畠を耕そう
世界は無法なのだ
正義など幻想なのだ
悪魔があってこそ 神が存在しうるように
敵があってこそ 味方が在るのだ
敵が崩壊すれば 次はその味方が敵となる
剣であろうがペンであろうが 力は常に暴力なのだ
強者にとっても弱者にとっても 暴力は常に正義の仮面を付けている
ある者は被害者として涙を流し 哀れみと憐れみを乞い
実は巧みに蓄えを金の指輪に変え より強い暴力の側に紛れ込む
ある者は仮面の正義に殉じ 戦場に野ざらしのまま
名誉な勲章を授与され立派な墓に祀られ 残された家族は恩給の恵みに感謝する
ある者は仮面の正義の正体に気付き 真実を訴え反抗を企て
裏切り者やスパイとして粛正される
ある者は仮面の正義に傅き 愛国と正義の名の下に
暴力の経営に加担し略奪の分け前にあづかり 私腹を肥やす
ある者は真実と現実から目を背けるために より強い酒とクスリにすがり
己の理性を呪い酩酊させ麻痺させる
ある者は我が身の滅びに気付き 一人でも多くの同行をもくろむ
それは 帝国の頂点に立つ独裁者であろうが
浮遊するドローンの直下にいる戦場の一兵卒であろうが
没落した都会のガード下にたむろするホームレスの若者であろうが
従業員の給料支払いや資金繰りの窮した かって羽振りの好かった経営者であろうが
ローン返済に行き詰まった家の 暖かい四人家族の主人であろうが
違いはないのだ
彼らの正義は 正義というより強い暴力によって滅ぼされる
その正義も やがてまた別の正義に滅ぼされる
滅ぼされる者は 悪名と醜い仮面を着せられ
より美しく堅固に 正義という幻想を飾り立てる
正義という幻想に意味はない
せめて私たちは
戦争をやめて 畠を耕そう