古く新しい課題「初心者」教育
「紹介者ゼロは6割」の厳しい現実
MLMを事業として始めるにあたって、前回①②でいかに万全な体制・心構えで臨むべきかを見てきたが、いざ開業して必ずぶつかる壁がある。MLMにアレルギーがあったり、MLMを軽視してきた、いわゆる「初心者」をいかに、イッパシのMLM従事者(会員)に育てるか。「この仕事はリクルートが基本」はよく指摘されることだが、実際には6割の会員が紹介者ゼロ、一人の紹介者を出すのに四苦八苦している現実がある。MLM主宰者として悩める初心者をルクルートの壁から解き放つ手段を探し出せるかは古くて新しい課題だ。主宰会社や現場の会員・メンバーの見えざる「実像」を探りながら、初心者教育の現状を追った。
「10人以上」はわずか1%
MLM初心者が何人リクルートしているか、日本のMLM界ではほとんど公表されたことはないが、ある会社がまとめたレポートをもとに「1人の会員が何人をリクルートしたか」を割り出すと、調査対象の20社の会員を「紹介者数0人」と「同1人以上」に分け、さらに取り扱い商品の「消耗品」と「耐久品」に大別すると、紹介実績のある人は20万人で、全体の38%。残りの62%の人は1人も紹介していないという結果だった。
これは会員10人のうち紹介実績がある人は4人、残り6人はビジネス活動をしていない愛用会員ということとなる。
さらに紹介実績のある人が、何人紹介したかを見ると、紹介人数別は1人しか紹介していない人は全体の17%で紹介実績のある38%のほぼ半数。2人、3人と紹介実績が増えるごとに割合は減っていき、10人以上はわずか1%にすぎなかった。
初心者に対する目標設定として、よく「最初に3人を紹介しなさい」という指導をするが、「3人以上」をクリアしたのは、ビジネス登録したメンバー全体の約11%しかいない。
やっとリクルートしたにもかかわらず、そのうちの9割が「3人指導」の段階で脱落していることになる。これはMLM自体の難しさというよりも、ビジネス初心者の指導・育成システムに見直すべき課題があると見たほうが良い。
商品・価格の違いは紹介者数とは「関係ない」
取扱商品の違いは、紹介者を「出せる」「出せない」に関係があるか。ある主力商品が耐久品の会社と、消耗品の会社の会員別に集計した表1の数字を見ると、ほとんど差がないことがわかる。
両者の決定的な差は「価格」である。「高いから売りにくい」「安いから紹介しやすい」と考えがちで、数十万円の耐久品と数万円の消耗品では、紹介者数に大きな違いがあっても不思議ではない。しかし、データは取扱商品の価格と紹介実績に関係がない、という意外ともいえる結果を示している。
伸びる組織、伸びない組織の差は、商品価格ではなく、企業のとる戦略や手法、さらに取扱商品の魅力の差にあるようだ。