イカさちジャーナル DX

さちことやわらかイカの周りの狭い世界のおはなし

夏の匂い

2006年05月23日 22時18分50秒 | さちこ
今日は暑かった

暑いのにくしゃみは出るわ、鼻水は出るわ・・・
湿度は高いし、顔にぺたりと貼り付いた髪の毛がムズムズ痒い

おまけに蚊にも刺された

・・・イライラ(=_=)


会社帰り、いつものスーパーでしこたま買い込んだレジ袋はパンパン
私の足もむくんでパンパンだ

一歩・・・
この一歩が、重い


一歩・・・二歩・・・
くそう・・・重いなあ

全く・・・
・・・イライラ(=_=)



その時ふいに、鼻の先を夏の匂いがかすめた

かすれたような匂い
だけど優しい、セピア色の懐かしい匂い


蚊取り線香だった

近所の庭先に、小さな三輪車や砂遊びのスコップが散らかっていた
そこで優しく煙をはいている渦巻き模様

子供が蚊に刺されないように、楽しく遊べるように、
家の人が置いたのだろう

細い煙が、ゆらり・・・ゆらりと揺れている

ゆらり・・・ゆらり・・・

煙をぼんやり見ていると、なんだか時間がやけにゆっくりに感じた

周りは真っ白で、そこに私と蚊取り線香だけがぽっかりと浮かんでいるみたいだ


ゆらり・・・ゆらり・・・

渦巻きの先っぽの白い部分が、だんだん長くなっていって
突然おじぎをするように皿の上に落ちた

・・・ポトンッ




ハッ!となった

頭の中で何かがぱちんと弾けたように、私は思い出した

私の夏にも、いつもこの匂いがあった


怒られながら夏休みの宿題をやらされた朝も、
ビニールプールで夢中で遊んだ暑い昼も、
スイカを食べ過ぎてお腹をこわした夜も、

いつも私、蚊取り線香焚いてもらってた

懐かしい、優しい夏の匂い
匂いと一緒に、私の中に大事にしまいこんでいた、家族の優しい思い




重いスーパーの袋を抱えて、アパートの階段を昇る

今年は蚊取り線香焚こうかな

さっきより少しだけ軽くなった心で、そんなこと考えた