every word is just a cliche

聴いた音とか観た映画についての雑文です。
全部決まりきった常套句。

ジェフ・ミルズ 望郷編

2010-05-07 | Detroit
2006年より宇宙へと旅立っていた彼が、その遊泳中に起こった出来事をレポートするというコンセプトのもと制作された6年ぶりのミックスCD。

レーベルからのアナウンスを要約するとこうなるだろうか。

しかし、『The Occurrence』は『The Exhibitionist』のようなクラブ・プレイを凝縮させたような所謂ミックスCDと捉えると肩透かしをくらうだろう。




それまでのJeffの活動の集大成として捉えるならば『Mix-Up Vol.2』に近いともいえるが、『The Occurrence』から奏でられる音楽は『One Man Spacechip』、『Contact Special』、『Sleep Wakes』から続くもので、一枚のコンセプト・アルバムという意味では『X-102』、『X-103』に近いといえるかもしれない(因みにX-102はこの夏のメタモルフォーゼにまさかの来日が決定している)。


『The Occurrence』のサウンドは前述のアルバムでも聴こえた旋律とリズムが有機的に絡まっていくスタイルのミニマルで、静けさと激しさが同居しているような(そういう意味で宇宙的な)サウンドだ。

テクノやハウスの文脈で言うミニマルはミニマルといってもライヒやテリー・ライリーのそれとは乖離があるわけだが、ここ何作かのJeffの作風はむしろサージオンやベーシックチャンネルよりもそちら側へ目が向いているかのようだ。
オーケストラとの競演を果たした『Blue Potential』やMorizoとCarlの共演など、このところクラシックへのアプローチに目を見張るものが多いけれど、このところのJeffの作風もその一環として捉えることも出来るかもしれない。

『The Occurrence』のもうひとつの話題は手塚治虫の傑作『火の鳥 望郷編』のカットがスリーブ・アートに引用されていることだろう。


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地球に帰還するという話は別に『火の鳥 望郷編』に限った話ではないので、わざわざこのカットを引用することに意味があるに決まっている。

引用されているカットに描かれている宇宙船は地球連絡員牧村のロケットだが、物語はエデン17というユートピアが女王と共に失われていく悲しい物語だ。

このカットの引用によってJEFFは何を語りたかったのだろうか?
"宇宙遊泳中に出会ったアクシデントの記憶"というストーリーを踏まえると、Jeffは地球連絡員=牧村と出会ったのだろうか?
(* 思ったけど、宇宙編で出てくる


因みに初回盤は世界初のヴァイナルCD(CDの裏面に溝が掘られていて、レコードとなっている)。
デジタル・ファイルではなく、ましてやコピーでもなくCDアルバムを購入させる動機としては優れていると思ったが、それ以上の意味は見出せなかった。
ヴァイナル・サイドの音悪いしなぁ。

あと、iPodで聴くためにPCのディスク・ドライヴに入れたらカタカタ音がしたので怖くなってやめました。
データはデータで買ったほうがいいのかなぁ?

ジェフ・ミルズ 『アカーランス(初回限定盤) [Limited Edition]』

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