何気に出かけた所で、予想もしないものに出くわした時、誰でもおやっと思うと同時に、嬉しくも思う。
今日がそうだった。
巴波川(うずまがわ)の川面に数えきれないくらいの鯉のぼり。
こどもの日が近いから、当然と言ってしまえばそれまで。わずかの川幅に、左右にロープをくわえて、数多くの鯉のぼりくんが群れをなしている。
こいのぼり
屋根より たかい こいのぼり
おおきい まごいは おとうさん
ちいさい ひごいは 子どもたち
おもしろそうに およいでる
作詞 近藤宮子 作曲者不詳
昭和6年12月に「エホンシヤウカ ハルノマキ」に掲載された。
幼稚園向きの唱歌集で「鯉のぼり」の文語体にくらべて、詩曲ともにやさしく、幼い子どもたちに愛唱された。
日本教育音楽協会の協会員から作品を募集した歌で、その時は作者名は公表されなかったようである。この歌を童謡だと思い込んでいる人がけっこういるが、そうではなくこれはれっきとした唱歌だ。
登場するのは「おとうさん」と「子どもたち」だけであって、「おかあさん」がでてこない。当時の男女差別から考えると、ごくありまえの時代だったのだろう。
それに端午の節句は男の子の成長を祝う祭りだということもあるいは起因しているのだろうかと思う。
ゴールデンウィークの一日。
商都をしのぶ巴波川は、江戸への水路だったという。水面からは、これまた大きな本物さんがパクパクといい気になって人間を見ている。
空中と川中に、鯉のオンパレードだ。
「童謡唱歌歌謡曲など(17) ふたつの鯉」