僕の細道

【となりの山劇】第47話

<困った の巻>

 会社の帰りの話。JR名古屋駅の6番ホームで電車を待つ通勤客は、いつもにも増して多かった。

 そして、ホームに入ってきた電車は一両に出入口が2箇所しかない車両だったのです。通常、このような型の車両に乗って、座れなかった場合は、なるべく車両の中央部分に陣取り、シートの端についている手すりを確保するのがセオリーとなっています。

 とはいうものの混雑した中でその理想の場所に進むのは至難の技。もう人波に身を委ねるしかないのです。

 その日、いつも通りに電車に乗り込むと、なんとか中央部の方に流れていったので、ラッキーっと思っていたら私の前に若いOL(多分)が居てね、人が電車に乗り込むごとに圧力の波が押し寄せて来て、私の体はそのOLにどんどん密着の度合いが高まっていくのでありました。しかも、悪い事に私の鞄を持った方の手がOLのお尻に当たったまま動かせない状況になってしまったのであります。

 こーいう状況になるのは殆ど不可抗力。まずい位置にある手を退けようと思っても動かないし、退かそうとしてゴソゴソしたらかえってヤバい状況になりかねない。
 この状況はやばいなーと思っていたら、そのOLが振り返って「なによ!」という視線攻撃を投げかけるのです。

 知るかよー、この状況を見ろよー、そんなにイヤならそっちの体の向きを変えろよー。それにヤバイなーと思ってるから後ろから押されても少しはこらえてやってるんだよ。お前が男ならもっと遠慮無しに押すところなんだぞー。などと言いたいところをぐっと堪えて、とりあえず黙っていたのでした。

 でも、それでも圧力は止まらない。ぐいっぐいっと四方から圧力の波状攻撃が押し寄せる度に少しずつOLの方に動いてしまい、いつの間にか女性の真後ろに密着してしまった。ますますヤバイ体勢になって行くのであった。

 やがて扉が閉まり、電車が発車して少しほっとしたのは束の間。密度が高い部分から密度の低い部分へ物体が移動しようとするのは自然の摂理。電車が揺れる度に圧力がかかってきて、自分の手や身体がますますそのOLに密着し、その度に女性が振り返り、視線攻撃を投げかけてくるのです。

 そりゃあね、厳密に言えば触ってるよ。でも、この状況の中でどーしろと言うの。何も動かないよ。それともオレに気があるの?。という沈黙の状況が約10分間続いて、次の尾張一宮で客がどっと降りた時、やっと体が開放されたのです。
 開放された途端にあの視線投げかけOLはさっさと遠くの方へ行ってしまったのでした。やっぱり気があるわけじゃあなかったようです。(あたりまえ)

 くどいようですが、全てフカコーリョクってやつです。フカコーリョクをたてにとって楽しんでるんではないかって? そんな事は断じてありません。

 あーやだやだと言いながら顔が赤いのは何故?


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