デ某の「ひょっこりポンポン山」

腎がんのメモリー(術後10年クリアーし"卒がん")、海外旅行記、 吾輩も猫である、人生の棚卸しなど。

腎がんのメモリー 31(命のコスト)

2016-10-06 18:57:18 | 腎ガンのメモリー
    
     朝ドラ「べっぴんさん」、視てはりますか? かなりいけそうです。えぇ子役を選びました。
     四葉のクローバーにこめられた「勇気」「愛情」「信頼」「希望」。えぇ言葉です。

 レアータイプ?のノーベル賞(医学生理学)受賞者
 今年度のノーベル「医学・生理学」賞を大隅良典さんが受賞されました。競争の激しいこの分野は複数の方の受賞が多い中での単独受賞でした。日本人科学者では本庶佑さん(がんの免疫抑制の研究)が最有力視され、やや意外感もありました。またノーベル賞には天才?京大型の受賞者が多く、秀才!東大型、それも理Ⅰ(理・工)、理Ⅲ(医)ではなく理Ⅱ(主に薬・農)出身というところもレアーでした。

 がん医療にも貢献する「細胞のオートファジー(自食)」研究
 受賞の対象は、細胞が自分を食べて生き残る!という「オートファジー」の解明でした。優れた研究者の例に洩れず、「何かをしたい」という以上に「人がやらないこと」をやり、やがて「とても面白いことを見つけた」と。がん医療にも期待されるオートファジー遺伝子18個のうち、さすが!フロンティア、14個は大隅良典さんが発見し、酵母から始まった研究も現在では対象が高等動物に移りつつあります。

 いま話題の夢の新薬「オプジーボ」を生み出したのは・・・
 大隅良典さんについてはここまで。ノーベル賞では大隅さんより有力視された本庶佑さんの研究とがん新薬について書きます。がん患者なら誰でも知っている夢の新薬「オプジーボ(別名「ニボルマブ」)」を生み出すもとになった研究です。がんを叩く!抗がん剤の常識?とは逆に、やや「まがいもの」「あやしい研究」視されていた免疫抑制力に関する研究、具体的には「PD-1」の発見でした。

    
     川辺に紅い彼岸花。コスモスと少女(by QP)。碧い空、白い雲、風に揺れるススキ。秋やなぁ。

 分子標的薬の登場
 これまでは、がん細胞を破壊、弱めること(抗がん)に力を注いできました。しかしがん細胞を攻撃すれば健康な細胞にもダメージを与えます(副作用)。それでは!と、出来るだけがん細胞のみを集中的に攻撃する分子標的薬が生まれました。がんの三大療法は、①手術による摘出、②」放射線療法、③化学療法ですが、化学療法の中心が「薬」の投与であり、薬の中でも分子標的薬が主流になりました。

 「がんを叩く」薬から 「免疫力を抑制する物質を叩く」薬へ
 私が腎がんを告げられた5年前、既に分子標的薬が生まれていました。当時、製薬の研究室にいた息子が「おとうさんは運がいい。今、分子標的薬がどんどん出ている」と言っていたほどです。しかしそれでもなお標的の範囲は絞り切れず、がん患者は様々な副作用に苦しんでいます。そこに現われたのが、「がんを叩く」薬ではなく、「人間が持っている免疫力を抑制する物質を叩く!」薬です。

 がん細胞を守っている「PD-1」にブレーキをかける
 人間の身体にがん細胞ができると、キラーT細胞(免疫細胞)が働きがん細胞を攻撃します。するとがん細胞は、キラーT細胞にブレーキをかける「PD-1」という物質を作り出します。この「PD-1というブレーキを外す」ことが出来れば、がん細胞はキラーT細胞から自分を守れず死滅します。このPD-1を解明したのが本庶佑さん、PD-1というブレーキを外す薬がオプジーボです。

  超!高額薬価とがん患者バッシング
 オプジーボは、皮膚がん・肺がん(後に腎がんも)の治療薬として保険適用されることになりました。開発した小野薬品工業の売上高は大きく伸びると見込まれ株価は急上昇しました。しかしがん患者1人の1年間の薬代が約3500万円の超!高額薬価は最大年2兆!円、健保財政の窮迫が懸念されるものです。また或る医師の「一剤で国が滅ぶ」の言葉から「がん患者バッシング」の様相さえ帯びました。

 がん難民に希望を与えるオプジーボ
 何処の病院でも「手の施しようがない」と事実上!治療を拒否されるがん患者は「がん難民」と呼ばれます。そんながん難民に希望を与えるのが画期的な治療法、夢の新薬です。オプジーボもその一つと言えます。しかし超!高額薬価であるがゆえに、「使用にあたっては慎重に」とか、「一定の条件を満たした者だけに使用する」と、希望しているのに対象からしめ出される状況は、如何なものでしょうか?

    
     彩やかなコスモス。驚きの香りとともに訪れる金木犀。お彼岸すぎた彼岸花。(Painted by QP)

 喫煙をつづけ 検診をスルーされた方の 突然!末期
 喫煙が、肺がんの超!ハイリスク要因であることは今や誰でも知っています。早期発見、早期治療の重要性から、がん検診の意義も知られています。しかし、「俺は大丈夫」とか、「タバコやめるなら人間やめたほうがマシ」と仰る方は少なくありません。「特にどうもないから健康診断はパス!」とか、「人間ドック? そんな暇ない」という方も同様です。そういう方ほど発見が遅れ、「突然!末期」を迎えます。

 高額薬価で保険料が上がるとすれば
 もしそんな方が末期の肺がん患者となりオプジーボを処方され、健保から年3500万円が使われるとします。日々節制し、がん検診もドックも受け、幸いがんになっていない or 早期発見で寛解されている方は、この場合の3500万円についてどう考えるでしょうか? 高額の自己負担なら「自業自得」で済まされるでしょうが、高額薬価で財政が窮迫し、保険料が上がると言われて果たして納得されるでしょうか?

 漸く薬価切下げの動き
 オプジーボは日本で開発され、対象も皮膚がんに限られました。当然、開発コストと企業利益、適用患者数を勘案すれば超!高額となります。しかし肺がん、腎がんなどに適用が広げられるに及び、オプジーボの薬価を切下げる動きが出てきました。元々お金持ちしか良い医療を受けられない米国でさえオプジーボの薬価は日本の40%、医療費は無料でも一定額以上は全額自己負担の英国でも20%余です。

 医療(制度)について深く考える契機に
 オプジーボの薬価について、あるブロガーさんは『人助けと金儲けのコンフリクト』だと。コンフリクトとは「葛藤」「衝突」、なるほど!と思いました。自己を犠牲にする「人助け」は美談となりますが、この場合の「人助け」=命の価値をどう考えるか。一方、「金儲け」のみが製薬企業や医師、病院の価値観とは限りますまい。皮肉にもオプジーボの高額薬価は、医療と命のコストの問題提起となりました。

                                 
                 少し肌寒くなりました。お風邪など召されませんように...

 【「腎がんのメモリー」目次】
    http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/bee90bf51656b2d38e95ee9c0a8dd9d2

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8 コメント

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勇気〜愛情〜信頼〜希望 (moka)
2016-10-07 17:12:50
デ某さん、こんばんは。

「べっぴんさん」見てはりますよ〜
四つ葉のクローバーの言葉えぇ言葉やね。
すみれちゃんのお母さまは、
私と同じ病気なんやろか…?と
ちょっぴり胸がキュンとなっています。

どんどん新しい薬が使える様になり、
医療が進む事は、私たち患者にとっては、
とても心強くもありますが、
切り離せない「お金」の問題が解決される事は、
近い将来にやってくるのでしょうか…。
がんが治る時代が来る事を願うばかりです。

昼間は、まだ日差しも強く暑く感じますが、
朝晩は、肌寒くなってきましたね。
デ某さんも、体調にはお気をつけくださいね。
ごきげんよう〜
返信する
Re:mokaさん「合言葉」 (デ某)
2016-10-07 20:36:48
mokaさん
コメントありがとうございます

> 四つ葉のクローバーの言葉えぇ言葉やね。
その挿話のために第一週はあるような気がします

> すみれちゃんのお母さまは、私と同じ病気なんやろか…?
> ちょっぴり胸がキュンとなっています。
それが...まるでちがうんです
モデルとなった人は佐々木倆子さん、レナウン創業者佐々木八十八の奥様です。
ドラマでは、すみれさんが9歳のときに亡くなる設定でしたが、
実際の倆子さんは昭和43年、86歳まで元気に生きられました。
mokaさんは少なくとも倆子さんより長生きされます。
mokaさん、歓喜の胸キュンキュンなさって下さいね。

> 新しい薬が使える様になり、医療が進む事は患者には心強くもありますが、
> 「お金」の問題が解決される事は、
近い将来にやってくるのでしょうか…。
孫達が生きる時代に「がんは完治」の時代になると思います
子達の時代は「ほぼ完治」の時代となりましょう。
私達の時代だって「死の病」から「治る病」にブレイキングしたのですからね。
お金の問題も、TPPでいずれ保険制度が大改悪されない限り大丈夫です。

> がんが治る時代が来る事を願うばかりです。
前記のとおり 来ますとも 大丈夫です
9年後、茶屋町で寛解オフ会しましょう。愉しみにしています  
勇気愛情信頼希望を合言葉にね。
返信する
お休み前にお邪魔します。 (遊花人)
2016-10-08 00:13:00
夜分遅くのコメント失礼致します。

癌の薬は、開発に膨大な費用がかかる為、製薬会社的には保険適用にしたくは無いとの意見をインタビューで答える方が居ましたが、その製薬会社の社員に癌患者さんが現れたら、果たして同じ事を言えるのだろうかと考えてしまいます。

今回のオプジーボ保険適用、自分自身使っては居ませんが嬉しい事と思っています。
肺癌に適用とあるなれど、腎細胞癌転移の肺癌にはどーなんだろうとか、、、

今週土曜と日曜は、RENOWNの催事スタッフでワンサカワンサカ働いて来ます。
未だにあのレナウン娘がオープンと同時に会場内に鳴り響きます(笑)

おやすみなさい
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Re:遊花人さん「レナウン娘が...」 (デ某)
2016-10-08 10:12:02
遊花人さん
コメントありがとうございます
旅とともに旺盛なブログUP、
遊花人さんらしい生きざまが随所に垣間見られ 嬉しく読ませて貰っています。

> 癌の薬は開発に膨大な費用がかかる...製薬会社的には保険適用にしたくは無い...

保険適用なし!がもたらすものは、「がん保険」の契約増だけでしょうね。
日本の製薬企業は総じて「特許は買う」「特許をもつ企業を買う(M&A)」、
自ら研究開発する意欲に欠ける傾向があります。
そんな傾向にあってオプジーボは、ひょうたんからコマ!の独自開発でした。
日本の製薬企業に良い典型となる経過をたどってほしく思います。
そういう意味で本庶さんのノーベル賞受賞に期待していたのですが...。

> 今回のオプジーボ保険適用、自分自身使っては居ませんが嬉しい事と思っています。
> 肺癌に適用...腎細胞癌転移の肺癌にはどーなんだろうとか、、、
対象は「手術不能」「転移性腎細胞がん」に限られますが、適用されます
患者会の署名活動も大きく貢献したと思います。

> 今週土曜と日曜は、RENOWNの催事スタッフでワンサカワンサカ働いて来ます。
> あのレナウン娘がオープンと同時に会場内に鳴り響きます(笑)
レナウンって朝ドラ「べっぴんさん」のお父さんが創業された会社ですね
レナウン レナウン レナウン娘が...インプットされてます、私にも
そのCM・・・https://www.youtube.com/watch?v=EvqFvUeDYno
返信する
Unknown (Anne)
2016-10-08 16:43:57
最近は免疫の方にかなりシフトしていっていますよね!
抗酸化作用とか腸内フローラとか、以前と比べて普段から免疫力を意識するようになったと思います。

研究や新薬のことを考えると、
やはり研究者や製薬会社にはそれだけの高額な対価は、この先、未来の研究のためには必要だと思うし!

患者側の自分達には出来るだけ安価で使わせて頂きたいし(^_^;)

日本の医療保険はもう疲弊しているし!

どこに合わせたらいいんでしょうねえ・・・

任意の保険は利益を追求しているから、
実際には殆ど読むこともやい約款に事細かに決められていて、すべてが対象ではないし(-_-;)

オプジーボ保険適用が決まった癌だけと言うのは、保険の関係?癌への効き目の関係?
そこは気になります!
返信する
Re:Anneさん「テポドン」 (デ某)
2016-10-08 19:08:17
Anne
コメントありがとうございました
がんにはあまり関心をもっていらっしゃらない...と思っていましたから、意外!

> 最近は免疫の方にかなりシフトしていっていますよね!
振り子ほどせわしなくはなくても、方向も流れもしばしば変わります
免疫の働きはまだまだ未解明で、そこに見込がある!となれば わ~っと!
そもそも高校の「生物」の教科書は
1960年代までと1990年代以降とでは 別の学問? て思うほど様変りしました。

> 研究や新薬のことを考えると...
開発者(製薬企業)、患者、健保財政はまさにコンフリクト(葛藤、衝突)の関係
各々のバランスをとることは容易ではありません。

> 日本の医療保険はもう疲弊しているし!
どこがどう疲弊しているのか? という見方、考え方さえコンフリクトの様相

> どこに合わせたらいいんでしょうねえ・・・
合わせられるような一致点は見つかりますまい
結局、米国型の自立主義に向かう最悪のシナリオを押し付けられるかも...。

> 任意の保険は利益を追求しているから...
保険業界に本当の競争原理が働き、契約書のわかりやすさも競われましょう
この問題、給料の1/3を税金にして福祉型社会を築きますか?
給料の1/3を保険代に充てる自立型社会を選びますか?
ということでしょうかねぇ。

> オプジーボ保険適用が決まった癌だけと言うのは? そこは気になります!
効くのは3~4割と言われていますが、
現に投与されている事例について更に検証が進まないとわからないでしょうね
薬価は下がりはじめていますから、健保財政についてはそこそこに...。
国民の50%がかかる病気にしては関心が低すぎるかもしれません。
「私は大丈夫」と、誰だって(私だって)思いますからねぇ...。
50%の確率でテポドンが飛んでくる、と言えば 別なんでしょうけどね(笑)
返信する
Unknown (ガムザッティ)
2016-10-19 18:38:16
デ某様、初めまして。
と言っても、多くの方のブログでお見かけしていますので初めての感じはないのですが。

ようやくコメント投稿欄が開いている記事に会えました。

ある方のブログにて、私のこともお気遣いくださいましてありがとうございます。

腎がんブログをもっていないので、あまり多くの方のコメント欄に出張るのもどうかと思っているのですが、今日はお礼に参りました。

術後初めてのCTは皆様が通る道ですが、近づくと緊張するのは必須。
デ某様の優しいお言葉がとても嬉しかったです。
ブログ主様からも、「一緒に頑張る」と温かいお言葉を頂きました。
(お名前出させて頂いても大丈夫とは思いますが一応匿名で(苦笑))

記事にもコメントしないとですね。(^^;)

私は術前にスーテントを飲んだので副作用のつらさを知ってしまいました。
この先転移・再発があったらオプジーボや、副作用が楽な薬が開発されたら当然そちらを選択したい。

薬価が高騰しすぎず、誰もが希望に沿った治療を受けられるようにと当たり前のことを願うのみです。

返信する
Re:ガムザッティさん (デ某)
2016-10-22 16:42:16
ガムザッティさん
コメントありがとうございました

> ようやくコメント投稿欄が開いている記事に会えました。

お手間をおかけして恐縮です。
毎月介護帰省しており、今月は19日~今日まで帰省、今!戻ったところです。
PC環境は自宅にしかなく あたふたとコメント欄も閉じさせていただきました。
お返事が遅くなってほんとうに申し訳ありません。

なお 帰省先は境港市(鳥取県)です。
父を見舞い、母を病院に連れて行く車中で携帯の緊急地震警報が鳴り始めました。
車を停めてすぐ、ぐらぐらと揺れ始め電線も大きく波打ち...怖かったです。

> ある方のブログにて私のこともお気遣いくださいましてありがとうございます。

腎がんの方に限らず、がんキャリアの方みなさん総て仲間ですし
お一人お一人のメッセージ総てが 私にとって貴重な励ましになっています。

> 腎がんブログをもっていないので、
> あまり多くの方のコメント欄に出張るのもどうかと・・・今日はお礼に参りました。

私は 自身の「ブログを書く」ことよりも
ブログにコメントを頂き返信させて頂くこと、
また他の方のブログを拝読しコメントさせて頂くことが、より大きな歓びです。
ところが先日、それが結構負担になる方もいらっしゃると伺い ビックリ!
やっぱり自分の感覚だけではイカンなぁと考え始めたところです。
「お礼に...」とのことですが、とんでもありません。
こちらこそコメントをいただきとても嬉しいです。ありがとうございます。

> 術後初めてのCTは皆様が通る道ですが、近づくと緊張するのは必須。
> デ某様の優しいお言葉がとても嬉しかったです。

ガムザッティさんは来月末が術後最初の検査(検診)でしたね。
私は5年間に CTを14回、骨シンチを4回撮りましたけど...絶対!慣れません(笑)
慣れたのは病院までの乗り物とか検査の手順などで、
結果を待つ!結果を聴く!時の「厭な気持ち」はぜ~んぜん!慣れません(泣)
でも その度に人間が少~しだけ鍛えられ物事に寛容になれるような...(錯覚?)

> ブログ主様からも、「一緒に頑張る」と温かいお言葉を頂きました。

陽だまりのような暖かなブログ、温かなエールでしたね。
私からも「心から応援しています」と あらためて心こめてエールをおくります。

> 私は術前にスーテントを飲んだので副作用のつらさを知ってしまいました。
> この先転移・再発があったら
> オプジーボや、副作用が楽な薬が開発されたら当然そちらを選択したい。

術前にスーテント...にビックリです。
新薬、新治療法もつぎつぎ出てくるでしょうし、大いに期待したいと思います。
機会がありましたら ご体験などぜひブログUPいただけたらと存じます。

> 薬価が高騰しすぎず、誰もが希望に沿った治療を受けられるようにと...。

はい。ほんとうに! 医療の根幹は患者本位であって然るべきですからね。
ガムザッティさんご自身にも がんキャリアの皆さんにも 
健やかな日々でありまよう心から念じています。
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