「〇〇で悪事を働く一部始終を完全公開します」
「〇〇が逮捕された件についてすべてお話します」
「昨日〇〇にブチギレて帰った話」
このような、決してポジティブで平和的とは言えないような題名がつけられた動画は、彼らが投稿するそれらに比べ頭1つ抜けた再生数になることが多い。
それはつまり、その動画が比較的より多くの人の目を引き付けているわけでもある。
ではなぜ、そういった動画が、比較的より多くの目を引き付けるのだろうか。
そしてなぜ、私たちはネガティブ・否定的な動画を再生してしまうのだろうか。
結論から言えば、ネガティブな題材を取り上げた動画が嘘偽りのないものであると捉えてしまうことが理由の1つとして挙げられる。
※画像は以前私が投稿した動画のサムネ。動画はこちら。
基本的に、一貫性があり嘘偽りやごまかしがなく、読みやすくて見やすくて理解しやすい主張は信頼される傾向にあり、動画であれば再生数が伸びやすくなるという。
中途半端に情報量が多く支離滅裂なものより、ひとこと『ヤバい』とまとめられるようなもののほうが話題になるイメージだ。
で、ネガティブな題材はこのうちの『嘘偽りやごまかしがない』部分に作用する。
例えば、いまあなたがYouTubeで動画を見ていたとしよう。
ほとんどの人にとってYouTube閲覧は娯楽目的であり、いまあなたはその大半の人と同じように、和気あいあいとした、あるいは見ていて興奮するような動画をYouTubeに求めているとしよう。
ふと、おすすめ欄の中に黒背景赤文字のサムネが混じっていることに気づく。
「昨日〇〇にブチギレて帰った話」と題名がついたそれからは、その他の朗らかなイメージのサムネとは大きくかけ離れた、つまりいまあなたが求めるそれとは真逆のものを感じ取れる。
しかしあなたは、この動画をあまりためらわず、むしろ少々の期待を持って見始めるだろう。
この『少々の期待』が、今回のお話のカギとなる。
文献を参考にする限り、自分の信念に反する行動を観察した人は、その行動を行為者の気質によるものだと考えるようになるという。
つまり、YouTubeに娯楽を求めていたあなたの前に現れた不穏なサムネによって、あなたは
「いつも娯楽を提供してくれる人が、娯楽以外の面を見せてくれる!」
「いつも娯楽の裏に隠されている、事実を語っているのでは!」
と期待するようになるということ。
どうやら私たちは、ネガティブな題材を取り上げた動画を『必ずしも正の面ばかりではない』ことの証明だと受け取り、再生数に寄与してしまうらしいのだ。
参考文献
Rohit Aggarwal,Ram Gopal et al. (2011) Blog, Blogger, and the Firm Can Negative Employee Posts Lead to Positive Outcomes.