこの国に与えられる物は何一つありません。敢えていえば、それは愛です。それしかありません。ですから、今後もそれを続けるだけですから、私が選ばれなかったとしても、決して驚きはしません。」

 国王が死去すると、人々はいったい誰が後継者となるのか気がかりで、遺書の発表を待ちました。そして、その発表が行われるやいなや、国中が喜びに沸き立ちました。第四王子が次期国王に選ばれたのでした。

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10 コメント

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国を司るには・・・ (熊子)
2006-06-18 20:02:31
こうして国民に目を向け目線を同じにして共に悩み苦しみ喜び、、、リーダとしての資質をきちんと見極めた国王に拍手ですね。お金も武器もいらない、国民から愛される国王はその国に幸せをもたらせますね。今回もいいお話でした。
熊子さん、こんばんは (polo181)
2006-06-18 21:09:37
コメントを有難う。もうすぐ日本でも○○党の総裁選がはじまります。誰が一番国民に近いのか、よく見極めてから選んで欲しいですね。このお話しの国王を国民に見立てたらどうなりましょう。私たちはもっと、もっと判断力を磨いて、良き為政者を選びたいものです。東京は一日そぼ降る雨で、閉じ込められました。明日は、天気だと報じています。さあ、サッカー、どうなりましょうか。
とてもよいお話。 (sakura)
2006-06-18 21:36:39
サッカーが始る前にとpoloさんの所に

伺ったら良いお話を読ませていただきました。

熊子さん・poloさんのコメント読んで

そのとおり、その通り、と相槌打っております。



さ~ サッカーが始りますね。

さ~~~頑張れ!日本!!
sakuraさん、こんばんは (polo181)
2006-06-18 22:52:00
コメントを有難う。今夜はサッカー一色でしょうね。どちらも負けられない試合だから必死に戦うことでしょう。

久々にショートショートを出しました。過去うん十年を振り返ってみて、本当の意味で国民の側にたって働いた政治家はいるのでしょうか。記憶を探っても一人も見あたりません。
待ってました (じゃこしか)
2006-06-19 11:39:17
 poloさんこんにちは。

 待ってました!poloさん自身によるこの物語が大好きで、これまで長いこと待っておりました。

再び拝見できて感激です。何故ならpoloさんの人柄が如実に顕れて、敬意と親しみを覚えます。



 どうぞ続けて下さい。
じゃこしかさん、こんにちは (polo181)
2006-06-19 12:18:19
コメントを有難う。じゃこしかさんに誉められれば本物です。そうでしたか、読んでくれていましたか。感謝します。それがね、この短編物語りの翻訳はあまり人気がなくて(読者が少ない)しばらく遠ざかっていました。雨続きで、投稿する題材に窮したので、発表した次第です。上の物語で、王様を国民と置き換えて考えていただければ、本望です。
久しぶりのショートショート (あまもり)
2006-06-19 14:20:09
土、日と出かけていましたので、遅くなりました。

私もショートショートの大ファンですよ。お忘れなくなく。

今回もいいお話です。

今この国に一番必要なものを父王は選んだのですね。

豊かさでも強さでも知識でもない、愛であることを。

その愛は国への愛ではなく、国民への愛。

病気や貧困で苦しむ民の悲しみを共有してきたという王子。

そしてこれが国を司る者にとって一番大事なものであると。

強さこそ一番という某国の政治家にも読ませてあげたい。

一握りの知識人の富める人々を国民と呼んでいる政治家にも見せたい。

でもそれらの政治家たちは、例えこの物語を読んでも、意(こころ)を読まず、政治はこんなに甘いもんじゃないとせせら笑うだけかもしれない。

なぜなら、彼らからは民への愛が感じられないからです。
心に残る短編物語 (マコ)
2006-06-19 18:05:56
こんにちは!

少し時間ができたのでpoloさんのショートショートを初めて1~11まで読ませていただきました。 

う~ん、いいお話で考えさせられました。 そしてまた皆さんのコメントを読むのも勉強になりますね。 実は私、他のブログにある文を読むのがあまり好きでないほうですが(時間が無い事もあって)これからも時々、伺いますね。

あまもりさん、こんばんは (polo181)
2006-06-19 19:54:51
コメントを有難う。あまもりさんにお褒めいただいてとても嬉しいです。原作が良いですからね。知、財、力ではなくて、国民の痛みを共有する”愛”こそが、国王(政治家)にとって大切なのだと訴えるお話しになっていますね。成人してからこのかた、半世紀間、我が国の政治家を注視してきました。その結果分かったことは、彼等は美辞麗句を並べるだけで、国民の側に立つ政治をしない、ということです。それだけではありません、中には私腹をこやす輩も沢山紛れ込んでいると言うことも分かりました。

返信が大変遅れました。今日は、映画の日でした。もう遅いので、それの感想は明日掲載します。
マコさん、こんばんは (polo181)
2006-06-19 20:04:46
コメントを有難う。わあ!1から11まで読んでくれたのですか。それはそれは光栄です。有難う!翻訳が稚拙なので、作者の意図が伝わっているかどうか不安でしたが、”いい話”だと仰って戴いたので、とても嬉しいです。これは、心に残る100の話と言う題のペーパーバックです。オーストラリアの友達が送ってくれたものです。正直なところ、翻訳が下手なので、”読者”が少ないのです。ですから、滅多に掲載しません。これからも宜しくお願い致します。

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