水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

SFコメディー連載小説 いつも坂の下で待ち続ける城水家の諸事情 -93-

2015年10月28日 00時00分00秒 | #小説

━ 坂のマンホールの下に我々が利用する地下駅が出来ていたのをお前は知っていたか ━
 地球外物質は城水へテレパシーを送り始めた。城水が異星人によって作られた地下駅など知る由(よし)もなかった。もちろん、指令に伝えられたことは知っていたのだが…。
[指令が伝えていない以上、私が知る訳がないだろうが]
 城水は即座に否定した。
[それは、そうなる。では、詳細を語ろう]
 城水としては別に語って欲しくなかったが、語るというのだから語られるしかない・・と脳内数値は従順or恭順した場合の数値を示した。反発して無視した場合のデメリットの数値と比較して、である。城水は、語られようじゃないか! と気分的には反発しながら従った。
━ 我々は、着陸した山麓とマンホールを中継する通路を作った ━
[ああ…]
 城水も、そのことは知っていた。ただ、瞬時に空間移動できるのに、なぜそんな通路が必要なのか? という疑問はあったのだ。今、地下駅のことをテレパシーで語られ、城水は、ようやくそのモヤモヤとした疑問が解けたような気がした。
[なるほど、そういうことだったのか…]
━ ああ、まあそういうことだ ━
 地球外物質には城水の思考が手に取るように分かっていた。
[そんな駅を作って、いったいどうするつもりだ?]
 城水に新たな疑問が浮かんだ。


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