シャーカ国の王子のように
家は滅びる
国も滅びる
何十代続いた家も滅びる時が来る
何十代蓄えた富や権威も
何十代重ねた善行も施した恩も
何十代重ねた悪業も買った怨みも その家と血筋に蓄えられる
そしてその家と血筋がその業を負い そして償い尽くす
償い終えて家は滅びるのだ
シャーカ国は滅びた
シャーカ国の王子はその血筋と業を負って
その最後を見届けた
そして往生菩提を遂げた
十代を越えて続いた父方の家も絶えた
十代を越えて続いた母方の家も絶えた
何十代続く家もやがては絶える
何百代続く名家もやがては絶える
何千年続く王朝もいずれは絶える
日本はとっくに滅びていた
日本は何度も滅びていた
我々は日本の幻想を見ていたに過ぎなかった
間もなく滅びようとする自分の肉体に
間もなく滅びようとする自分の魂に
家の血筋と業を負って往生菩提を遂げようとする自分に
何の未練の幻想が 何の来世の幻想があろうか
弥陀の姿も極楽の景色も 何の望みの幻想があろうか
閻魔の姿も地獄の景色も 何の恐れの幻想があろうか
自分はシャーカ国の王子のように
幻想の国の滅びるのを見ながら
肉体の苦痛にあえぎながら 苦しみな死ぬのだ