とはいえ、こち亀は100巻あたりで挫折したヨシアキですので、あまり偉そうなことは言えませんが。
大阪が深刻な米不足のため、農林水産省に備蓄米を流してほしいと要請しました。
この知事の行動に、「備蓄米は家畜のえさに使用するのが一般的程度の品質なので、現実的ではない」「突然備蓄米が流出すると値崩れを起こして逆の意味で小売業者がピンチになる」等の意見が相次いでいるらしいです。
ヨシアキたちの世代で「米不足」といえば、1993年の平成米騒動を最初に思い出す方も多いと思います。
あの時は本当に驚きましたよね。
米を輸入するという今までにない事態に政府も大混乱。
そしてようやっと輸入してもらえたタイ米(等)は大不人気で、輸入して頂いたのに日本中でインディカ米が余るという大惨事に。
幸い、翌年1994年はラニーニャ現象により大豊作を迎えることになって騒動は一年経たずに沈静化しました。
今でも記憶に残るのは、その当時に読んでいた『こち亀』のエピソードです。
****************************************************************
物語はいつものように派出所に出勤した主人公(以下『両さん』)の机に国産米の大袋が一つ置かれていたことから始まりました。
聞けば昨今の米不足のため育ち盛りの息子を2人もつ同僚(寺井)がお米が手に入らなくて難儀しているという話を聞き、お金持ち(中川)が厚意で自分の系列のレストランから国産米を都合したとのこと。
超が付くお金持ちの中川は米不足の庶民の現状を知らず、それを見た両さんは「寺井たちはまだ若いからブレンド米でも食べればいい。ちょっと借りるぞ」と、その米袋をもって自転車で出かけます。
「売らなければいいけど・・・」と心配そうな中川のつぶやきは外れ、意外にも両さんが向かったのは近所の駄菓子屋でした。
駄菓子屋で一人暮らしをする店主の高齢女性に「世代的に国産米の方がいいだろう。好きなだけ持って行ってくれ」と大盤振る舞いする両さん。
しかし女性は断りました。
「昔と違ってパンも麵もあるし、すいとんだって作れるし。 いざとなったら外国米だって気にせず食べればいいからね」
自身の米びつの底が見えている状況でもゆったりと答える女性。
さらにニコニコして続けます。
「そんなことより、人様の物を奪ったり買い占めたり、心がいやしくなる方がイヤだよね。 困った時こそ、みんなで分け合わないと」
すんなりと出たセリフに、思わず両さんも「何十キロも買い占める主婦に聞かせてやりたいな」と呟きました。
物語は再び派出所の場面に戻ります。
「戦争経験者は強い。 あれから何件か回ったが、みんな「もっと困っている人にあげなさい」と断られてしまったよ」
そんな折、派出所の上司である部長が米袋を抱えて出勤しました。
「並んで整理券をもらって、やっと買えたよ。 ブレンド米だがな」
(今になって考えれば、米を買うために有給で時間休を取っていますよね、この部長)
苦笑しながら米を置くその目の前には、両さんが持ち帰った手つかずの国産米の袋。
それが中川のつてで入手できた本物であると知ると、部長は「中川君、ちょっと・・・」と中川を連れて奥で話そうとします。
「ちょっと部長!」慌てて止めに入る両さん。
「部長にはブレンド米があるでしょう!」「だって国産米が食べたいんだもん!!」涙ながらに両さんと中川に訴える部長の姿が印象的でした。
*****************************************************************
当時中学生だか高校生だかだったヨシアキにこのシーンは印象的だったらしく、今もそらで一字一句再現できてしまった自分に驚きました(苦笑)
オチは忘れてしまいましたが(印象に残らないと発揮されないヨシアキの記憶力。テスト向きではありません)、30年が経過した今でも通じてしまうのが怖いですね。
あれから色々な物が品薄になったり高価になったり入手困難になったりしましたが、ヨシアキは「無駄な買い占め」と「独り占め」だけはやめようと心に誓いました。
少し前の話ですが、コロナの奔りでマスクが本格的に入手困難だった時、幸いヨシアキ宅に仕事の関係でマスクを確保していた友人から数箱届けて頂いた時も、一人暮らしの大人なヨシアキが持っているよりは活用できるだろうと、キープするのは必要最低数にしてなるべく家族と同居している友人たちに配りました。
あの当時は花粉症も猛威を振るった季節でしたので、感謝してもらえたのが本当に嬉しかったです。
守る人や場所があるのも大切。
でも、「必要以上に持ちえた物資」を、「今すぐに必要な人」に使ってもらえるように考える余裕は、忘れたくありませんね。