最近、新しい山へ行っていないなと思い始めていた。2回目、3回目となる山が多い。
良く知った山なら下調べもなくサッと行って帰ってこれるし、単独行かつトレーニング目的で行くことが多いのが理由。
9月後半になって都内も随分涼しいので、標高の高いエリアだとテン泊もツラそう。
少しでも標高の低い中央アルプスなら、そんなに寒くないだろうし、どうせ行くなら縦走が良いと思う。
そんな独り言から、空木岳を起点に木曽駒ヶ岳まで行って、頂上山荘にテン泊して翌日に下山する計画を実行することにした。
実行日は、2020年9月26日の土曜日。
駒ヶ根へのアプローチは、中央高速バス。バスタ新宿を18:35に出発、駒ヶ根バスターミナルに到着したのは、22時20分頃になった。
バスを下車した後は呼んでいたタクシーに乗って、駒ヶ根高原スキー場登山口に到着したのは、22:40頃になった。
あたりは真っ暗でヘッ電がないと何も見えない。
タクシーの運ちゃんから、3週間前にクマが出たのに怖くないのか?と質問されるも、う~ん怖いですねwと普通に答えるしかない。
タクシーを降りたすぐヨコが駒ヶ根スキー場の登山道入口だ。タクシーが去った後は、漆黒の闇に包まれ、ヘッ電が唯一の光源となる。
熊鈴をリンリン鳴らしながら高度を上げていく。
暗闇の中なので、ヘッ電の照射範囲しか目視できないが、白樺の樹林帯は良い雰囲気。
池山尾根水場に到着後、1L水筒に水を補給する。ザックの中には、ハイドレに1.5L程度水を入れているので、水は合計2.5Lという状態。
稜線に上がると水場が限られるので、多めに持ち歩くことにする。
順調に高度を上げ、03:30頃に到着した空木岳避難小屋で出発間際の若者に中で仮眠できるか聞いたところ、宿泊客は多いが起床し始めている人もいるので大丈夫と思いますとのこと。
出立の準備でガサゴソする中だと流石に寝られんだろうと思い、お礼を言ってすぐに出発した。
真っ暗なのでカールを実感することなく通過し、空木岳の山頂に到着したのは、04:30頃になった。
頂上は、風が強く、防寒テムレスをしていても指先が少しジンジンする。岩陰の水たまりは、凍っているが、寒さは日の出までの辛抱だろうと、写真を撮って次のピークである東川岳を目指す。
空がだんだん明るくなり、進行方向に宝剣岳の頭が見えてくる。とりあえずの目標地点を目視したものの、この後から岩場が続き、スピードを全く上げられなくなる。
足を滑らせたら5mは滑落するような絶妙な?段差が随所に出てくる。
目印のペンキが有ったり無かったりで、どっちへ行ったら良いのか迷う。
ハイマツのすぐ横がタマヒュンの崖だったりするので、気持ちも焦る。登ったら下降させられるの繰り返しで、地味に体力を使う。
岩場注意は分かってはいたけど、ここまで厄介な岩場は想定しておらず、眼下に木曽殿山荘が見えてホッとする。
木曽殿山荘到着後は、西側斜面下の義仲の力水で給水アゲイン。太さで言うと鉛筆2~3本分くらいの水量。冷たくて美味しい。
山荘から水場まで往復16、17分くらいの距離だったと思う。
山荘に戻り、パンとサラミの朝食をとる。
黒テムレス、レイン上着をザックにしまって、次の頂きを目指す。
大きく登って、小さく下がり、小さく登って、大きく下がる。途中は、相変わらず段差の大きい岩場が連続する。ヨコは短いが、タテ(累積標高)が長いのが中央アルプスの特徴である事を身を持って体験する。
テン泊装備と過剰なまでに用意した防寒グッズ、火器一式、2日分の全身着替えの重量は、食料を含めるとざっくり13kgあった。水2Lとしても、合計で15kgの装備は重い。
久しぶりのテン泊ゆえに、軽量化を完全無視したことを大後悔するも、前に進むしかない。
唯一のご褒美は、延々と続く稜線とマーベラスな景色。冷たい風も心地よい。
檜尾岳に到着すると、TJARの選手と遭遇。声を掛けて握手してもらう。
色々とお話しを伺い、中央アルプスにはトレーニング目的で相当通っておられるようで、自分との経験値、体力の違いを痛感する。
それと、水分補給と行動食の少なさにはびっくりした。渇きと飢えに対する耐性を身に付けて、軽量化も図っていることが良く分かった。
荷物もコンパクトだし、何もかもが大違い。百聞は一見にしかずで、リアルTJAR選手と出会えた幸運に感謝する。
途中で摂取したカフェイン入りのショッツがかなり効いていて、眠気はゼロ。眠たければ檜尾避難小屋で仮眠を取ろうと思っていたが、避難小屋もパスして宝剣岳を目指して出発する。
西に見える三ノ沢岳のエッジの効いた稜線が迫力満点ではあるが、アップダウンは続く。
千畳敷への分岐点で身支度するカップルにどちらへ行くか聞いたところ、宝剣行きます!と気持ちの良い返事が返ってきた。
破線ルートの宝剣は初めてなので、少しビビりながら極楽平に到着。縦走路ラストの岩場となる宝剣岳山頂へアプローチを開始する。
遠目にみると随分と鋭角な登りに見えるが、鎖、金具、岩場とホールドは沢山。天狗の評定(妙義山)とクレイジーマウンテンを経験してるからか、トリッキーさは感じない。
とは言え、高度感はバッチリ。鎖場渋滞も頻発するので、のんびりと登る。
山頂直下の岩くぐりを抜けて宝剣山頂に到着したのは、12:30頃になった。
宝剣山頂を降りた後は、中岳へ。そして、13:10頃に頂上山荘に到着する。
ここで予定通りテン泊するか、このままのペースで下山するか逡巡する。
木曽駒ヶ岳まで行ってしまうと2日目のハイライトはなし。下山するのみ。夜は寒いだろうし、眠気はゼロだし、体力も大丈夫そうなので、下山決定!
仲間に下山する旨の業務連絡を行った後、木曽駒ヶ岳を経由して、予定していた福島Bコースの下山路を行く。
玉乃窪山荘の手前あたりから、空からゴロゴロと音がして、大粒の雨が降り始める。
レインを着て進軍を続けていると、雨は雹に早変わり。BB弾の大きさの雹がバラバラと降ってくるし、空のゴロゴロドーンも酷い。
稜線から標高を下げれば大丈夫だろうと判断し、バラバラと雹の降りしきる中、ノンストップで下山を続ける。
八合目あたりで雨はやんだものの、岩場は超絶スリッピーな状態に。2、3回は岩の上で大ゴケしたと思う。
ケガする程ではなく、尻餅程度ではあったが、ザックが良いクッションになってくれた。
七合目避難小屋に到着したのは、15:20頃だが、この頃から幻覚が始まる。
大きな岩が小屋に見えるし、朽ち果てた木が人の顔の彫刻にも見える。
長い下山路を無事に下り、渡渉ポイントに。
お手製の岩を積んだ渡り廊下は、雨のせいなのかほぼ水没しており、ドボンは不可避の状態。スリップするよりましと考え、シューズ半分くらいドボンしながら無事に渡渉する。
車が見えてくると、そこがゴールのコガラ登山口となる。
七合目避難小屋で会話したお兄さんとお別れの挨拶をして、舗装路を進む。
予定していたバス停がどんでもなく遠いところにあることが分かり、結果、タクシーを呼び、18時頃に回収してもらう。木曽福島駅に到着したのは、18:30頃になった。
木曽福島駅周辺に立ち寄り湯がないため、駅舎で全身を着替えて、駅の対面にあるお土産屋で缶ビールを2本買い、祝杯をあげる。
水分を摂り過ぎたためと思うが、胃をやられていて、ビールがぜんぜん美味しくない。
木曽福島駅19:07発のJR特急ワイドビューしなの21号に乗車、塩尻でJRあずさ58号に乗り換え、途中で人身事故による停車もあって、新宿駅に到着したのは23:30頃になった。
この日の総平行移動距離は34.78km、総上昇距離は3510mだった。
以下、実測タイム。
22:43 駒ヶ根高原スキー場発
23:29 空木岳登山道取付地点
23:34 空木岳登山道入口
23:47 空木岳登山口駐車スペース
23:49 林道終点
23:59 タカウチ場
00:43 池山尾根水場着
小休止
00:52 池山尾根水場発
01:17 尻無
01:25 マセナギ
02:07 大地獄
02:14 小地獄
02:37 ヨナ沢ノ頭
03:17 空木平カール分岐点
03:32 空木岳避難小屋着
小休止
03:36 空木岳避難小屋発
03:59 空木平カール
04:23 駒峰ヒュッテ
04:30 空木岳
06:06 木曽殿山荘着
大休止 義仲の力水へ
06:46 木曽殿山荘発
07:10 東川岳
08:15 熊沢岳
09:26 檜尾岳着
小休止
09:51 檜尾岳発
10:51 濁沢大峰
11:52 島田娘
11:59 極楽平
12:05 サギダルの頭
12:10 三ノ沢分岐
12:32 宝剣岳
12:51 宝剣山荘
13:01 中岳
13:09 頂上山荘着
小休止
13:21 頂上山荘発
13:33 木曽駒ヶ岳
13:38 頂上木曽小屋
13:53 玉乃窪山荘
14:42 八合目水場
15:23 木曽駒ヶ岳七合目避難小屋
16:47 幸ノ川渡渉地点
17:09 福島Bコース・茶臼山分岐
17:13 コガラ登山口着
カフェイン入りのショッツは、思いのほか効果てきめんだった。恐ろしいほどに眠くならない。これは、次回の夜山行に必ず持参したい。
胃をやられたのは初めてのケースではあるが、水の飲み過ぎには注意。ロングコースの場合、スポドリを持参するのが良いかもしれない。
毎回反省するけど、やはり軽量化なんだろうな。