Tepper MBA Diary

カーネギーメロン大学(Tepper School)でMBAの勉強をしている「Kei」の学生生活を綴ります。

利益追求を超えて

2006-11-21 14:21:35 | Weblog
ビジネスの成功とは何か。それは株主の為に会社の価値を最大化すること。経営層は最大化に貢献した分、報酬をもらうこと。MBAでは当たり前のことだ。

しかし、利益最大化、NPV分析などでは表せない価値もある。それを考えるのもまた、MBAでの経験だ。

少し、物語を書いてみたいと思う。

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日曜日の午後、もうすぐ日が暮れようとしていた。駄菓子屋の店主は夕焼けに染まる空を見上げていた。彼の脳裏には40年間経営した店の歴史が走馬灯のように駆け巡っていた。

40年前に店を開いてまなしにお菓子を買いに来た子供たちは、もう既に立派なお父さん、お母さんになっている。そして、彼らの子供たちもまた、この駄菓子屋に通うようになった。一軒家の1階がお店で店頭はいつも子供たちで賑わっていた。お父さんもお母さんも、安心してこの店に子供たちを遊びに行かせていた。「お小遣いを無駄遣いするなよ」「お菓子は食べすぎては駄目だよ」「勉強頑張ってるか?」そんな店主の子供たちへの言葉は、単なる駄菓子屋ではないことを物語っていた。

しかし、そんなお店も今日でおしまいである。コンビニや大型ショッピングセンターが近くにでき、徐々に売り上げが落ちていった。店の行く末を心配した近所の人々は、店主にもっと商売上手になるように勧めた。でも、彼はまったくスタイルを変えなかった。多くの子供に買ってもらえるように、値段は極力安くおさえていた。お菓子を売るというよりも、買いに来た子供たちとの会話が大切だった。結局、店は赤字を抱え、とうとう店じまいとなった。

夕焼けから目を移し、店の前のベンチを見つめながら、彼はふと思った。「本当にこれで良かったんだろうか。」実は、店を買い取るという申し出があったが、子供たちの話はそっちのけでお菓子の利益率の話ばかりする相手を信用できなかった。店を閉じる、それが彼の結論だった。

「チロルチョコちょうだい!」女の子の声で、彼は我に返った。その子は小さな手にお金とチロルチョコを乗せて、店主の前に立っていた。「いいよお金は。今日でお店が終りなので、自由に持って帰りなさい。でも、食べすぎは駄目だよ。」女の子は嬉しそうにチロルチョコを持って出て行った。

「チロルチョコちょうだい!」今度は男の子の声がした。「おやおや、今日はチロルチョコが人気だね。いいよ、お金はいらないからもってお帰り。」店主は男の子にもう一つチロルチョコを渡した。「宿題したら食べられるご褒美だよ。」

ふと、男の子の肩越しに、もう一人男の子がいるのが見えた。いや、その子の後ろにさらに女の子。不思議なことに行列ができている。店主は店の中から外に出た。なんと、長蛇の行列が出来ている。こんなことは店が始まって以来のことだ。どうしたというのだろうか。

「ご主人!」ふと大人の声がしたので振り返ると、子供の頃からこの店に通っているお父さんがいた。「残念だけど今日で店じまいなんですよね。本当はご主人に続けてほしかったんだけど、仕方がないですよね。町内会のみんなで相談して、是非、地域の子供たちに最後の買い物をさせようという話になりましてね。近隣の3小学校の子供たちが買いにきてますよ。」

店主は何も言えなかった。いや、言葉が出てこなかった。次から次に子供たちがお菓子を買っていく。店主が何もしなくても、少し多目のお金を置いてお菓子を持って出て行く。あっという間に店のお菓子はなくなってしまった。

それでも子供の行列は続いている。子供たちは今度はお菓子を買わずにお金だけ置いていった。子供たちを止めようとする店主を、先ほどのお父さんが制した。「ご主人。これまで40年間お店を続けてくれてありがとう。そして、私達の成長を見守ってくれてありがとう。子供たちからのお金は、我々の感謝の気持ちとして受け取って下さい。退職金と呼ぶにはほど遠いけど、ちょっとした旅行には行けますよ。」

店主の目は既に涙でかすんで、子供たちの顔も、お父さんの顔も見えていなかった。涙でにじんだ視界には、かつての「ガキ大将」が映っていた。地域で一番悪がきだった「ガキ大将」、そして中学でこの店の品物を万引きし、店主からこっぴどくしかられた子供が、いまや立派なお父さんになっている。そして今まさに恩返しをしているのだ。

店主は心から思った。「この店を40年間続けて良かった。もらったお金は子供たちの小学校に寄付しよう。」

既に空には満月が出ていた。

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この話に出てくる店主は経営者としては振るわない人である。でも、彼のお店は明らかに価値を生み出している。地域にとって欠かせない存在になっていたのである。そこには、私欲を超えた店主の信念があった。

企業の経営者は常に利益や株価に気を配らなければならない。しかし一方で、エゴを超えたものが無ければ、企業としての真の価値は生まれない。CSRやプロボノなど、企業市民としての価値観は常に根底に無ければならないのである。

それは、ロジックや損得ではない。この時代の価値観なのである。MBAを学ぶ人々の志が高く有らんことを祈る。

即断即決する勇気

2006-11-14 13:25:16 | Weblog
数学のようにばっちりと答えが出ない状況で決断しなければならない時に、自分の決断を信じることは難しい。

過去の自分は、そうした状況で必要なものは以下のものだと考えていた。
1.決断をサポートする多くのデータ
2.周りの人々の意見

しかし、最近の私はこう考えている
1.物事の本質を見抜く力
2.限られたデータで判断する力および勇気
3.えいや、と割り切る勇気(そして、割り切って成功・失敗した経験の集積)

変化の激しい世の中では、時間をかけてじっくりデータを集め、人の意見を聞き、最も最適な決断を下すことは難しい。仮にそれができたとしても、その時点で状況がまた変化していて、最適な解が変わっていることも多い。

リスクを覚悟で即断即決を行うことが大切だ。

MBAで学ぶ重要なもの、それは今の世の中を生き抜く知恵と勇気である。

衝撃的なスピーチ

2006-10-15 13:52:40 | Weblog
久しぶりにすごいスピーチを聞いた。これだけ衝撃を受けたスピーチを聞いたのはどれくらいぶりだろうか。

Asian Student Association主催のGuest Speaker Eventで、我が校の卒業生の藤森義明氏にスピーチをして頂いた。彼はGEの日本法人のChairmanであると同時に、GE Consumer Financeのアジア全体の代表を務めている。

日本からの飛行機で、昼にピッツバーグに着いたその日の午後4時からスピーチ。相当お疲れのはずだが、スピーチの時にはそんな雰囲気は全く感じさせなかった。

話の内容はGEのイニシアチブの紹介が半分、何でもありのQ&Aセッションが半分だった。彼の話はリーダーシップとは何か、企業のイノベーションをどう推進するか、多様性のあるチームをどうマネージしていくかなど、定性的な内容が中心だった。

すごかったのは、彼から醸し出されるオーラだった。プレゼンテーションがうまいのはさることながら、物事を見る視座の高さと藤森氏自身の経験が、ともすれば抽象的で退屈になりがちなトピックを、鳥肌が立つような刺激的なストーリーに変えていた。

スピーチの次の日は、Tepper SchoolのAlumni Officeが主催するInternational Business Leadershipに関するパネルディスカッションが有り、藤森氏がパネリストとして参加していた。4人のパネリストの中で彼は際立っていた。物事を捉える視点の高さ・幅広さ、聴衆の興味を引く話を瞬時に切り出せる能力、実経験に基づいた聴衆に訴えかけるストーリーなどが、彼を抜きん出た存在にしていた。

パネルディスカッションの後、空港に向かうリムジンを待つ彼と話をする機会があった。私は思い切って聞いてみた。「藤森さんのような人になるためには、何を一番心がけたらいいですか?」

彼は照れくさそうに笑いながら言った。「自分だけで成長しようと思わず、素直にこのような人になりたい、と思う人を多く見つけること。そして、その人と一緒にいる時間を多く作り見習うことだよ。」そう言って、コーポレートジェットの待つピッツバーグの空港に彼は旅立っていった。

彼の話は、最近怠けがちだった私の心に渇を与えた。自身の五感で多くの刺激を得られるよう自分をドライブしていかねばと痛感した出来事だった。

やわらか系

2006-10-05 14:07:12 | Weblog
人には書ける文章のタイプに得意・不得意がある。私はやわらか系が苦手である。徒然なるままに書くエッセーみたいなものが苦手だ。でも、少しトライしてみよう。

うーん、何も思い浮かばない。論理的な話でもなく、重たい話でもなく、、、何が書ける?

そう言えば、この間久しぶりにギターを弾いてみた。腕がなまっているので、うまく弾けないのは当たり前。でもとりあえず日本の曲、特に僕の好きなフォークソングをいくつか弾いてみた。やっぱり日本のフォークソングはいいなーと感じる。

「なごり雪」、もし英訳するとどうなるのだろう。きっと日本語でのニュアンスが出なくなるだろう。日本語が醸し出すニュアンスは、日本語でしかわからないものがある。

きっと他の国にもそういうものがあるのだろう。そう考えると、人種のるつぼであるアメリカには、そうしたものは存在するのだろうか。ふと疑問に思うのであった。

うーん、だんだん重くなっていく。今宵はこれまでにしとうございます。

Joeの涙

2006-10-02 13:05:59 | Weblog
MBAのコースも2年目に入り、今学期からManagement Gameが始まった。Management Gameでは学生5~6人がチームを組み、仮想の会社を経営し、他のチームと競争する。会社の経営はシミュレーションで行うが、実際に労働組合の役員と交渉をしたり、取締役会へ経営報告をしたりと、経営を肌で感じられる要素も盛込まれている。労働組合の役員も取締役会のメンバーもすべてピッツバーグで活躍する現職の方々が有りがたいことにボランティアをしてくれている。

私のチームは多様性に富んでいる。社長役のJoeはアメリカ人、製品担当役員のKilとJasonはそれぞれ韓国、カザフスタンの出身である。チーム紅一点のPanteaはイラン出身で財務担当役員、そして私はChief Kaizen Officer(戦略、労使交渉、競争分析担当)というちょっと変わった役回りである。

会社の経営は全部で3年間行い(四半期毎のサイクルを12回繰り返す)、1年毎に結果と今後の方向性を、前述の取締役会へ報告する。初回の取締役会では、我らチームは1年目の成績が良かったものの、4時間半に及ぶ会議でかなり絞られた。「君の会社のCore Competence(競争力の源泉)はどこにあるんだ?」「それぞれの国の消費者が何を求めているのか分かっているのか?」「競合の会社が予想とは違う方向に動いたときはどうするんだ?」など、厳しい突込みが飛んだ。何とか懸案事項は無事解決したものの、チーム全員くたくたになって帰途に着いた。当然、取締役会の事後評価(後でネットで見られる)は芳しくなく、成績が良かったにも関わらず、後味の悪い会議となった。

---取締役の評価の原文---
"Kei had a good presentation, but was otherwise quiet. I know that he was controlling the presentation, but I want to see him take a greater role in the presentation, particularly helping out teamates."

"There was no evidence that the team understood the concept of shareholder value. During questioning, they admitted to destroying value, but did not seem concerned about it. It is essential to consider the shareholder perspective with regard to maintaining, growing, or destroying value."
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2年目の会社経営には閉塞感が漂っていた。利益は伸びない、製品担当役員のひとりは意見が通らずへそを曲げる。ワークロードの激しさに皆参っていた。そんな中、2年目の後半から何とか盛り返し、3年目に期待のできる状態にまで会社は立て直った。チームワークの絆も回復してきた。しかし2回目の取締役会を前にして、私は気が重かった。1回目の取締役会はいい成績で臨めたが、今回は成績が悪い状態である。取締役会へのプレゼンテーションの練習の時に、社長役のJoeが言った。「今回は成績が悪い。でも、取締役会への報告はうまくいくことを僕は確信している。取締役達の感じるであろうストーリーは二通りある。一つは今年の下り坂がさらに来年も続く、下降のスパイラル。もう一つは今年は投資の年で、来年にはわが社の復活が始まる、暗闇から光への上昇。当然、我々の目指すストーリーは後者だ。」

会議の前、私はJoeに言われていた。「君はこのManagement Gameの全体像を一番よく把握している。君のパート(顧客分析と競争分析)は大切だ。簡潔明瞭に、そして次のパート(各製品ごとの戦略)へうまくストーリーを展開できるようにプレゼンして欲しい。さらに、製品担当役員のKilをサポートしてくれ。君は彼の仕事も手伝っている。彼が取締役達からの質問に行き詰ったときは、君がサポートして欲しい。」

本番当日、Joeの全社戦略のプレゼン、Panteaの財務成績と今後の展望説明に続き、いよいよ私のプレゼンの順番が回ってきた。緊張の中でうまく舌が回らず、そしてとにかく私は自分のプレゼンに必死だった。顧客分析では私オリジナルのグラフ(イメージ有り)を使い、分かりやすく説明することを心がけた。競争分析では、他社の長所・短所を踏まえた上で、わが社のストラテジーがどう影響を与えるのかを力説した。取締役の質問に必死で答え、Jasonも随所で助け舟を出してくれた。自分の番が終わった後、私はくたくたになった。


私のプレゼンを受けて、Jasonが製品1の、そしてKilが製品2のマーケティングと生産戦略を展開した。Jasonのプレゼンはパワフルで、自信に満ち満ちたものだった。Kilのプレゼンはゆっくりながらもじわじわストーリーが伝わるプレゼンだった。Kilが取締役の質問に困ったときには、何度か私が「If I may interrupt...」とサポートに入って答えた。

結局、第2回の取締役会は大盛況に終わった。無事会議が終わり、ほっとして周りを見渡すと、Joeが目に留まった。彼は泣いていた。その瞬間、彼の気持ちが私に伝わってきた。彼は涙の理由は何も話さなかったが、私には分かった。

彼は優秀な男である。どの分野を担当しても一流にこなせる。しかし、彼の方針は皆が責任を持ってそれぞれの持ち場を担当すること。だから、歯がゆい思いをしながらも一人ひとりに任せるスタンスを貫いてきたのだ。特に国籍が違う仲間同士のチームなので、仕事の任せ方にも相当気を遣っただろう。そうした我慢と気遣いの結果、皆の力がかみ合い、チームとして大きな力につながった瞬間だった。彼はそれが本当に嬉しかったのだろう。私のプレゼンが終わった直後、彼は私に向かって小さくガッツポーズをしてくれた。そして会議の後、彼は私に言った。「Kei、本当に素晴らしいプレゼンだった。そして要所でKilをサポートしてくれてありがとう。」

このManagement Gameからいろいろなものが学べるが、私が一番学んでいるものは、リーダーシップについてである。Joeのリーダーシップは今私に大きな影響を与えている。どうしたら彼のようになれるのか。何が彼のパワーを支えているのか。同じチームで彼のリーダーシップを肌で感じられて私は幸せである。

次の取締役のコメント(チームのホームページに掲載されたもの)が我々のチームワークを物語っている。

"This was one of the most stunning turnarounds any member of the board has ever witnessed. It was hard to believe this was the same team. Strategy was well considered, and based on sound reasoning. 100% of the concerns from the last meeting were addressed. Truely exceptional."

私も嬉しいお褒めの言葉を取締役議長から頂いた。
"Kei continued his good work with an innovative 3-dimensional representation of the consumer landscape. Some of the best charts I've ever seen."

Management Gameは3年目に入り、新たな課題が押し寄せている。プレゼンがうまくいき、前途揚々といきたいところだが、そうは問屋が卸さないようだ。次回の取締役会ではどんな報告ができるだろうか。前回よりいい評価を得られるかどうかは分からない。でも、一つだけ言えることがある。

私が信じるもの、それは「多様性からの連帯」である。

ニューヨーク生活

2006-07-31 12:49:15 | Weblog
MBAプログラムの1年目が終わり、夏休みに入っている。
夏休み期間を利用して、妻の住むニューヨーク(マンハッタン)で生活しているが、ニューヨークは面白いところだ。
アメリカではなく、色々な国の寄せ集めといったイメージで、共通語が英語であるだけだ。
日本人のコミュニティーもあり、日本語でしゃべっていてもまわりは全く気にしない。
ニューヨークのすごいところは、一流のものにすぐアクセスできることだ。ミュージカルはブロードウェイで毎日やっているし、野外無料コンサートなどもしょっちゅう行われている。
日本と比べて、町はあまりきれいでなく、地下鉄は24時間運転しているものの時刻表がないし、ホームは全く冷房が効いていない。
そんな欠点はあるものの、色々な国の人が自由に活動し、活気に溢れているところは日本には見受けられないものだ。

ニューヨークは本当に不思議な都市だ。

ルームメイトの紹介No.1(Philip)

2006-03-19 08:39:47 | Weblog
私と一緒に住んでいるルームメイトを紹介したい。今回は台湾出身のPhilipを紹介する。
(ルームメイトの写真:最も右がPhilip)

彼は30代後半と、MBAの学生の中ではかなり高い年齢で留学している。しかも、妻と子供2人を台湾に残しての一大決心だったそうだ。3人のルームメイトの中では、最もMatureな人物だと思う。
Philipは本名ではなく、小学校か中学校の先生が英語の授業で付けた名前だそうだ。彼だけでなく、台湾出身の学生はよく英語の名前を使っている。
彼の前職がGlobal Companyだった関係で、しょっちゅう海外出張をしていたそうで、台湾のみならず、中国や日本のことに詳しい。(中国ではClientと一緒にナイトクラブに行っていたそうだ!中国はある意味日本企業のカルチャーと同じようだ。)

台湾の大学でChemical Engineeringを専攻し、Chmeical Plantの設計までできる彼は、Engineerにはならずに、企業人の道を選んだ。前職のGlobal企業では、人事以外の主要な職種はほとんどすべて経験したそうだ。確かに、ビジネスに対する見識が深い。特にMarketingについては、「Tepperの教授よりももっとうまく教えることができる」と彼自身、自負している。Marketingのクラスで一緒のチームだったが、時々、チームメンバーに講義をしてくれ、その内容は的を得た大変分かりやすいものだった。

彼の大きな特徴は、大変Logicalなことだ。通常、台湾・中国の人々は、欧米人と比べると、思考回路が曲線的なのが一般的だ。というのは、問題提起⇒分析⇒結論という直線的な論理展開よりも、様々な考え方に寄り道をし、ある種fuzzyな結論を好む特性を持っている。これは、日本人にも合い通じるものがある。あまりにも直線的な論理展開には奥深さがない、というのが台湾・中国(そして日本も)の人々の感覚だと思う。

しかし、彼の思考は本当にLogicalだ。授業の科目でも、一旦Logicを掴めば、飛躍的に理解度が増すらしい。一晩でゲーム理論の基礎をマスターしてしまった程だ。彼と話すと、時々「I don't know what you mean.」とよく言われる。論理を通さないと、彼には通じにくいのだ。逆に、logicalに説明すると、すぐに話が通る。彼の話によると、彼は部下に恐れられていたそうだ。仕事の結果についてLogicalに説明することが求められ、Logicalで無いとすぐに怒られるからだ。でも、瞬間沸騰型で、怒ってもしばらくしたら、すぐに元の状態に戻っている。Leadership論から言うと、経営者的素質があるのだろう。

そんな彼は、台湾での高給取りの前職の仕事を辞め、さらにGlobalに活躍できる機会を探している。かなりのRisk Takerだ。人事の仕事をしている私の目から見ると、MBA学生採用よりも、Executive採用にふさわしいように思える。現在、彼はインターン先の企業を探すのに(おそらく、暗黙の年齢制限で)苦労しているようだが、Fulltimeのポジションでは、きっと素晴らしい仕事を手に入れることができると私は考えている。

飲んだときの彼の口癖が私の頭から離れない。「台湾、韓国、中国、日本出身者は、英語ではハンデがあるが、物の考え方、分析能力、仕事の仕方などでは、絶対に欧米人に引けをとらない。」こうした彼の言葉には、彼のアイデンティティーを感じる。

定量分析に思うこと

2006-03-08 11:09:27 | Weblog
Production and Operationという授業がある。生産管理・サプライチェーンなどをいかに効率的に運営するかを学ぶ。納期や需要の変動を加味して、最適生産量や発注量を決めるため、統計的手法をかなり使う授業である。

その授業で銀行の顧客データを分析して、どういった要素が収益に貢献しているのかを分析し、将来のCRMに役立てるCase Studyを扱った。3万件以上の顧客の年齢、収入、支店エリア、オンラインバンキングの使用の有無などのデータが与えられる。

私のチームは事前の勉強で、以下の3つの側面から分析を行った。
1.収益を従属変数、年齢・収入などの各要素を独立変数においた、重回帰分析。
2.ピボットテーブルとピボットグラフによる、支店エリアごと、オンライン・オフライン別などの収益比較。
3.顧客のライフタイム・バリューの分析。

事前の分析はどうしても分析結果に納得がいかなかった。上の3つのどの分析を行っても、何が収益に貢献しているか今一把握できなかったからだ。

さて、本番の授業で先生が行ったのは、上の3つのうち、1.の回帰分析のみ。しかし、驚くべきことに、回帰分析だけを駆使して、顧客のどの要素が収益をドライブしているかを発見して見せたのである。

私はそれまで、回帰分析は参考程度のものでしかないと思っていた。なぜなら、回帰分析では全体的な傾向しか見ることができなくて、さらに細かく調べるためには、変数を絞ってグラフ化したりして、実際に傾向を目で確認しなければならないと思っていたからだ。しかし、先生は回帰分析のみで、バイアスを持った変数を除外しながら、真に収益に貢献する変数を見抜いていたのである。

かなり高度(ある種マニアック)な手法だったが、ここまで回帰分析を使いこなせれば、回帰分析は参考程度のものでなく、強力な武器となることが分かった。

授業の最後に先生は言った。「与えられたデータを正しく分析することは大切だが、もう一つ大切なことがある。それは、生産現場・在庫管理の現場に行き、そこで働いている人々と話をし、何の要素がビジネスをドライブしているのかを見抜くことだ。そうしなければ、データの分析屋で終わってしまう。」

真に優れた分析家は、定量分析と定性分析(コミュニケーション)を自由自在に使いこなす人なのだと実感した。

まだまだ道は遠いようだ。

(作成時間:40分)

嬉しい出来事

2006-02-20 06:54:52 | Weblog
今日、ささやかながら嬉しい出来事があった。

Corporate Finance(企業金融)という授業の宿題を仕上げるために、チームミーティングをしている時のことだった。

私が次のような冗談を言った。
「数人の学生が、先生にお願いしたんだって。『就職活動の面接が立て込んでいるので、宿題の提出期限を遅らせてほしい』と。そしたら、先生はこう答えたんだ。『もちろん構わないよ。点数は半分になるけどね。』」

みんなの笑いを誘うことはできたんだけれど、チームメンバーの一人、Brianが次のように切り替えしてきた。
「誰だ、そんなことをお願いする奴は。Kei(私)のように英語が母国語でない学生でもちゃんと期限に間に合わせるように努力しているのに、英語がNativeの学生が、そんなお願いをするなんて、もっての外だ。」

私が何よりも嬉しかったのは、彼が私をいい例として使ってくれたことだ。(もちろん、お世辞も入っているとは思うが。。。)

私は、特にこのチームでは貢献できない自分に常に負い目を感じつつやってきた。
このチームは、私以外は英語がネイティブの学生ばかりだ。MBAではよくある話だが、日本人がこういうチームに入ると貢献するのはかなり難しい。言語の壁があって、ミーティング中の深い議論に食い込むことが難しいからだ。

そこで、日本人として貢献するためには、積極的にミーティングの日程調整を買って出たり、他のメンバーが欲しいと思う資料を先回りして作っておいたりするのが一つの手だ。(数量分析で貢献するのも手だが、今回のチームメンバーは皆、私以上に数量分析が得意なので、この手は使えない。)

今日が最後のミーティングだったので、思い切って議論のたたき台となる資料を作って出したところ、それがかなり認められたようだ。体調不良だったので、宿題の論文を読むだけにしようと思ったけれども、頑張ってたたき台の資料を作って本当に良かったと思う。

ちなみに、たたき台を作るのも勇気がいる。「的外れのたたき台だったらどうしよう」とか、「誤字・脱字があって下手な英語がさらにばれたらどうしよう」とかいう不安がつきまとう。

でも、相手の立場に立って、何が必要なのかをよく理解すれば、案外貢献するのは簡単なのかもしれない。

相手が欲しいものを提供できた自分と、自分を評価してくれた同僚の言葉に勇気付けられた一日だった。

※ちなみに、今回の宿題は私の仕事(人事)に関するもので、興味深いトピックだ。Executive Compensationを組み立てる際に、「ゲーム理論」の考え方を取り入れることの大切さと、また、その限界を扱う課題だ。「ゲーム理論」をよく理解するのは難しいけれど、現実のビジネスへ幅広く適用できる考え方なので、是非マスターしたいものだ。

(作成時間:30分、うーん。かかりすぎ)

悩める日々

2006-02-14 10:45:07 | Weblog
ここ数日、何故か勉強に集中できない。というのも、新しくPresidentになったABAの運営のことが頭から離れないからだ。

少しもめたが、空席になっていた役員の席もうまく決まった。予算要求もほぼ完成している。特に大きな問題があるわけではないのだが、何か落ち着かない。

おそらく、「新しくPresidentになったのだから、新しい価値を生み出さなければ」という気持ちが先走っているのだろう。

メンバーのニーズとクラブが提供するサービスのミスマッチを解消することで、大きな価値が生み出されることは目に見えているのだが、「焦り」の気持ちがとても大きい。(機会があれば、後日このブログで、Tepperで学んでいるマーケティング(Segmentation-Targeting-Positioning)の考え方を用いた、新しいクラブのValue Positioningを書いてみたいと思う。最近はこのことばかり考えている。)

ふと、昔お世話になった上司の話を思い出した。彼が始めて管理職になってチームを任されたとき、「早く成果を出さなければ」という思いに駆られたそうだ。彼は部下に完全に仕事を任せることができず、失敗しないようにすべて先回りして部下達を助けていたそうだ。

しかし、ある時、彼は恩師(彼の上司)の言葉で気付いた。いつまでも先回りして部下を助けているようでは、チームの意味が無い。チームのメンバー一人ひとりが成長して、自ら成果を出せるようにすることが、チームとしての力を高めていくのだと。それ以来、彼は部下に仕事を任せて、先回りしたい気持ちを押し殺すように努力したそうだ。そしてついに、部下が成長し、自ら成果を出し始めるようになった時、今までにない達成感・嬉しさを感じたそうだ。彼は言っていた。「自分が成功したときよりも、成長した部下が成功した時の方が100倍嬉しい。」

今の私はどうだろうか。彼の体験談を聞いていたので、他のメンバーへの過度な干渉は避けるようにしている。でも、逆に自分の思いを伝え切れていないようにも感じる。何よりも、今の状況を楽しめていない自分がいる。

ここは、腰を据えて、落ち着いて取り組んでみようではないか。新しいABAは今始まったばかりだ。まだ先は長い。ルームメイトの一人、Philipもよき相談相手になってくれている。(彼は私より5歳ほど年上で、本当に経験豊かだ。)ぼちぼちやろうではないか。

(作成時間:15分、次回はビジネススクールらしく、ロジカルな話を書きたい。)