空き家ができる理由は住む人がいなくなるからだ。
移住政策を進める担当者も、移住者はごめんだよという老婆も、自分の子や孫は都会に出て家を買い仕事をして田舎へ戻るのは年に数回というのがよくあるケースだ。
こんな田舎には住めない、仕事もコンビニも信号機さえないじゃないか、寒いし暑いしヘビやムカデや猪や鹿は出るし、何の楽しみもないし、子どもの教育にもよくないと思う、そんなことを言う息子や娘に地域に住むこと決心させる有効な言葉をかけていないのは確かだろう。
鹿に激突された私の軽四。
移住者は地域のコミュニティを壊すので断固不要で反対だ。
冠婚葬祭のしきたりを守らない、神社の年4回の祭りに参加しない、ことごとく地域のやり方に反対する、地域の会費を払わない、何の仕事をしているかわからない、と多くの批判的な意見をよく聞く。
一方で行政は、空き家登録をすすめ、体験移住をセットし、移住者確保に力を入れている。不動産会社も山と畑と宅地を破格の値段で売り出している。
両者はお互いの意思の疎通はほぼないない、と地域の方に聞いた。
この地では中学校は人数激減のため統合された。小学校もあと数年でそうなるらしい。
誰もいなくなったら議論も終わるかもね、と九州から移住してきたMさんが言った。
回覧板を持ってくる隣人は、キョロキョロと辺りを見回し人がいないのを確かめると小走りにやって来て無言で放り投げるように押し付けた。
Kさん夫婦と会話をしているところを誰かに見られたくない様子だった。
どんなに誘ってもお茶も飲みに来ないし、庭で近所の方とバーベキューはとうとう実現しなかった。
周囲のねたみ、ひがみ、そねみ、他者を受け入れないけど興味津々、よそよそしい態度は変わることなく、Kさん夫婦に打つ手は無くなった。