稽古を前に獅子の面を着ける宮内さん(東京都内の稽古場で)
大洗町出身の女性能楽師、宮内美樹さん(41)が19日、水戸市の県立県民文化センター大ホールで祝言能「石橋」のシテ(主役)で舞台に立つ。両親の反対を押し切ってキャリアウーマンから転身。10年の修行を経て、初めての“凱旋(がいせん)公演”で震災復興を祈り、舞う。
水戸三高卒。津田塾大で国際政治を学んだ。フランスからプルトニウムを運んだ「あかつき丸」のニュースに関心を持ち、1995年、旧動燃(日本原子力研究開発機構)に就職。使用済み核燃料の深地層処理の計画促進、地方から中央への陳情者のサポートなどに携わった。
厳格な両親に育てられ、小学生の頃から水戸東武館(水戸市)に通い剣道を習った。家庭内でも敬語で話すようしつけられた。「女は短大に行って、いい相手を見つけ、結婚し子どもを産むのが幸せ」。そんな考えの父親が望むようなレールを歩んでいた。
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「能楽に出会って、プロになりたくなっちゃって……」。転機は2002年、上司に頼まれて書類を届けに能楽堂を訪ねた時だった。独特な節回しの謡が聞こえ、板の間にたたずむ演者の姿をちらっと見た。「不思議な世界だった」。3か月後、記憶の片隅にとどまっていたその世界に、自ら飛び込んでいた。
記憶力に優れ、強い発声は舞台映えした。稽古を始めてわずか3か月で客を前に舞う機会に恵まれたが、舞台で棒立ちになった。大失態にも関わらず、能の魅力にとりつかれた。失敗を慰める言葉を探していた師匠の荒木亮さん(56)に、「先生、私プロになりたい」と言い切った。
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03年2月、動燃に辞表を出し、修行の道に入った。31歳は遅すぎるスタートだったが、寝食以外の時間を全て能にささげる覚悟だった。観世流シテ方の名門8世の故・橋岡久馬氏にも気に入られ、指導を受けた。
シテとしての初舞台は11年2月。その1か月後、東日本大震災で地元の大洗町が津波に襲われた。実家は難を逃れたが、精神的に落ち込んでいた母のそばに寄り添った。
復興途上の県内で、舞台に立てる喜びはひとしおだ。演目の「石橋」は、浄土へ続く橋に現れた獅子が豪快に舞い、邪気を払う縁起の良い物語。面は稲敷市の秋本玄影さんが打った。
「能に対する愛情は誰にも負けない。頂いた恩は必ず返したい」。師や関係者はもちろん、生まれ育ったふるさとや家族へも、その思いは同じだ。
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