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25/3/24月12;27絶滅危惧種」のウナギ、成長ホルモンや抗生剤などの薬を使わない「無薬養鰻」に取り組む大分県の中小企業

2025-03-24 12:25:42 | 米国株

絶滅危惧種」のウナギ、成長ホルモンや抗生剤などの薬を使わない「無薬養鰻」に取り組む大分県の中小企業25/03/22 13:00圓岡 志麻 様記事抜粋<

世界の中でも、日本人は鰻好きな国民と言えるだろう。平賀源内の名キャッチコピー「土用の丑の日」は、鰻が売れなくなる夏場のための対策だったが、現代では「季節を問わず食べたい」が「高くて手が出にくい」、そんな憧れのメニューだ。

一方で、そんな鰻のハードルを下げている店もある。すき家や吉野家といったファストフード系のチェーンや、「鰻の成瀬」などの専門店だ。これらにより、庶民も気軽に鰻への欲を満たすことができるようになっている。

野生生物としては「絶滅危惧種」
このように気軽に鰻が楽しめるようになったのも養殖技術の発達のおかげで、日本で流通している鰻の99%は養殖もの。しかし実は、養殖だからと言って、いくらでも無限に育てられるというわけではない。【画像】鰻の稚魚「シラスウナギ」、2024年11月に出店した「山田のうなぎ うな骨らーめん 築地本店」、自社工場で出る鰻の骨からスープをとったラーメン、「山田のうなぎ」と「山田のうなぎ 白醤油焼」

養殖鰻とは天然の稚魚(シラスウナギ)を採取し、育成したもの。大きく分けて「アンギラロストラータ(アメリカウナギ)」と「アンギラジャポニカ(ニホンウナギ)」があり、前者は北米や中南米、後者は台湾、中国、日本で稚魚が採取される。

そしていずれも野生生物としては「絶滅危惧種」に指定されており、稚魚の採取量も減少してきているのだ。

また鰻はその生態が特異である点でも、尊重に値する魚だ。どんな生涯を送っているかは近年まで謎に包まれていた。

シラスウナギ
鰻の稚魚であるシラスウナギ。現在流通している養殖鰻はすべて、天然のシラスウナギを採取し育てたものだ(写真:山田水産)
例えば日本で採れるニホンウナギはフィリピンのマリアナ海溝で生まれ、長い旅をして日本にやってくる。幼生の間は海流に乗るため柳の葉のような形をしており、近海に至ると、細長いシラスウナギと呼ばれる状態になる。成長すると川などで過ごし、また産卵の旅に出ていくのだ。産卵場所に至る経路はまだ解明されていない。

命を次世代につなぐために、大変な体験をしているのである。

なお、市場に出ているうち、スーパーなどで安く販売されているのは多くはアメリカウナギ。さらに養殖や加工の場所により、中国産、日本産などがある。スーパーなどで販売されている蒲焼等鰻の加工品については原料原産地(国産or輸入)を表示する義務が食品表示法によって定められている。

産学官連携による「完全養殖」の技術開発

成魚やシラスウナギの採取量は県や地域ごとに定められており、すぐに絶滅してしまうわけではないが、将来にわたり鰻を楽しむためには対策が必要となっている。

そこで、日本では産学官連携により、卵の状態から育てる「人工孵化」と、人工孵化によって育った鰻同士をかけ合わせ、卵から稚魚まで育てる「完全養殖」の技術開発が進められてきた。

実用化に向けてはさまざまな課題があるが、中でも難しいのが、卵からかえった「仔魚」からシラスウナギに育てる過程だ。ほとんどが途中で死んでしまい、原因も解明できなかったのだ。

しかしその状況にも少し光がさしてきた。2024年7月、水産庁はこれまでの研究成果を発表。その中には、餌の種類等、仔魚の生存率を上げる有効な手段も含まれる。2050年までに、アンギラジャポニカ等の養殖に使われるシラスウナギを人工孵化率100%にすることを目標とした。

実用化へのさらなる課題はコストダウンだ。現時点では人工孵化のシラスウナギにかかるコストを1尾あたり1800円程度と見積もる。2016年時点で4万円以上だったところ、天然シラスウナギの仕入れ価格(約180〜600円)と近づいてきている。

山田水産の成果、業界初めての無薬養鰻

今回、2022年から国の研究に参画してきた大分県の山田水産に、その役割や狙いを聞いた。同社は2018年より国からの依頼でシラスウナギの育成に携わり、2020年から独自に人工孵化・完全養殖の研究を開始

山田水産は2020年から水産庁とともに人工孵化、完全養殖を研究。鹿児島県志布志市に抱える養鰻場(写真)と宮崎県串間市の研究所で人工孵化の鰻を育成している

「鰻の稚魚の問題は長らく解決されないままでいる。取り組もうと思ったのは養鰻業者としての使命感。そして、大企業ができないことに、中小企業こそが挑戦しなければと考えた」(山田水産代表取締役の山田信太郎氏)

同社は1973年に鮮魚運搬の企業として設立。その後ししゃもなどの鮮魚加工を事業とし、1997年から養鰻業に参入した。大きな特徴が、成長ホルモンや抗生剤などの薬を使わない「無薬養鰻」と、その鰻を自社で加工して販売する、自社一貫体制だ。グループ会社も含め、約1000トンの鰻を生産している。

とくに無薬養鰻は、業界で初めての成果。挑戦の理由は「おいしさの追求」だという。

「なるべく薬品を使わず、自然に近い状態で育てたものが求められる時代になるというのは、養殖をスタートした当時から考えていたこと。そして鰻は病気になると餌を食べなくなる。そして、餌を食べない期間があればあるほど、品質が下がってしまう。薬をやらないというのは、簡単に言えば病気にしないということだ。健康な鰻を育てるにはどうしたらよいか、それが始まりだった」(山田氏)

新規参入であり、いわば「素人」だったため、同業他社からは「成功するわけがない」と見られていた。

そして実際、苦労も並大抵ではなかった。養鰻場に住み込み、24時間体制で管理していても半分近くが死んでしまう。数億円の損失が出たという。

取締役であり、鰻を育てる「鰻師」の加藤尚武氏は次のように話す。

「鰻はしゃべれないので、体調を食べ方、泳ぎ方、池のにおいなどのサインから読み取らなければならない。感じ取れるようになるまで、トライアンドエラーを繰り返した。今も生活の中に鰻がいる感じだ。冗談でよく、『鰻のサインはキャッチできるが家族のは……』などと言っている(笑)」(加藤氏)

同氏によれば、病気の原因は食べ過ぎとストレス。人間と同じだ。養殖では早く成長させようと、餌をやり過ぎてしまう。それが病気につながるのだ。

加藤氏は山田氏の大学ラグビーの先輩。大学卒業後、新事業の養鰻のために入社した。同業他社で修行し、養鰻を一から学んだという。

「今考えると、素人だったからこそ、薬をやめることにも抵抗を感じなかった。また素人だから、うまくいかないときも、同業他社のプロに意見を聞きに行くことができた」(加藤氏)

山田氏も振り返る。

「技術とか特別な何かがあるわけではなく、真剣に取り組んだ結果だと考えている。また無薬養鰻を始めた先代が、数億円の損失が出ても諦めず現場に任せたことも、成功につながった」(山田氏)

「安心して鰻が食べられる未来、日本の食文化を守る」

国とともに進めている人工孵化、完全養殖も、無薬養鰻に続く第2の挑戦として、同じ情熱をもって取り組んでいる。人工孵化には民間養鰻業者で初めて成功。オスとメスを人為的に性成熟させ、人工授精、産卵、孵化、育てて蒲焼にするまでの過程が実現した。

そして仔魚の生存率を上げる餌の種類、餌のやり方も明らかになってきている。あとは商業化を目指し、生存率のさらなる向上や、コストを下げることなどが課題だ。

人工孵化やその先の完全養殖が成功するとどうなるのか。

「『鰻が安くなる』とはわかりやすくキャッチーなのでよく言われるが、それが正解なのかは疑問だ。長年の研究費やランニングコストは簡単に試算できるようなものではない。それよりは、安心して鰻が食べられる未来、日本の食文化を守ること、それを目標にしたい」(山田氏)

おいしい鰻を誰もが気軽に食べられるようになるのはうれしい。しかし、だからと言って毎日食べたいかというと、それも疑問だ。改まった会食、頑張った日のぜいたくなランチなど、ちょっと手の出にくい魅力的な食事。生態に謎が多く、ミステリアスな鰻には、そんな地位がふさわしい気がする。

山田水産の新たな挑戦「うな骨らーめん」

さて、同社の新たな挑戦は食品ロス対策だ。自社工場で出る鰻の骨からスープをとったラーメンを開発、2024年11月、東京・築地に「山田のうなぎ うな骨らーめん 築地本店」を出店した

「串打ち3年、裂き8年、焼き一生」と言われる鰻の調理だが、同社では工場で完全自動化することにより、蒲焼の大量生産を可能とした。裂いて蒸した後、炭火による焼きとタレつけを4回繰り返したのち、急速冷凍して全国に出荷している。

同店では、うな骨らーめんのほか、その自慢の鰻によるメニューを提供する。おすすめは、ラーメンと「うなぎ飯」の両方が楽しめる「山田のうな骨らーめん・小うなぎ飯セット」(2800円)だ。一押しの「山田のうな骨らーめん・小うなぎ飯セット」(2800円)。ラーメンと鰻、そしてご飯と鰻、双方のハーモニーが楽しめる。スープは豚骨のように濃厚だが、香りは鰻で、後口もさっぱりしている(撮影:大澤誠)「山田のうなぎ」と「山田のうなぎ 白醤油焼」(いずれも3000円)。弾力があり、旨みとともに力強さを感じさせる。一般の白焼は脂っこい印象があるが、「白醤油」を使ってあるためか、さっぱりとしている。名脇役の山椒は和歌山産のものを使用。香りが高く、ラーメンとの相性もよい(撮影:大澤誠)

「鰻屋というとちょっとハードルが高いが、ラーメン屋なら若い人も、外国人も入りやすい。ラーメンをきっかけに、江戸時代から続く食文化を好きになってくれれば」(山田氏)

「無薬で育てた、山田の鰻」にこだわって開発。余計なものを食べていないから、骨も健康だ。飲み干せるぐらいおいしくて、塩分にも配慮したスープとしている。麺を食べて、残ったスープをうなぎ飯にかけて食べてもよい。豚骨に似た濃厚なスープだがしつこくない。スープに浸ったやわらかい鰻をご飯と一緒に頬張ると、ジャンキーなような、上品なような、不思議なぜいたくさだ。添えられた大葉がさっぱりとさせてくれる。

鰻の新たな可能性を示すうな骨らーめん。どこまで広げられるかが、同社のこれからの挑戦になるのだろう

 


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