秋の入り口に

 

 

彼女に会うのはこれで２度目

前回は先輩の案内や接客を　同行して勉強する形だったけれど

今度は一人立ちで案内してくれます。

初々しい感じの爽やかなお嬢さんといった感じの

不動産屋さんの営業とは　少しイメージが違います。

今年大学を卒業して実家の三重には帰らず

２級建築士の勉強をしているとか・・・

「私は京都の大学だったので下賀茂神社の傍だったんですよ」

「あらあ　私は西陣の近くにいたのよ」

「じゃ　すれ違っていたかも知れませんね」

「いやいや　もうずいぶん前だもの」

なんて世間話も清々しい

 

 

前もって頼んでおいた　３件の物件を見せてもらっている時

それぞれが立ち止まって　「ああ・・・」と声をあげます。

「OOさん　柘榴ですね。 私の所は田舎だったので　たくさんありましたよ」

「ほんと　秋らしい雰囲気ね～」

思わず二人して空に向かって深呼吸です。

「そういえば　子供の頃、お向かいの格子戸から見えたものでしたよ」

「そうでしたか　懐かしい感じがとてもいいですね」

立ち止まって視線を止める場所が同じことが

まだ素朴な感性に包まれた　若い彼女を近くに感じて心地よく

「近くに金木犀があるのでしょうか　かすかにいい匂いがしますね」と　彼女

風に乗って香ってくる金木犀は

秋の入り口にたまたま　不動産屋さんの営業とお客という形で

そこに立った世代の違うふたりに

つかの間　優しい瞬間を届けてくれて

 

ずっと　今のままの貴女でいてくださいね・・・と

ふっと　そんな事を思ったりすることでした。