MAio-108

素材(木、鉄、銅、陶、ガラス)の表情を生かしたものづくりをする日々

再度錆について

2010年04月13日 | Weblog
どういうわけか、此処のところ、錆の話が、多い。
良い錆ふかせてください。
反対に、錆ふかせないように。
まるきり反対の話し。

鉄は、錆ます。言うまでもないが、鉄は、空気中の酸素と結合して、酸化します。
最初の内は、いわゆる赤錆、完全に酸化していない状態です。
これを上手く、徐々に酸化させたり、一気に薬品などで酸化さたりすると、黒い安定錆に、変わります。
こうなると、傷つかない限り、空気中では、錆びにくくなります。
いわゆる黒錆です。
普通の状態であれば、赤錆が吹き始め、環境にもよりますが、その下に、黒錆が形成されます。一見赤い錆のように見えますが、その下に、黒錆が出来上がると、もう錆は進行しなくなります。
但し、風に、砂やごみが巻かれ手吹きつけたり、日に晒されて、鉄が温度を上げたりすると、表面の、黒錆が痛み、そこから、また赤錆が進行します。

ですから、錆びさせないようにするには、空気との接触をしないようにすればよいのです。


その、第一は、塗装です。

塗装も、下地と、上塗りが有ります。

下地を(通常エポキシを使うことが多い)2回くらい塗り、上塗り1回くらいでも、
傷をつけない限り、なかなか錆びにくいものです。

但し、取り付けの時に、落下や、取り付け面のゆがみ、などで、無理に本体の鉄を曲げたり
伸ばしたりすると、溶接部分や、傷ついたところの、塗膜が痛みますので、そこから錆始めることが、多いものです。
また、塗膜は、自然に置いて置いても劣化します。
風に晒されたり、雨に降られたり(最近酸性雨ですから)環境によって、変化の度合いが
著しく、違います、完全に最初と同じような状態を維持するとしたら、それこそ毎年、あるいは、2、3年に1度、上塗りをかけなければいけません。
代々木体育館や、東京タワーも5年に一度、下地から塗りなおします。
ただ、造形物の場合、(後述しますが)錆は別の意味をも持ちます。

また、亜鉛メッキという方法もあります、鉄を、酸洗いしたのち、高熱で溶かした、亜鉛の中に漬け込むのです、これは、細かい部分の無い、単なる、角材や、丸の鋼材の場合かなり強力ですので有効です。
但し、何か所も、細かく溶接したものや、きっちりした形に組み上げたものは、亜鉛の熱の為に、はなはだしいゆがみが生じ、結果として、曲げ戻したり、ゆがみの矯正の時に、力を加えますので、目に見えないメッキの傷が生じ、その上に最終塗装をしたときに、傷の部分は、1回塗りと同じ効果きりでない場合が多いのです。
亜鉛メッキは、錆びに対しては大変強力なものですが、難点は、塗装が乗りにくく、剥がれやすいということも、考慮芯なければいけないかもしれません。

いずれにせよ、塗膜の厚みが、錆を左右すると言えます。
予算の問題などで下地の塗り回数が少ない時は、なるべく早めに、塗り重ねの機械を設けた方が良いと思われます。

しかしながら、錆、反対にきれいだという方も、最近多くなって来ています。
「わびさび」という言葉が有ります。
日本人の心、感性の良さを表わす言葉です。

私も、オブジェなどは、錆の風化した表情の、美しさは、造形の一部として、出来る限り、取り入れ、鉄の自然のはだの、美しさは、出来たら、みんなに楽しんでもらいたいと、思うようになりました。
それは時間の移り変わり、物事の移ろいを表現するものです。

木などと違い、木目が有るわけでもない、鉄の肌は、むしろ錆びてこそ、美しさがでてくるように、思うという意見も、最近では多くなり、いかにうまく錆びさせるかがカギになります。
ヨーロッパの古い門扉や、道具達、最初は塗装してあったものが、風化し、さらに塗装が肌を際立たせ、また風化し、塗装した物の美しさは、得も言われません。

鉄をあえて錆びさせる場合、酸を使って、最初に強力に錆びさせます、この時気をつけなければいけないのは、いきなり強めに、錆びさせると、まえにも書いたとおり、赤錆の下に、黒錆が一気に出来上がり、それ以上進行しにくくなり、折角錆びさせたつもりが、錆を保護した状態になってしまします。ですから、錆びさせるといっても、2カ月も3ヶ月も掛け、ゆっくり、進行させなければなりません。

前記した、塗装をして錆ないようにすると言っても、2,3年置きに上塗りを、続けない限り、不可能です。
むしろ、多少錆びた状態を、少しだけ維持し、鉄の肌が、あれてきてから、再度、上塗りをかける、などすると、鉄の雰囲気は、さらに上がります。

もし、まったく錆びさせたくないのなら、鉄を使うべきではなく。ステンレスを使った方が良いと思われますが、鉄の雰囲気には、なりませんし、費用も数倍になります。

あるいは、プラスチックを使うしかありません。プラスチックにしてもいずれは、紫外線でひび割れを起こし、見るも無残な姿になってしまします。

錆びさせないといい、錆びさせるといい。どちらの場合も、時間をかけ手を掛け、費用をかけ、ということになります。




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