野鳥にもやさしい風力発電であってほしい・・・

私たちが使っている電気、野鳥たちが犠牲になっている!たかが鳥なのか・・・。

風力発電計画の中止相次ぐ~南会津と三重県津市

2023-03-19 09:29:42 | 日記

【貴重な高層湿原とブナの森が広がる福島県会津大沼のケース】

『風力発電計画撤回、南会津町長も要求~事業者の日立造船に』

 報道によれば、南会津町長は、「自然保護や防災、住民生活、観光分野に関わり、地域経済への悪影響も懸念される。計画は認められない」と述べ、事業者の日立造船に白紙撤回を求めていた。町は2019年にも計画を断念をするよう伝えていたという。計画検討エリアには、国指定天然記念物の駒止(こまど)湿原、博士山(はかせやま)鳥獣保護区、舟鼻山(ふなはなやま)周辺には貴重なブナ林が広がっている。

写真上:国指定天然記念物「駒止湿原」標高1100mの高層湿原(引用:南会津町観光物産協会H.Pより)

 自然保護団体からは、「会津山地緑の回廊の分断を引き起こし、イヌワシとクマタカ、渡り鳥のノスリやハチクマなどがバードストライクの恐れがある。さらに、風車建設のために保安林を解除し、森林伐採、土地の改変を行うことは、自然環境保全と防災上で大きな問題がある。」と意見書を提出していた。また、猛禽類保護団体からは、「風車の位置や基数の変更等の小さな対策によって、イヌワシの衝突死を回避すればよいという考え方は適切ではなく、再生可能エネルギー促進のために犠牲にしてよい場所ではない。配慮書の段階で中止すること。」という厳しい意見が提出されていました。

 本風力発電事業は、完成すれば発電出力最大18万3千キロワット(約40基)と日本最大級であったが、2022年8月、日立造船は「会津大沼風力発電事業」について、経産省へ事業の廃止を発表した。

 

【三重県津市青山高原のケース】

~異例の建設途中の事業中止!~

環境アセス手続きが必要でない規模のため、事前の説明がなかったことに近隣住民が計画に反発。事業者は工事中断を余儀なくされた。

 2018年、事業者の住友林業は、津市白山町に所有する私有林と借地の計6ヘクタールを開発して、高さ121mの風車4基を2020年7月に着工した(2022年3月の営業運転開始目標)。2021年10月、住民団体が事業計画の取り止めを求め、抗議文を住友林業に送付。県知事と津市長に反対署名を提出した。事業者は2021年11月に2基目の建設段階で工事を中断し、2022年4月から住民説明会を開くとともに、要望を受けて環境アセスの追加調査をした。

 標高500mほどの山に立つ風車は、景観を壊すことや、風車の発する騒音・低周波音により、健康被害が起こることに加え、風力発電建設が秘密裏に進められたことに周辺住民が強く抗議をした。事業者は2022年11月の自主環境アセスの調査結果を踏まえ、「騒音が想定を超える可能性が高く、環境への影響、事業性を総合的に勘案した」とのことで、事業を取り止めることになった。すでに建設中の2基の風車は撤去する方針という。「騒音による計画中止は珍しい。撤去の方針まで示したのは賢明な判断」と自然保護団体はコメントしている。(「反対する住民の会」の発表より)

【ブログ作成者から一言】                                                     自然環境への影響と人の健康への影響を理由に事業を中止した事例ですが、当該地区の住民の皆さんの問題意識・危機意識の高まりが中止に追い込んだと言えます。風力発電がまだ少なかった20年前に比較すれば、“環境にやさしい風力発電“ も簡単には受け入れられなくなったようです。CO2を出さないクリーンな風力発電のイメージも、悪くなっているかもしれません。今後は人への影響などが少ない洋上風力発電が増えていくことでしょうが、四方海に囲まれた我が国であっても、どこにでも計画できるわけではありません。航路や漁業の邪魔にならないこと、優れた島の景観の邪魔にならないこと、海鳥や魚類、海棲生物に影響を与えないことなど、課題が多いです。誘致する自治体が管理する港湾区域に計画が集中するのも問題です。遠く離れた海上では、生物への影響把握が困難なため、それをいいことに、対策の検討をしない懸念もあります(北九州市沖がそのいい例です)。気が付いたら、魚が少なくなった、海鳥もいなくなったなんてことにならないように、適正な洋上ゾーニングを早めに設定しなければなりません。さらに、計画が妥当かどうかのアセス(問題がある場合は計画を撤回させることができる)の法整備を急がねばなりません。生物多様性・SDGSが “絵に描いた餅” にならないようにです。

 

 

 

 


環境への影響を理由に風力発電計画の中止相次ぐ!

2023-03-17 09:21:55 | 日記

北海道・東北・中部地方で、風力発電計画が昨年(2022年)相次いで中止になっています。自然保護団体からの中止要請に加え、地元の問題意識の高まりが事業者に影響を与えているようです。

【北海道伊達市と千歳市、宮城県川崎町と山形市のケース】

2022年7月29日付、関西電力が発表した「事業の廃止通知書」です。                                 「当社は北海道伊達市・千歳市および宮城県川崎町の2地点において検討を進めてきた陸上風力発電事業について、事業を実施しないこととし、第1種事業の廃止等通知書を提出することとしました。~中略~本事業計画については、地域の皆さまのご意見を踏まえ、計画の見直しを検討した結果、環境への配慮と事業性の両立が難しいと判断したことから、事業を実施しないこととしました。」<計画事業規模>北海道伊達市・千歳市:最大19基 宮城県川崎町・山形市:最大23基

 この計画が自然環境に無配慮だったのは、まずは支笏洞爺国立公園や蔵王国定公園に計画地がかかっていたことです。良好な自然環境・景観を何とも思わない計画に対して、北海道伊達・大滝区の地元住民はこの1年前に計画反対のための団体を設立し、反対署名を集める活動を始めていました。自然保護団体からも、イヌワシ、クマタカ(共に種の保存法指定種)への影響、さらに渡り鳥の飛翔経路にある事。また、工事用道路建設に伴う森林伐採の危険性と国立公園内の景観損傷を訴えていました。北海道環境影響評価審議会においても、計画が国立公園内に含まれていることや、保安林への配慮を欠く点が指摘されていました。

 宮城県川崎町では、蔵王の「御釜」からの眺望など景観への悪影響は避けられず、予定地が国定公園にかかっていたことも含め、県の審査会からも厳しい批判が上がりました。関西電力は国定公園内への建設をあきらめ、風車を23基から19基に削減しましたが、それでも批判を受けたため、さらに削減することにしたが、県の審査会からは、「御釜」から風車が一切見えない配置も求められ、計画は事実上行き詰まりました。地元住民からの反対意見書も、川崎町に寄せられただけでも3700人分に上っていました。地元住民の方は、「関電は僕らが蔵王に対して思っている気持ち自体を勉強していなかったのかなと思いました。」と。

(写真)蔵王国定公園「御釜」(引用:山形県公式観光サイト「やまがたへの旅」より

 このような素晴らしい自然景観に配慮しない風力発電事業って、何なのでしょうか。事業者は初めから反発があることを予想していたでしょうが、予想以上の反発に、計画を発表してわずか2ヵ月で撤回する異例の展開になったようです。費用も手間もかからないうちに、撤回した方が得策と計算したのかもしれません。地元住民の皆さんに心配させるだけさせて、不利となればさっさと引き上げるなんて、SDGを掲げる大企業がすることでしょうか。

 陸上での風力発電事業は、風況のいい山の尾根沿いに計画されることが多いようですが、山中での建設は工事用車両のための道路建設工事において、森林の伐採を伴います。現在多くの計画がある宮城県では、2019年の東日本台風で土砂災害が起きた丸森町をはじめ、計画が実現すればまた土砂災害が起きかねないと住民が反発しているようです。

 宮城県知事は「地元の同意(を求める仕組み)というものが本当はあるべきではないかと思いますね。関電さんがこのような(中止の)申し出をせずに強引に進めようとすれば、進めることはできるんです。そこが法律の欠陥ではないかなと私は思います。」

 県知事の問題提起はまさにそのとおりです。これを一県知事のコメントに留まることなく、風車がすでに稼働中であり、計画がある自治体が足並み揃えて、適正な風力発電事業促進になることを政府に求め、地元住民と事業者、時には自治体相手に紛糾する事態を避けなければなりません。(確かこの国のトップは“国民の声を聞く”と声高に言ってましたね)

 それにしても関電の幹部は「地域の信頼無くしては事業は実施できないと考えた」と、川﨑町の町長に述べたようですが、北海道伊達市・千歳市の計画も合わせて、そもそも地域の信頼を得ることができる計画と思っていたのでしょうか。

 「環境にやさしい自然エネルギー」を謳い文句にする風力発電ですが、住民を翻弄し、自然環境や景観に悪影響を及ぼし、野生生物に犠牲を強いる自然エネルギーって、そんなことだったのかと、またまたあらためて実感です。