上:装飾花が7個ついている。茎・葉柄・葉が赤紫を帯びる
アマチャ (甘茶 アジサイ科 <旧ユキノシタ科> アジサイ属 落葉小低木 花期5,6月) ガクアジサイの亜種にヤマアジサイがあり、これの変種がアマチャとされている。茎、葉柄、葉が赤紫色を帯びる。花はガクアジサイと同様で、茎頂の散房状花序の中心部に多数の両性花と、周辺に萼片が変化した装飾花(かざりばな)が咲く。両性花は青色から赤紫色で一つひとつは非常に小さいが、ちゃんと萼・花弁があり長い雄蕊と雌蕊が突き出る。装飾花は4片で丸みがあり、咲き始めは白ないし白青色であるが後に淡紅色に変化する。
アマチャ:現在20種類ほどが知られる。9月頃に枝を切り葉を取って二日ほど陰干しした後、霧をかけて葉を湿らせ覆いをして押さえ、一昼夜おいて発酵させ、これを揉んだ後に乾燥させる。この工程で甘み成分(ズルチン系成分=フィロズルチン配糖体)が形成され“甘茶”ができる。これに湯を注ぐと甘いお茶になる。ヤマアジサイには甘味成分が形成されないので甘茶にならない。(伝聞)
旧歴4月8日はお寺で灌仏会が催される。この日はお釈迦様の誕生日とされ,その生誕像に甘茶を注ぎお祝いする仏事が行われる。生誕像は花御堂に安置されているため花祭りとも呼ばれる。この日の甘茶には功徳があると信じられ,参拝者は家に持ち帰って家族全員で飲み,無病息災を願う。
小学生の頃同級生に寺の息子がいて、この灌仏会の日に誘われて寺に行ったのを憶えている。終戦後10年余りその頃まだ物資不足で、育ち盛りの子等はいつも腹を空かせ甘い食物に飢えていた時代。この日振舞われた甘茶はほろ甘く咽喉を潤してくれた。先日、郷里で同窓会が開かれた。大方が50年振りの再会、寺の息子とも50年振りであった。しばし甘茶談義となった。
幼馴染みのあの子もこの娘も故郷も遥か遠く過ぎにけり 旧友顔を会わせ言葉が出ず ただあの嬌声昨日のごとく 記憶の底の堰を切り 心はや少年に還る。童子