8
それでも時折、しごく興奮して浮かれ騒いでいる気分にあるとき、
不可思議な痛みが、貴公子ハロルドの額にちらつくのだった。
あたかも、互いに殺しあうような深い恨みや、
叶わなかった情熱の思い出が、潜んでいるかのように。
しかし、誰もそのことを知らなかったし、知ろうともしなかった。
というのは、彼の魂は、悲しみを口に出すことで癒されるような、
素直で、無邪気な魂ではなかったからである。
また、彼は相談や、慰めのために友を求めることもなかった。
抑えがたい、悲しみがどのようなものであったとしても。
*********
原典とその註は以下のとおり
Yet oft-times in his maddest mirthful mood
Strange pangs would flash along Childe Harold’s brow;
As if the memory of some deadly feud
Or disappointed passion lurk’d below.
But this none knew, nor haply car’d to know;
For his was not that open, artless soul
That feels relief by bidding sorrow flow,
Nor sought he friend to counsel or condole,
Whate’er this grief mote be, which he could not control.
(註)
oft-times <often times = often:「しばしば、時々」
pang(s):「激痛、心の苦しみ、心痛、苦悶」
deadly:「致命的な、互いに殺しあう、和解の余地のない」
feud:「不和、確執、宿根、反目」
lurk:「潜む、待ち伏せする」
mote = may:「たとえ~であろうと」
それでも時折、しごく興奮して浮かれ騒いでいる気分にあるとき、
不可思議な痛みが、貴公子ハロルドの額にちらつくのだった。
あたかも、互いに殺しあうような深い恨みや、
叶わなかった情熱の思い出が、潜んでいるかのように。
しかし、誰もそのことを知らなかったし、知ろうともしなかった。
というのは、彼の魂は、悲しみを口に出すことで癒されるような、
素直で、無邪気な魂ではなかったからである。
また、彼は相談や、慰めのために友を求めることもなかった。
抑えがたい、悲しみがどのようなものであったとしても。
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原典とその註は以下のとおり
Yet oft-times in his maddest mirthful mood
Strange pangs would flash along Childe Harold’s brow;
As if the memory of some deadly feud
Or disappointed passion lurk’d below.
But this none knew, nor haply car’d to know;
For his was not that open, artless soul
That feels relief by bidding sorrow flow,
Nor sought he friend to counsel or condole,
Whate’er this grief mote be, which he could not control.
(註)
oft-times <often times = often:「しばしば、時々」
pang(s):「激痛、心の苦しみ、心痛、苦悶」
deadly:「致命的な、互いに殺しあう、和解の余地のない」
feud:「不和、確執、宿根、反目」
lurk:「潜む、待ち伏せする」
mote = may:「たとえ~であろうと」