海の景色が変わっていく響灘・・・
“鉄の固まり”がおだやかな海に次々と置かれています。海棲動物や海上を悠々と飛び回っている野鳥たちに少しの配慮もなく、北九州市内では貴重な島が見える海域の景色が変わっていくのは、本当に見るに忍びないです。見なれた景色が変わっていくのはある程度仕方ないこともありますが、批判を受けながらも事業を進め、野鳥たちにはやさしくなく、地震や津波に対する安全性もあやしい響灘の洋上風車は仕方ないではすまされません! 海上に建てられていく巨大な風車に正義がないことを明らかにしていかなければなりません!
写真は遠く離れた皿倉山から撮影。手前に2基の風車架台(ジャケット)。左右に長いのは石油備蓄基地、その奥には実証実験中の浮体式2枚羽根洋上風車が見える。(2024年9月13日、日本野鳥の会北九州支部会員撮影)
三重県松坂市の風力発電計画(60基)
事業者からの「質問状への回答書」に対する意見を募集している「まつさか香肌峡環境対策委員会」に、当会から意見を送りました。2024年9月9日付
「三重県松坂蓮ウインドファーム」事業対象地域は、クマタカとイヌワシが生息し、ワシタカ類の渡りルートでもあり、生物多様性重要地域、さらに全域が自然公園となっています。自然に悪影響を与える風力発電事業としては、全国中1位と指摘されています。「まつさか香肌峡環境対策委員会」は建設反対の請願書を市議会に提出。請願は可決され、事業を進められる状況ではありませんが、事業者の「リニューアブルジャパン」は白紙撤回する様子はなく、市長も明確な反対表明はしていません。ただ、三重県知事は事業者の配慮書に対し、「計画中止または抜本的な見直し」の意見書を提出しています。市長が今後如何に対応するのか、注視が必要です。
「風力発電が野鳥に与える影響を考える会北九州」からの意見
福岡県北九州市内における風力発電事業に10年ほど対応してきましたが、事業者は市民や保護団体からの意見、そして環境審査会委員からの意見などを一応聴くだけで、「検討します」「意見として聴いておきます」と軽視され終わりました。これまで対応してきたすべてのアセスで同様でした。事業ありきの事業者は信じるに足りないことを述べておきます。有利な売電価格と企業の利権目的以外、何もありません。事業者からの回答書全体の中から、気付いたことを意見とさせていただきます。
1)事業者が言う「CO2削減のため」「温暖化防止に寄与する」は大義名分として掲げているだけです。目的はあくまでも利権です。しかも、現在のCO2削減策は温暖化防止にはなっていません。
2)事業者は地域住民に賛同をもらえそうにないときは、「地域への還元」という利益の一部供与を持ち出します。還元話にごまかされないように気を付けましょう。
3)事業者の環境アセスにおける調査は不十分なものが多く、アセスに時間と費用をかけたくないためか、過去の文献で済まそうとすることも容認できません。事業者は早く建設工事に着手したいために、「自然環境への影響は小さい」と結論づけます。そう言わないと事業を進められないからです。また「出来得る限りの対策を講じる」とも言いますが、その対策はまったく実効性のない対策です。「たかが鳥のため」(事業者はそう思っているはず)に手間も費用もかけたくないからです。また、机上の計算で鳥の衝突率が極めて低いことを持ち出してきますが、野鳥の行動を十分把握した上での計算とはいえないので、信じてはいけません。環境アセスは事業者の都合のいいように進められるので、本当は第三者機関が行うべきです。
4)風車の低周波音における人への健康被害については、大学の専門研究家にアドバイスをいただければと思います。以上。
三重県では2000年前後から風力発電先進県として山地に風車が建てられ、その後、度重なる故障や土砂崩れ、騒音問題、野鳥の激減など、風力発電問題に警鐘を鳴らしていた熱心な方がいます。この度の松坂の計画を見ても、東北地方で紛糾した事例を見ても、20年以上経っても、事業者の誠意のない態度、自然環境を軽んじる姿勢は変わっていないことがわかります。中国・四国・九州でも風力発電は問題になっていますが、私たちがそれをよく把握していないだけで、国内各地で問題になっている計画や紛糾している計画は山ほどあるようです。翻弄され、孤軍奮闘されている市民団体や保護団体も多いはずです。それらを支援し、問題を共有し、政府に物申す全国的な組織を作ることが求められていると思うのですが、実現は容易ではないでしょうか。