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財団日報

月4回が目標です

乳酸

2007-01-22 14:22:38 | Weblog
 1ヶ月に4回どころか、毎日が多忙で3ヶ月間全く更新ができなかった。年が替わったので、時々更新しようと思う。多少時間が出てきたことに加え、ひょっとしてブログの更新や嘘ネタ作りをしなくなったのは、記憶力に続いて思考力も低下しているからではないかと心配になってきた。

 昨日、妻と娘に断られたので仕方なく1人でスキーに行った。南の島で育ち、スキーの経験が乏しい娘は昨年、中学校のスキー遠足で急斜面に置き去りにされたのがトラウマとなり、いまはスキーの話題にも拒否反応を示すようになっている。私は去年2回、おととし1回スキーに行ったが、いずれも娘の付き添いだったため、リフトには1~2回乗っただけ。10代のころのスキーの感覚をなんたなく思い出した程度で終わった。今回のようにまとまった量を滑るのは、高校卒業以来だろう。

 今回、滑ってみると昔よりうまくなっていた。技量がアップしたのではなく、スキーの板が進歩したおかげで、「右に曲がれ右に曲がれ」と念じるだけで曲がれた。22年前ならゲレンデの横にある林に向けて一直線。「止まれ止まれ」と念じても叫んでも止まらない。

 体力の衰えは隠しようもなく、1度コースを降りてくるだけで、階段を1階から3階まで駆け上ったようなハリを太ももとスネに感じた。犬の散歩に換算すると5㌔くらいに相当する疲れか。犬の散歩のさい、前進と、前進を拒む犬を強く引っ張るという意志が必要であるのに対して、スキーは重力が意志の代わりになってくれる(しかも筋肉に結構な負担を強いる)ので、「スキーでみるみるやせる」という方法はアリかもと思った。妻の許しを得たので、筋肉痛の足を引きずってディスカウント店かリサイクル店に行き、「スキー3点セット9800円」を探そうか。

 スキー場に昼ごろついた私は、まずリフトに4~5回乗った。行列待ちとリフトに揺られている5~6分の休み時間以外は足腰を使いっぱなし。さすがに疲れて、スキー場内にある食堂で休むことにした。このスキー場には小中学生のころよく来た。あのころ、空腹にはカレーライスが美味しかった。当時の値段がいくらだったのか憶えていないが、昨日食券の販売機を見たらうどん1杯750円とかカレー900円とかばっかり。一番安い「あげたこやき」370円を頼んだ。

 食事を終えた家族連れが去り、空いたテーブル席についてたこ焼きを食べていると、左前方の窓側のテーブル席に、中学校のころ同級生だった女、Kがいることに気がついた。目がぱっちりしていて、知らない人なら「ああこの人は中年ぶとりする前なら美人だっただろうな」と感じたかもしれない。私は、Kが中学校のころから太っていたことを知っている。これで性格が優しくまじめなら魅力的なのかなとも思った。私の記憶のなかでは、Kは優しくもまじめでもないのだが。

 中学3年のときだったと思う。次の時間のテストに備えて、私や仲のいい同級生たちはみんな懸命に教科書やノートを暗記していた。私のすぐ後ろの席に座っていたKは、試験の範囲の公式やキーワードを鉛筆で机の上に書き写していた。黙ってカンニングするだけならいいのだが、Kはまじめに暗記するのがバカで、要領よくカンニングするほうが頭がいいという意味のことを言って得意になっていた(ような気がする)。それがカチンと来た。カンニングの準備を終えたKが嬉々として教室を離れたあと、私は後ろを向いて、消しゴムでKの机の上をまっさらにした。授業の直前、教室に戻ってきたKは、テストが配られたあとで、カンニングのメモがすっかり消えていることに気がついた。

「ないっ」

 カンニングするのが頭がいい云々を、Kがどのような表現で言ったのか、実はよく憶えていないのだが、慌てたKが私の背後で発した「ないっ」という声はいまでも憶えている。

 友達が教えたのか、Kは私が「犯人」であることに気がついた。教師に聞こえないよう、押し殺した声で「消したのあんだだね。わかってるんだよ。このサル」と言った。私は過去40年間の人生のなかで人並みに悪口を言われてきたが、おそらく「サル」と言われたのはこの1回だけだ。

 私とKは違う高校に行き、その後は何も接点がなかった。

 そして昨日。Kは2人の子供を連れていた。子供が満腹かどうかをしきりに気にする母親になっていた。できればKがどんな男と結婚したのか、いや、どんな男がKを選んだのか見たかったが、それらしい男は周囲にいなかった。子供は小さかったから、晩婚か、結婚してから子供ができるまでしばらく時間がかかったのだろう。昼食を終えた親子はすぐにロッジを出てゲレンデへと戻っていった。

 サングラスをかけていた私は、気がつかれることを恐れずにKをジロジロと見ていた。もっとも、Kはカンニング未遂の1件はもちろんのこと、私の名前すらも忘れているだろう。私が顔をさらしていても、名前を言っても思い出せないはずだが、もしも「あんたの机の上を消しゴムできれいにしたNだよ」と名乗り出れば、人生で2度目に「サル」と言われたかもしれない。

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2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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殺人事件が (おくむら)
2007-01-23 00:21:02
いつも楽しく拝見させていただいております。
推理小説の書き出しのようで、これから殺人事件がおきても可笑しく無さそうな、そんな感じです。
愛憎、カネ、欲望が織り成す人間模様。
その引き金になったのが、「ないっ」なのか「サル」なのか・・・

また楽しみにしております。
(従来どおり週に一回は来てみます)
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Unknown (やゆよ)
2007-01-23 18:32:44
おくむらさん、こんなサイトですが定期的にごらんいただいているとは。恐縮です。物語はこのあと急展開を見せて、戦後の日本経済を支えた男たちの苦闘を描く経済小説になるのかもしれませんよ。
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