DAY×DAY

デイ・バイ・デイ
俳句 書評 音楽 映画

一応野球少年、後日譚

2013-10-30 04:59:33 | 日記
有岡橋


野球部を辞めてふらふらと、何をしたいかも定まらないまま高校も2年になり、球技大会が行われた。

何がしたいか希望が募られたが、まあこういうときはソフトボールに落ち着く。
……

理数系の秀才が多くいるクラスとの対戦となり、選択科目に数学など採らなかったおれは、たかをくくっていた。

「あいつらには片目つむってケンケンでやっても勝てる。」

負けるわけないと思う反面、「あいつらに負けるようでは、おれは勉強もスポーツもダメの何の取り柄もない丸出ダメ夫や」と
追い詰められるような気も、実はしていた。



対戦ピッチャーは1年の時のクラスメートのI.K.くんや。

秀才の彼は常に学年シングルの成績やのに少年野球も経験したくせもので、ソフトボールとは言え、えげつない速い球、投げてくるんや。
「あいつ、どこでそんな速い球、習うたんや」

みんなカスリもせずバタバタ三振してくる。
一様に目が泳いでて、
手に負えん問題に直面したときのあきらめの表情をしてる。

それを見たおれは自分でも意外なほどムキになっていた。

おれは野球少年として、違うところを見せなあかんと気負っていた。



校庭


実は野球経験者が他にいないので俺がオーダーを組んだんやった。

しぜん、俺が4番や。
自分で決めた4番としては無様な凡退はでけへん。


自分でも意外なほど謙虚になっているのが判っていたが、しゃかりきになってる風は見せたくない。

ちゃらんぽらんに、へらへら笑いながらボックスに入った。
「はやいな」とキャッチャーに声をかけたが、
「う、うん」とうなづく彼は、受けるのが精一杯というのがありあり。

「どうや打てるか?」

自分に問いかけたが自信はなかった。



1球目はインハイにきた。うなりながら、胸元をえぐってくる。

あいつ、狙たんやろか?
…としたらたいした奴や。あいつ、勝負師やな。

もと野球部員にブラッシュを放ってくるか。くそ、なめられてたまるか。
上等や、つぎ、いったる。


グリップ半分、短く持っていたバットをめいっぱい長く持ち直した。

2球目はインローの太ももをかすめそうなコースにきた。

「やられたか?」

難しいコースやったけど、スッと素晴らしくスムーズに体が回った。

「もろた!」

軽いが芯をとらえた感触とコンという乾いた音を残してボールは糸を引いて飛んだ。

慌てて前進してくる左翼手の頭上でボールはもうひと伸びして校庭の隅へ飛んでいった。

あとは平然とベースを一周するだけやった。



やった!打った!!
とはしゃぎそうになったけど、「打って当たり前」というポーズはくずしたらあかん。

ピッチャーの秀才IK君は、片目をつぶって
口まねで「やられた…」

……

しかしまあ、ものの見事に芯を食うたええ当たりやったな。
いつまでも目と手に焼き付いてる、ええ思い出やな。
……


イメージとしては秋のこの曲
Gilbert O`Sullivan
Clair

野球と言えば…
Dodger Stadium
Take me out to the ball game