車止めピロー:旧館

  理阿弥の 題詠blog投稿 および 選歌・鑑賞など

完走された方々の「勝手に代表作」 2/3

2009年12月19日 | 八首選 - 題詠2009
中盤の60人。


天鈿女聖さん         夕焼けに世界が全部飲み込まれなくなるようにできている午後
佐藤羽美さん         コンビニの蒸され過ぎたる饅頭を(午後はとっくに倦んでいる)割る
詩月めぐさん         よっちゃんとロンドン橋を歌ったら地下道だって怖くなかった
ぽたぽんさん         「もう既にタカシはいないものとして暮らせている」とうわずった声
萱野芙蓉さん         ささがねの蜘蛛の縁者である母の子なればわれに触るるなをのこ
ウクレレさん         北野坂しろいパラソルのぼりゆく右手は誰のために空いてる
原田 町さん         てっぺんがまだ閉じてない嬰児のひよめきに触る真幸くあれと
じゃみぃさん         小船乗り進水式のアルバイトゆらり揺られて油をすくう
Re:さん         折り紙の王冠頭に乗せた後きみを助けに乗り込む予定
間遠 浪さん         戻られたし昨夕戻られたし昭和 わたしは少女でありましたとさ
斗南まことさん         どうしても決められなくて初夏(はつなつ)の源平ウツギは風に揺られる
こすぎさん         君がいた布団の中にひだまりが隠れて 虎落笛 遠ざかる
酒井景二朗さん         悲しみの殘りは風に任せようと給水塔のてつぺんに立つ
振戸りくさん         砂浜を固めてとった右足の鋳型に海がそそがれている
虫武一俊さん         なんだっておれには広すぎて困る職歴欄とか街とか あと親
ちょろ玉さん         言い訳はしなくていいよ 好きだからあたしの鉛筆とったんでしょう
あみーさん         俺の気も知らず陽気な春の午後 川が美しくて飛び込みたい
おっ さん         縁側に誰も座りはしないのに全力で咲く母の向日葵
こゆりさん         待つ人があるふりをして買う秋刀魚そろそろ夜が寒くなります
蓮野 唯 さん         幕の内弁当にある練りわさび切なく待つ身の哀しみに似て
扱丈博さん         ルーベンスの絵画のようなUターン・ラッシュ・イマージュ・コラージュ全図
石畑由紀子さん         夜明けごと少女に戻る祖母の手を握るとりどりの名で呼ばれながら
春待さん         蛞蝓(なめくじ)に塩撒きながらホームレス蝸牛(かたつむり)に見え止まる指先
だやさん         向日葵の畑で君が絞めている首の中にも幾本の管
本田鈴雨さん         おのづから殻を破りて誕生すくちばしもてるもののあはれは
空山くも太郎さん         ゆっくりと歩いていこう 今僕ら坂の途中だって気づかぬぐらい
市川周さん         警備員照らす理科室ともだちがいるってどんな気分だろうか
都さん         午後一でお伺いいたしますと言う 落ち葉を踏んで今日も天気だ
わだたかしさん         落ち込んだ帰り道には転がれるくらいの坂があればいいのに
祢莉さん         煮くずれたりんごのようにめそめそとしてたい雨の木曜日には
睡蓮。 さん         今年また冬至が来るね思い出は一番長い夜に始まる
櫻井ひなたさん         大縄へ飛び込むように覚悟なら7月2日のあたしはしてた
只野ハルさん         中空の茎持つ植物茂るところフルートの故郷ならん
月下燕さん         雨のなか一度交わした口づけが冷たかったことフルートを吹く
都季さん         コカ・コーラの王冠はまだ宝物 王様にはもうなれないけれど
珠弾さん         四角(コーナー)先頭そのままそのままあ あらんかぎりの あらんかぎりを
キヨさん         浮気とか勝手にドラクエ進めたりとかしてないか今から調べる
磯野カヅオさん         オクターブ差のある声で「靴が鳴る」交互に歌ふ肩車かな
遥遥さん         早送りされる社会の中にいて花が散るのは春の夜の風
吉里さん         一日の朝の時間のひと時がキラキラすれば勝つ予感する
夢雪さん         夕焼けに染まった空に赤い羽根散り散りになる紅蓮の天使
富田林薫さん         坂の途中あるいは空を見上げたかった俯き加減の角度をかえる
暮夜 宴さん         藤棚のしたに零れたひかりだけあつめてあそぶ春のてのひら
青野ことりさん         いまごろはどこを旅しているのだろう 柔らかかったわたくしの肩
soraさん         竹林の日照雨(さばえ)の中に立ちてみるふと逢えさうな気がする午後は
Ni-Cdさん         寝台にマイナスふたつイコールにならないことはひしひしと 夜
駒沢直さん         いまはもう君の葬式出なくてもいいやと思う 一人梨剥く
久哲さん         手を繋ぐことで失う どの空もこんなに広いことがおかしい
桑原憂太郎さん         ひだまりの校庭に集ふ学級で生き抜くためにみんなでジャンプ
美木さん         この場所は縄文時代は海だった いつも不安は足元から来る
しおりさん         花飾り 編んで遊んだ思い出はしろつめくさの香りの中に
キャサリンさん         透明な羽たまわれば直ぐに発ち貴方の頬をじゃりじゃりなぜたい
七五三ひな         美容室鏡の中の吾に告ぐ「これより断髪式始めます」
寺田ゆたかさん         その角を曲がればわが家 庭の花世話するひとを幻に見る
南 葦太さん         眠れずに君が涙で悲しみを加水分解している夜更け
ことりさん         コンビニはさびしき魚礁仄白く発光すればウミユリが揺れる
葉月きららさん         坂道も立ちこぎをして登ってゆく早く会いたい会いたい君に
橘 みちよさん         病院よりもどり来てたつたそがれの踏切いまし遮断機おりく
さとさん         編んだ私も似合うかと尋ねて巻いたあなたも無敵でしたよね
村上はじめさん         目の前を尻尾の黒い猫が行くきっと笑顔だ足取り軽く