※この記事は「1つのテストで図れるほど、教育は甘くない。」の補足です。リンク先の記事の閲覧を推奨します。
かなりの問題点が挙げられるハイステークステストだが、ではなぜ米国政府はこれを良しとしたのだろうか?
考えられる理由の1つに「少なくとも成績の向上が見込めるから」が挙げられるだろう。
参考文献の限り、「学校のテスト平均点を上げるために、成績が芳しくない生徒をテストに参加させない」などの不正を行わなかった学校は、ハイステークステストの導入後、テスト指定科目においてテスト平均点が向上したという。
また、ハイステークステストの導入後数年間は指定科目において急激な平均点向上が観測されたというのだ。
ただ、この結果には懐疑的にならざるを得ない。
平均点向上が、本当にハイステークステストによって促されたかものなのかが確定ではないからだ。
特に、参考文献はハイステークステストの実施と指定科目の点数の相関のみを取り上げており、向上が見られた学校のもともとの成績傾向や、支援制度との関係、教員の力量などの細かい記述は見当たらない。
成績を決定づける大きな要因の1つに『過去の成績』が挙げられる。そのため、不正を行わず点数が向上した学校は、そもそも不正を行う必要がないぐらい学力と環境が整っていた可能性が高いが、文献内ではその言及のみだ。
また、導入後数年間の急激な向上はテストへの『慣れ』がもたらしているものとする見解が一般的であり、証拠としてハイステークス以外のテスト導入時にも同じような傾向が確認されている。
しかしそれでも、ハイステークステストを薦める人は「点数は上がるから」と主張してくる。
そもそも、学校の目的はテストに向けた訓練を行う場所ではないはずなのに。
参考文献
AL Amrein, DC Berliner et al. (2002) High-stakes testing, uncertainty, and student learning.
Barak Rosenshine (2003) High-stakes Testing Another Analysis.
National Research Council (2011) Incentives and test-based accountability in education.