Tepper MBA Diary

カーネギーメロン大学(Tepper School)でMBAの勉強をしている「Kei」の学生生活を綴ります。

イニシアチブとリーダーシップ

2007-04-24 16:10:52 | Weblog
いつも自分の中にせめぎ合いがある。

「これ以上関わったら厄介なことに巻き込まれてしまう」vs「もっと積極的に関わっていかないと価値を生み出せない」

「何か自分は利用されているだけではないか」vs「自分を評価してくれている人は多くいる」

「大勢に流される自分」vs「何人が反対しようと確固たる意志を貫く自分」

「一時期の勢いで頑張るだけの自分」vs「しぶとく粘り強く推し進める自分」

イニシアチブやリーダーシップに優れた人はこうしたせめぎあいを感じているのだろうか。それとも何の迷いも無く、どんどん進んでいくのだろうか。

最後の学期に履修している授業のおかげで、少しづつ理解できるようになってきた。多くの英知が詰まっている授業だと思う。

Developing Star Performersという授業である。この授業の内容は、次の本の中に詳しく述べられている。おすすめの一冊である。

9つの黄金則―小さな行動で最大の成果をあげる成功者(スター・パフォーマー)の秘密 (単行本) , Robert E. Kelley (原著), 和田 正春 (翻訳)

この本は企業の中の好業績者がどのような仕事の進め方をしているかをつぶさに観察し、9つの重要な要素を抜き出したものである。内容は本書に譲るが、同書に共通するテーマは、「スター・パフォーマーは先天的なものではない。どんな社員もその会社でスター・パフォーマーになることができる」と言うものである。

アメリカ人の書いた本としては、ある種驚きのテーマである。

学生の間で良い評判、悪い評判入り乱れるが、私はProfessor Kelleyに敬意を表したい。きっとこの授業で学んでいることが、将来役に立つと信じている。

海外MBAは本当に必要なのか?

2007-04-08 04:03:10 | Weblog
2年間のカーネギーメロン大学でのMBAプログラムも残すところ2ヶ月となり、私の心に頻繁に浮かんできた疑問がある。

「海外のMBAで学ぶことは自分にとって必要だったのか?」

プログラムがスタートした当初、定量分析やマーケティング、ファイナンスなどの最新の動向を学ぶことこそが海外でMBAを学ぶ意義だと考えていた。一生懸命勉強してきたし、成績も悪くはなかったと思う。しかし、MBAで教える内容が出版物やスクールなどで世間に広く知られるようになった今、MBAの内容を日本で独学することは可能だ。ハーバード・ビジネススクールのケースもオンラインで購入できるし、その気になればケースの著者にメールか電話で質問することも可能だ。

では、一体、海外MBAで学ぶことの意義は何なのか?多額の費用を投入するだけのメリットはあったのか?そんな疑問が今更ながらにわいてきた。私はこの問いに自信を持って「YES」と答えることができるのだろうか?

以下、次の3つの観点から、この問いに答えを出してみたい。

1. 特殊環境の中で集中的に学ぶ
2. 日本を客観的に見つめる
3. 金儲けの先にあるものを意識する


1.特殊環境の中で集中的に学ぶ

MBAの内容も英語も、日本で学ぶことができるのは確かなことである。しかし、仕事をしながら、また自分でこつこつ資料にあたりながら学ぶには、相当の根気と時間を要する。私の場合、自分の根気を長続きさせることは不得意だったし、仕事が忙しい中、うまく時間を使うことも苦手だった。そうした中、半ば強制的に英語漬けの環境に身を置き、多量の課題を短期間でこなしていく海外のMBAプログラムはとても有効だったと思う。日本では実現不可能だったであろう英語力の向上と、複数の経営科目の集中的・効率的な習得が達成できた。これは、半ば強制的な環境に身を置いたからこそ得られたものである。渡米して、卒業するまでは帰れない環境を作ることで、否応無しに勉強したということである。


2.日本を客観的に見つめる

留学仲間と話すとよく話題になるのが、留学してから強く日本を意識するようになったということである。ある友人は、「海外にMBA留学した人はみんな頭に日本の旗を立てて帰ってくる」とジョークを言っていた。私も、留学後半年ぐらいで、日本を強烈に意識するようになっていった。「日本人としてアイデンティティー」、「日本経済の活性化への貢献」というテーマに過剰に反応していた自分を覚えている。

多くの留学生が体験するように、なかなか英語が通じない中で感じるカルチャーギャップは相当のものである。「何でアメリカの店員のサービスは日本に比べていい加減なのか?」「どうしてこんなに資源を無駄遣いして平気なのか?」よく他の日本人留学生と話したものである。こうした問題意識を通じて、日本のサービスの質の高さや、節度・節約を重んじる日本の良さに、改めて気づかされた。

しかしながら、今の日本に足りないものにも多く気づかされる。むしろこちらの方が多いと思う。日本人は既存の社会的期待感の中で円滑に行動することは得意である。一方、既存の社会的期待感に対して、時には疑問を投げかけること、また自ら社会的期待感を形成することは相当不得意である。この点は、So what? やWhy? を繰り返すCritical Thinkingが浸透しているアメリカと比べ、本当に不足している。また、日本人は複数のもののいいとこ取りをするのは得意だが、二律背反のものの一方を思い切って捨てて、もう一方を大胆に取るのは不得意である。大前研一の言葉を借りれば、「AND経営」は得意だが、「OR経営」は不得意であることを本当に実感する。

こうした実感は、異文化の中で日本人として活動することによって鮮烈に体験できるものである。日本にいたままであれば、理論で分かったとしても、実感としては決して理解できなかったであろう。


3.金儲けの先にあるものを意識する

Asian Business Associationという学生クラブの会長を1年間務めた。アジア出身の学生と、アジアに興味を持つ学生、総数約60人のメンバーのニーズに答えるため、他の役員(アメリカ人、中国人、台湾人など)と一緒になって、クラブ活動を切り盛りした。

その活動を通じて、「アジア経済の交流と発展に如何に貢献するか」ということを意識するようになった。漠然とではあるが、将来のキャリアパスとして、「日本企業への貢献」->「日本経済への貢献」->「アジア経済への貢献」という道筋を描くようになった。

仕事をすることはお金を儲けることであると同時に、自分という資産を何かのために役立てることである。先人の苦労と知恵を引き継ぎ、それを更に高めていくことは、我々一人ひとりに課せられた使命である。そう感じるようになった。日本人として、アジア人として、そして一地球市民として、自分を活かすことを心がけたいと思っている。

日本にいたままでは感じることのできなかったこうした問題意識を得たことは、お金には換算できないが、自分の人生にとって大切なものだと思っている。


以上、3つの観点から、「海外のMBAで学ぶことは自分にとって必要だったのか?」という問いへの答えを考えてみた。1.は海外MBAで得られるハード・ベネフィット、2と3はソフト・ベネフィットである。

そして、私の答えは、「直感的にYES!」である。何故直感なのか。それはMBAで培ったものはポテンシャルや素地であって、その効果を具現化していくかどうかは今後の自身の活動にかかっているからである。そこには不確実性が伴う。ファイナンス的に言えば、リスクを取らなければリターンも無いということである。そしてリスクを取っていく自分を直感的に信じているからである。もし、果敢にリスクを取っていかなければ、「そこそこできる」人間で終わってしまうであろう。

果敢に挑戦する自分、そして同時にそれを楽しむ自分であり続けたい。またこれも、MBAで学んだ重要なことである。