8月半ばに桃色の花が咲いていたので、車を停めて写真を撮った。ムクゲの花は韓国の国花。韓国のイメージから映画を連想し「嘆きのピエタ」が思い浮かんだ。
その映画は、つい3日前にレンタルDVDで観たばかりで印象的で、特にラストが強烈だった。「嘆きのピエタ」はキム・ギドク監督・脚本による2012年の韓国映画である。残酷さが誇張すぎないか、と思いつつ、芸術的誇張さの手法に感心した。
物語の筋は、消費者金融の取り立て屋の男とその母親を名乗る女の不思議な関係が描かれている。金を借りて、障害者になり保険で返済したり、あるいは借金苦で自殺者まで出る。家族を失う者の悲しみが、ラストで消費者金融の取り立て屋の男に迫る。
「かあさんを殺すな。おれが代わりに死ぬ」と懇願するのだ。(核心を言ってしまって、いいのかな?)。ま、いいのだ。これは種あかしの映画ではない。人間の絆の根源的なものを訴えたいのだと思う。
キム・ギドク監督のインタビューを聞くと、映画に対するセンスの良さを感じた。映画の伏線がうまく、展開が自然で、無駄がない。(まるでダルビッシュの投球術だ。投げる球が次の展開の意味を持つごとく)
この映画は、第69回ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞。三大国際映画祭(ほかに・カンヌ・ベルリン)の最高賞を受賞。韓国映画が三大国際映画祭の最高賞を制覇するのは初めて。イ・ジョンジンの「天涯孤独の借金取り立て屋」、チョ・ミンスの「母を名乗る女性」の演技もすばらしかった。チョ・ミンスは多くを語らずに、その存在、動作、顔の表情、が何よりの映像言語であった。ここで描かれている韓国の裏社会?やばいと思った。
ちなみに韓国映画には「ムクゲの花が咲キマシタ」という作品があるらしい。
金辰明による韓国の小説。 民族主義的な小説で、おのずと反日的。韓国ではベストセラーになって、1995年に映画化され、賞も受賞している。 そのうち観てみたい・・・。
他に、私が観た韓国映画では、シュリ、マラソン、猟奇的な彼女、友へ、クロッシング、凍える牙、などが印象に残っている。(ちなみに私はソウルひとり旅を32年前に経験している。日本と韓国の歴史、両国の不幸を考えさせられた・・・)
アジア映画といえば中国映画で、やはり張芸謀(チャン・イーモウ)監督の作品が秀でている。 活きる(94),あの子を探して(99),初恋のきた道(00),至福のとき(02),単騎,千里を走る(05),サンザシの樹の下で(10)・・・ 。
ほかの監督では張加貝、脚本は張芸謀監督(初恋のきた道)「さくらんぼ 母ときた道」。
「故郷の香り」「無言歌」もせつない映画だった。・・・韓国も、中国も、底辺社会の過酷さが描かれている。とくに韓国は経済、貿易不調で庶民生活も厳しさが増していると推察される。どの国の社会も政治経済の施策のあり方が弱者にしわ寄せとなる。映画にはその国の実情が描かれる。真摯な監督ならば、自国の問題から目を逸らさない。それでいて、表現の自由の制約もあるが・・・。