水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

雑念ユーモア短編集 (79)自業自得

2024年05月19日 00時00分00秒 | #小説

 世の中は実に上手(うま)く出来ている…と野蕗(のぶき)は唸(うな)った。なぜ野蕗がそう思ったかを説明すれば話が長くなるが、概要を短く言えば、野蕗を陥(おとしい)れた生節(なまぶし)が、ものの見事に自分が仕掛けた策略で失脚し、出向として地方へ左遷されたからである。早い話、出世コースから完全に見放された片道切符の島流しだった。その一部始終を話せば、これも長引くから次のフラッシュに纏(まと)めたドラマを読んでいだたければ、分かって戴けることと思う次第だ。
 松の内も終わった一月下旬、人事部第一課長の生節と第二課長の野蕗は次の人事部長ポストを巡り、熾烈(しれつ)な戦いを繰り広げていた。とはいえ、それは飽くまでも心理合戦であり、表面的には見えない戦いだった。生節は露骨な心理戦を展開し、人事部長の鮨尾(すしお)にプライべートなゴルフ三昧で急速接近していた。
「どうです部長、次の日曜なんか…」
「おっ! いいねぇ~。聞くところによると、君、腕を上げたそうじゃないか…」
「いや、それほどでも…」
「ははは…謙遜はよしたまえ。まあいい、楽しみにしてるよ」
「はあ、有難うございます。それじゃ、いつものお時間にご自宅へ伺わせていただきます」
「ああ、よろしく頼むよ…」
 そんな話が部長室で話されていた頃、野蕗と雑誌編集長の友人、焼麩(やきふ)は甘辛子で和(あ)え合っていた・・ということはなく、電話で話していた。
『おいっ! お前の人事部にいる生節が賄賂を贈ったって、うちの部下から情報が入ったぞ。たぶん、地検のガサ入れが近くあるだろう。お前は大丈夫なんだろうな?』
「ははは…俺にそんなことが出来ないことは、お前が一番よく知ってるじゃないか」
『そうだったな、ははは…』
 そして春三月、生節は島流しどころか懲戒解雇になったのである。
 ということです。^^ 出世を望むあまり、自業自得になるようなつまらない発想や雑念はやめましょう。^^

                   完


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