YouTubeやTwitterなどのSNS媒体が多くの人に認知されるようになったころ。
企業がSNS媒体で人気を集めるインフルエンサーに依頼、自社の製品を宣伝してもらうという、いわゆるインフルエンサーマーケティングが本格的に講じられるようになった。
身近な言葉でいえば、企業案件や『プロモーションを含みます』が該当するだろう。
このインフルエンサーマーケティングの国内市場は2020年時点で317億円程度と推算されており、SNS全体で行われているマーケティングに対する割合は実はそこまで大きくない。
が、それでも"企業案件を受けたインフルエンサーが違和感少量含有の宣伝を行う"イメージを共有できるぐらいには周知されてきた。
それと同時に、宣伝に対する違和感の含有量に嘆く声もちらほらと上がるようになった。
「いつも接客業に関する哲学述べてる人が急にダイエットの宣伝してた」
「男友達つるんで高校生のようなノリを提供してきた人が恋愛系の案件を受けてた」
「ゲーム実況者がゲームの宣伝してたけど、お前2Dアクションじゃなくて歴史シミュレーション系の人だろ?」
嘆く内容のほとんどは一貫したもので、対象のインフルエンサーが普段やらなそうなこと、もしくは連想しづらいものの企業案件に首をかしげるというような内容だ。
そして、イメージとはかけ離れた案件を消化するインフルエンサーの様に、私たちはインフルエンサーに、あるいは案件を依頼した企業の方に嫌悪感を覚えるはずだ。
だが、企業案件すべてにこれがいえるわけじゃない。
「毎日ズボラ飯の飯テロ動画上げてる人が案件で牛肉焼いてた」
「お菓子大好きな印象の強い人にお菓子のCMの出演依頼が来た」
「語彙力に秀でたグループがもじぴったんのプレイ動画を出していた」
私たちは、対称のインフルエンサーがいつも演じているような、もしくは連想しやすいものの企業案件にはあまり違和感を感じず、むしろ嬉々として受け入れているはずである。
そして、イメージ通りの案件をこなすインフルエンサーの様に魅かれ、例えば紹介された商品の購買意欲に掻き立てられることだろう。
インフルエンサーマーケティングの成功要因の1つとして『インフルエンサーと企業案件との相性がいいこと』が挙げられる。
これはインフルエンサーの視聴層がインフルエンサーにあこがれを抱いていることに起因している。
早い話、ラーメンを毎日啜るインフルエンサーのもとには「ラーメン好きだけど毎日啜るのは健康的にもあれだしなぁ」とか思っている人たちが集まるし、彼らはインフルエンサーがラーメンを啜る動画を見ることである種の欲求解消を図っているということ。
また、インフルエンサーは対象が所属する分野においてひときわ目立つ存在であることがほとんどであり、所属する分野における専門性や信頼性を得ているという一面もある。
これも、ラーメンを毎日啜るインフルエンサーは必然的にラーメンを誰よりも知ることになるので、彼のラーメンに対する評価は周囲の人よりもより正確なものになることが多く、それを頼って視聴層になるという人もいるイメージだ。
となると当然、インフルエンサーの強みに魅かれた人たち、つまり対象の視聴層に一番受けがいいのはその強みを活かした案件となる。
つまり、ラーメンを毎日啜るインフルエンサーに最適な企業案件は次郎系ラーメンの類であるということになる。
『餅は餅屋』ということわざがあるように、餅屋には素直に餅を作らせたほうがいいのだ。
もっとも、その適任の餅屋を見つけるのが一苦労だから、ああいった嘆きが散見されるのだろうな。
参考文献
Daniel Belanche,Luis V.Casaló et al. (2020) Understanding influencer marketing: The role of congruence between influencers, products and consumers.
Digital InFact 2020年10月14日 2020年のソーシャルメディアマーケティング市場は5,519億円、前年比107%の見通し 2025年には2020年比約2倍、1兆1,171億円規模に